← ブックフィード 新書嫁 新書を、1冊ずつ読み解く PR

フェイクドキュメンタリーの時代: テレビの愉快犯たち (小学館新書 479)

戸部田 誠(てれびのスキマ)

小学館新書 / 小学館

2024年10月1日発売

楽天ブックスAmazon

新書嫁レビュー

「嘘のドキュメンタリー」が、なぜ本物より真実を伝えるのか

2026-06-19

書評を読む画面で開く →

テレビは「わかりやすく正確なもの」だと思っていた

テレビの情報番組は事実を伝え、ドキュメンタリーは現実を記録する——そういう前提で映像メディアに向き合っていました。逆に言えば、「嘘」を使って作られた映像は「フィクション」であり、ドキュメンタリーとは相容れないものだという思い込みがありました。

ところが近年、「これは実際に起きたことなのか?」という疑問を持ちながら見続ける映像コンテンツが増えてきました。フェイクドキュメンタリーと呼ばれるジャンルが注目を集めていることは知っていましたが、「なぜ嘘を使うのか」「なぜそれで感動するのか」という根本的な問いに答えを持っていませんでした。

この本が、その問いに答えてくれました。

戸部田誠著『フェイクドキュメンタリーの時代』はこちらから読めます。

「放送禁止」から始まった愉快犯たちの闘い

本書によれば、日本のフェイクドキュメンタリーの端緒は2003年放送のテレビ番組『放送禁止』にあります。「実際の映像」として提示された内容が実はフィクションだったという構造は、当時のテレビ界に「分かりやすく正確であるべき」という常識への問いかけを突きつけました。

著者の戸部田誠(ペンネーム:てれびのスキマ)は、「わかりにくく、正しくない番組」を世に送り出してきた「愉快犯」たちの制作意図と闘いに迫っています。嘘の構造を使うことで、逆に「本物の感情」「現実の持つ不条理感」「人間の深いところにある恐怖や孤独」を描き出せるという逆説——それがフェイクドキュメンタリーが支持される理由です。本書にはさらに、2003年から2024年にかけてのフェイクドキュメンタリー番組年表も収録されています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「嘘」と「真実」の境界線への見方が変わった

この本を読んでから、映像コンテンツを見る目が変わりました。以前は「事実を伝えるか、フィクションか」という二項対立で映像を分類していましたが、本書を読んでからは「どのような手法で、どんな真実を伝えようとしているか」という問いを立てるようになりました。

フィクションであることを自覚しながらも、見ている間に「これは本当にあったことかもしれない」と感じる体験——その感覚こそがフェイクドキュメンタリーの本質で、「リアルに見える嘘」が「リアルな事実」より深く感情に触れることがある、という事実を知れるようになりました。

「演じられた恐怖」が「本当の恐怖」より怖い理由

本書を読んで印象に残ったのは、「実際に起きた事件の映像より、フェイクドキュメンタリーの方が怖い」という感覚の説明です。本物だと信じている映像は「現実の怖さ」に留まりますが、「嘘かもしれない」という疑念が混じる映像は、「これが現実にもありうる」という想像力を引き起こします。その想像力こそが、フェイクドキュメンタリーを特別な体験にしているのです。

テレビ史を知り尽くした著者が案内する「映像の逆説」

テレビ評論家としてテレビの歴史と文化を長年記録してきた戸部田誠(てれびのスキマ)が、フェイクドキュメンタリーというジャンルの誕生と発展を丁寧に追った一冊です。映像メディアへの深い愛情と批評眼が、このジャンルの本質を照らし出しています。

この本を読まなければ、フェイクドキュメンタリーを「ただの嘘コンテンツ」として見過ごし続けていたと思います。

戸部田誠著『フェイクドキュメンタリーの時代』はこちらから読めます。

内容紹介

テレビがいつも優しいと思うなよ

「フェイクドキュメンタリー」──嘘(フィクション)を前提にしながら事実(ドキュメンタリー)であるかのように見せるジャンルが支持を集めている。その端緒を遡ると2003年放送の伝説的テレビ番組『放送禁止』に突き当たる。

「分かりやすさ」や「正しさ」が第一義のテレビ界で、なぜフェイクドキュメンタリーの萌芽が生まれたのか。かつて「嘘」は「やらせ」として明確に認識されていたテレビ界で、なぜ平然と嘘を垂れ流すご法度に近い番組を放送できたのか。

万人向けを是とする価値観に抗い、“分かりにくく、正しくない番組”を世に放つ愉快犯たちの闘いに迫った正真正銘のノンフィクション!

巻末には2003年から2024年8月時点までの「フェイクドキュメンタリー(的)テレビ番組年表」を収録。

【編集担当からのおすすめ情報】
〈フェイクドキュメンタリーは今の“つまらない番組”が蔓延る状況下に偶然かつ必然に生まれた強烈なカウンターカルチャーであり、テレビの未来を想像する上では欠かすことのできないジャンルに違いない。〉
(「序章」より抜粋)

ゴールデン帯のテレビ番組表を見ると、大食い、クイズ、歌番組ばかり。そしてどの番組も画面いっぱいにテロップが広がり、けたたましい音のSEで溢れています。生粋のテレビっ子である著者・戸部田誠さんも“つまらない番組”が少なくないと正直に告白します。

そんな中で「フェイクドキュメンタリー」が未だかつてないほどの存在感を示しています。

フェイクドキュメンタリーのブームの源泉をたどると、2003年放送のテレビ番組『放送禁止』に突き当たります。“つまらない番組”だらけのテレビ界から、なぜハイコンテクストで万人向けであるとは言い難いコンテンツが生まれ、ブームを生み出したのでしょうか。

日本で最もテレビを視聴していると言っても過言ではない著者が、膨大な資料と番組制作者への直接取材を元に解き明かした「テレビ・フェイクドキュメンタリー現代史」をぜひご覧ください!

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
フェイクドキュメンタリーの時代: テレビの愉快犯たち (小学館新書 479)
著者
戸部田 誠(てれびのスキマ)
レーベル
小学館新書
出版社
小学館
発売日
2024年10月1日
ISBN
4098254794