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昭和天皇の終戦史 (岩波新書 新赤版 257)

吉田 裕

岩波新書 新赤版 / 岩波書店

1992年12月21日発売

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新書嫁レビュー

「昭和天皇は戦争を止めた側だった」という理解が、終戦の真相から目を逸らさせていた

2026-05-07

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「戦争を起こしたのは軍部で、天皇は戦争を望まなかった」とずっと思っていた

太平洋戦争の責任は軍国主義的な軍部にあり、昭和天皇は本来戦争を望まない穏健な君主だった——そういう理解を漠然と持っていました。終戦の「聖断」も、天皇が戦争を止めた証拠として語られ、東京裁判で天皇が訴追されなかったのも、関与が限られていたからだと思っていました。

でも、その理解にはどこか引っかかりがありました。なぜ戦後の日本でほぼそのままの体制が続いたのか。なぜ戦前と戦後に「連続性」があるのか。責任が軍部だけにあったなら、戦後の体制はもっと断絶的に変わっていてよいはずなのに。その問いが長い間宙吊りになっていました。

吉田裕著『昭和天皇の終戦史』を読んで、その問いへの重要な答えが見えてきました。

吉田裕著『昭和天皇の終戦史』はこちらから読めます。

天皇の免責は「事実の確認」ではなく「政治的取引」の結果だった

本書が明かすのは、昭和天皇の免責が生まれた構造です。日本側は「国体護持」——天皇制と皇室を守ること——を最優先として終戦工作を展開しました。一方のアメリカ側は、冷戦に備えて日本を反共の橋頭堡とするために天皇制を利用する計算がありました。この日米双方の思惑が一致した結果として、天皇は東京裁判で訴追されることなく免責されたのです。

著者が検証する「昭和天皇独白録」と東京裁判の尋問調書は、この過程を詳細に示します。宮中グループによるGHQへの働きかけ、陸軍への責任集中という戦略——戦争責任をめぐる取引の全容が、膨大な史料をもとに明らかにされます。「誰が決めたのか」という問いに対して、証拠に基づく明確な答えを出そうとする著者の姿勢が、読む者を歴史の現場へ引き込みます。本書にはさらに、行動原理としての「国体護持」がどう機能し続けたかを論じる章が続きます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

戦後日本の「なぜ?」がいくつか解けた

読む前と後で、戦後日本の政治的風景への見方が変わりました。以前は戦前と戦後の断絶を当然のものとして捉えていました。でも今は、戦後体制の中に戦前との連続性を持った構造があるという視点を持てるようになりました。

具体的には、日本の保守政治の「粘り強さ」や、戦争責任論が何十年経っても決着しない理由が、歴史的な文脈で理解できるようになりました。戦後の体制が特定の利害関係の上に設計されたものだとすれば、それを変えることの難しさは単なる保守性の問題ではなく、構造的な根拠を持っています。その認識が生まれると、現在の政治的現象への問いの立て方が変わります。過去の構造を知ることは、現在を批判するためではなく、現在を正確に読む目を養うためでもある——そういう感覚を、この本は与えてくれました。

一橋大学で日本近現代史を研究し続けた学者による、徹底した史料分析

吉田裕は一橋大学名誉教授で、日本近現代史、特に戦争責任論と戦後史を専門とする歴史家です。膨大な一次史料に基づく実証的な研究スタイルで、日本の戦争体験と戦後処理の問題を長年追い続けてきました。本書は1992年の刊行から現在まで、終戦史研究の基本文献として参照され続けており、その実証的な論述は時代を超えた説得力を持ちます。

この本を読まなければ、「軍部が悪くて天皇は無関係」という物語の整合性のなさに気づかないまま、日本の戦後史を眺め続けていたでしょう。

吉田裕著『昭和天皇の終戦史』はこちらから読めます。

内容紹介

戦争責任ははたして軍部だけにあったのか?天皇と側近たちの「国体護持」のシナリオとは何であったか?近年、社会的反響を呼んだ「昭和天皇独白録」を徹底的に検証し、また東京裁判・国際検察局の尋問調書など膨大な史料を調査・検討した著者は、水面下で錯綜しつつ展開された、終戦工作の全容を初めて浮き彫りにする。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
昭和天皇の終戦史 (岩波新書 新赤版 257)
著者
吉田 裕
レーベル
岩波新書 新赤版
出版社
岩波書店
発売日
1992年12月21日
ISBN
4004302579