新書嫁レビュー
真珠湾攻撃の前に「通告は間に合った」と思い込んでいた
2026-04-26
真珠湾前夜の外交は「精一杯やった」と思っていた
真珠湾攻撃について「奇襲」という言葉は知っていました。しかし外交の手続きとしては、攻撃の直前に通告が届けられるよう段取りがされていたはずで、手違いや遅延はあったにせよ、それはやむを得ない混乱の中での出来事だろうと漠然と思っていました。戦争の開始というのは、どこかで誰かが決断した結果として起き、外交官たちはその流れの中で精一杯動いていたのだろうと。しかしその「やむを得なかった」という納得感に、ずっとしっくりこないものが残っていました。
森島守人著『真珠湾・リスボン・東京』はこちらから読めます。
日米開戦の現場にいた外交官が語る「通告遅延の責任」
著者の森島守人は、日米開戦時のニューヨーク総領事として、まさにその現場にいた外交官です。満州事変勃発時には奉天総領事代理の地位にもあり、昭和の動乱を外交の最前線で目撃し続けた人物です。本書で彼が詳述するのは、「対米通告遅延の責任問題」——攻撃開始前にワシントンへ送られるはずだった最後通牒が、なぜ間に合わなかったのかという問いです。政治的責任は東郷外相に、事務的責任は野村大使にあると明示した上で、そこに至るまでの経緯が一外交官の証言として記録されています。リスボンのニュートラルな諜報戦、当時の欧州の微妙な米ソ関係——これらは、開戦前夜の日本外交が置かれていた状況を内側から証言する貴重な記録です。本書にはさらに、当時の国際情勢の中で日本外交が何を見誤っていたかへの率直な提言も含まれており、ぜひ本書で確かめてみてください。
「外交の失敗」が人間のドラマとして見えてきた
この本を読んでから、「外交の失敗」という言葉の重さが変わりました。以前は国際関係の教科書で読むような出来事として、真珠湾前夜を捉えていました。しかし現場にいた人間の回想を通じて読むと、「あの瞬間に誰が何をしていたか」という具体的な場面が浮かび上がり、歴史が一気に人間のドラマとして見えてきます。外交官の判断一つ、電文の翻訳作業の遅れ一つが、歴史的な「奇襲」として記録される。その緊張感が、歴史を他人事として読めなくさせました。
現場の証言があるから、問うことができる
森島守人は戦争の始まりと終わりの両方を外交の最前線で目撃した数少ない証言者の一人です。内側から見た日本外交の実像が、率直な筆致で記録されています。「通告はされていた」という思い込みを持ったまま生きていたら、真珠湾が「奇襲」と呼ばれる深い理由は、今も霧の中のままでした。
森島守人著『真珠湾・リスボン・東京』はこちらから読めます。
書誌情報
- 書名
- 真珠湾・リスボン・東京: 続 一外交官の回想 (岩波新書 青版 45)
- 著者
- 森島 守人
- レーベル
- 岩波新書 青版
- 出版社
- 岩波書店
- 発売日
- 1950年9月20日
- ISBN
- 4004150736