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半藤一利 わが昭和史 (1001;1001) (平凡社新書 1001)

半藤 一利

平凡社新書 / 平凡社

2022年4月19日発売

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新書嫁レビュー

「昭和史の語り部」は、最初から歴史家だったわけではなかった

2026-07-04

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半藤一利は生まれながらの歴史家だと思っていた

『日本のいちばん長い日』や『昭和史』の著者として知られる半藤一利さん。私はずっと、この人は若い頃から歴史にのめり込み、最短距離で「昭和史の語り部」になった人なのだと思い込んでいました。あれほどの仕事を残した人なのだから、きっと早くから天賦の才を発揮していたに違いない、と。けれど、そう思い込んでいると、自分のような遠回りばかりの人生はどうにも分が悪く感じられて、どこか息苦しさが残っていました。半藤さんの自伝『半藤一利 わが昭和史』を読んで、その思い込みは根底から崩れました。彼は決して、まっすぐに歴史家になった人ではなかったのです。

半藤一利著『半藤一利 わが昭和史』はこちらから読めます。

東京大空襲を生き延びた少年が、ボートに青春を捧げ、編集者になるまで

本書は、半藤さん自身が自らの生涯を語った一冊です。物語は1930年、東京・向島に生まれた少年時代から始まります。彼は東京大空襲をかろうじて逃れ、雪国で鍛えられた日々を過ごします。そして驚かされるのは、青春のかなりの部分を「ボート」に注ぎ込んでいたことです。歴史の研究ではなく、川面を漕ぐオールに情熱を傾けていた若者だったのです。東京大学を出たあとは文藝春秋に入社し、編集者としてのキャリアを歩み始めます。そこで歴史の証言者たちと出会ったことが、のちの仕事の土台になっていきました。本書では、「週刊文春」「文藝春秋」の編集長を務めた時代の話から、退職後に遅咲きの物書きとして「歴史の語り部」になっていく道のりまで、五部構成でじっくりと語られていきます。歴史を「研究する人」になる前に、彼はまず歴史を「聞き取る編集者」だったのです。実際に時代を生きた当事者たちの肉声に若い頃から触れ続けたことが、のちに彼の昭和史を、教科書とはまるで違う生々しさで語らせる源になっていきました。一見すると歴史とは無縁に見えるボートの日々も、人の証言に耳を傾け続けた編集者の歳月も、ひとつとして無駄ではなかった——本書を読むと、その積み重ねの妙がじわりと伝わってきます。

遠回りこそが財産になる、と思えるようになった

この自伝を読んでから、自分の中の焦りが少しほどけました。以前は、何かを成し遂げる人は最初から一直線に進んでいるものだと信じ、回り道をしている自分を責めていました。けれど半藤さんは、ボートに打ち込んだ青春も、編集者として人の話を聞き続けた歳月も、何ひとつ無駄にせず、すべてをのちの仕事に注ぎ込んでいました。物書きとして本格的に花開いたのも、人生の後半になってからです。その歩みを知ってから、自分の経歴の脈絡のなさを「まだ実を結んでいないだけかもしれない」と思い直せるようになりました。電車の中でぼんやり過去を悔やむ時間が、少しずつ前を向く時間に変わっていったのです。

知らないままだったら、彼の本の重みもわからなかった

この本を読まなければ、私は半藤さんを「最初から完成された歴史家」と誤解したままだったと思います。半藤一利さんは『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』で毎日出版文化賞特別賞を、2015年には菊池寛賞を受賞した、まさに昭和史の語り部と呼ぶにふさわしい人物です。その膨大な仕事が、回り道だらけの一生から生まれたことを知ると、彼の著作の一行一行がいっそう重く響きます。何かに焦っている人ほど、本書で確かめてみてください。

半藤一利著『半藤一利 わが昭和史』はこちらから読めます。

内容紹介

《目次》   
一、遊びつくした子ども時代
向島に生まれて/人は死ぬ/豊かだった戦前/川のそばで/おかしな空気
悪童、「お坊ちゃま」になる/二宮金次郎が読んでいたもの/最初の空襲体験
少年講談と浪花節/運命の分岐点──中学進学

二、東京大空襲と雪国での鍛練
十四歳、死にかける/父との再会/疎開で転々/雪がくれた体力と忍耐力

三、ボートにかけた青春
日本人と橋/志はいずこへ/人生の?決意?/水の声を聞きながら
ボートの青春に悔いなし/?浅草大学?と苦肉の卒論

四、昭和史と出会った編集者時代
御茶ノ水駅の決断/生涯の宝/ボンクラの必要性/指名された理由
歴史はなぜ面白いか/人に会い、話を聞く/昭和史にのめりこんだとき
処女作は『人物太平洋戦争』/寝ながら書いたケネディ暗殺記事
『日本のいちばん長い日』/印税はゼロ/名デスクはヘボ編集長?
?アソビの勉強?と潜伏期間の決意/まぼろしの「明治史」?/ある成功の代償

五、遅咲きの物書き、?歴史の語り部?となる
?じんましん十年?の役員時代/辞めなかった理由/『昭和天皇独白録』のこと
山県有朋をなぜ書いたか/命がけの独立/瀬戸際の体験/道に迷ってよかった
失ったもの、得たもの/脱線はムダか/昭和史はなぜ面白いか
「歴史に学べ」でなく「歴史を学べ」/通史をやって気づいたこと
平成とは何であったか/「平成後」を想う/人生の一字

[附録] 四文字七音の昭和史
「皇国」という言葉/本家中国と日本/漱石先生と『蒙求』/「赤い夕陽の満洲」から
昭和史を転換させた「国体明徴」/二・二六から日中戦争へ
最高のスローガン「八紘一宇」/「油は俺たちの生命だ」/戦時下の四文字
日本人独特の死生観/崑崙山の人々/終わりに
略年譜

《概要》
向島に生まれ、東京大空襲の炎をかいくぐって生きのびた少年は、隅田川の風景を胸に“橋をつくる技師”への夢を抱くが、ボートに青春をかけたあと、道に迷って編集者となる。坂口安吾や伊藤正徳との出会いから昭和史の研究に打ち込んで物書きとなり、「退職してからが本格的スタートでした」と、晩年は歴史の語り部に。人生に涯(はて)あり、されど知に涯なし。2021年1月、90歳で逝去した昭和史の第一人者が、最晩年に語った自伝。痛快かつ波瀾の生涯と平和への熱い思いに、生きる勇気が湧く一冊。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
半藤一利 わが昭和史 (1001;1001) (平凡社新書 1001)
著者
半藤 一利
レーベル
平凡社新書
出版社
平凡社
発売日
2022年4月19日
ISBN
458286001X