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疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)

池内 了

岩波新書 新赤版 / 岩波書店

2008年4月22日発売

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新書嫁レビュー

「疑似科学は簡単に見分けられる」という思い込みが、科学が苦手とする問題でも疑似科学が生まれるという複雑な構造を見えなくしていた

2026-05-18

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「疑似科学とは占いや超能力のような明らかに非科学的なものであり、少し考えればすぐに見分けられる」とずっと思っていた

疑似科学といえば、血液型性格判断・オーラ・怪しい健康食品——「科学的根拠がない」と一目でわかるものという感覚がありました。教育を受けた人間ならば簡単に騙されないという前提があり、疑似科学にはまる人を「批判的思考が足りない」と少し見下す感覚さえありました。「自分は科学的な情報を正しく判断できている」という自信がありました。

でも、地球温暖化問題・遺伝子組み換え食品・放射線リスク——こうした問題について「科学的な正解はどこにあるのか」という問いに向き合うとき、「疑似科学か本物の科学か」の境界線が実は曖昧であることに、うまく向き合えないままでいました。

池内了著『疑似科学入門』を読んで、その曖昧さの正体がわかりました。

池内了著『疑似科学入門』はこちらから読めます。

疑似科学には三つの種類があり、「科学が不得手とする問題」でも疑似科学は生まれる

著者が本書で示す核心は、疑似科学を「科学に見せかけた非科学」という一種類ではなく、三つの種類に分類することで、疑似科学がはびこる構造を見通せるようになるという視点です。第一種は占いや超能力のような「科学の時代の非合理主義」。第二種は正規の科学知識を悪用・乱用した「科学の悪用」。そして第三種は地球温暖化・放射線リスクなど「科学そのものが不確実性を抱える問題」での疑似科学です。

特に印象的なのは第三種の疑似科学です。「科学的」という言葉を使いながら、不確実な科学的証拠を特定の立場から都合よく解釈するとき、「本物の科学」と「疑似科学」の境界は誰にとっても容易には見えません。地球温暖化の懐疑論・ワクチンリスクの誇張・原発の安全神話——これらは科学の言葉で語られるがゆえに、「これは疑似科学だ」と一目ではわからない形をしています。著者は、科学リテラシーとはこの第三種の疑似科学を見極める力こそが核心だと論じます。本書にはさらに、疑似科学がなぜ社会にはびこるのかという社会的背景の分析が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「科学的」という言葉への無防備な信頼が崩れ、問いを持って情報を読む習慣が生まれた

読む前と後で、科学的情報への向き合い方が変わりました。以前は「科学的に証明されている」という表現を聞けば安心して受け取っていました。でも今は、「何がどのような方法で証明されているのか」「その不確実性はどのくらいか」「誰がその結論から利益を得るのか」という問いを持つようになりました。

具体的には、健康食品の広告を見るとき、「○○が科学的に証明された」という言葉に対して「どのような実験で、どのくらいの規模で、誰がどのように検証したのか」という問いが浮かびます。また、気候変動や原発について専門家の意見が分かれているとき、「科学的合意はどこにあり、残る不確実性は何か」を区別して考えるようになりました。「科学的」という言葉に反射的に信頼を寄せる習慣が崩れ、問いを持って情報を読む眼が生まれました。

総合研究大学院大学教授・宇宙物理学者が「科学が不得手とする問題」まで射程に入れた疑似科学論を展開した

池内了(1944年生まれ)は総合研究大学院大学教授として宇宙物理学・科学技術社会論を専門とし、科学と社会の関係を問い続けてきた研究者です。現役の宇宙物理学者が「科学の内側」から疑似科学を論じる本書は、「疑似科学は非科学的なもの」という単純な定義を超え、科学の不確実性そのものが疑似科学を生む構造まで踏み込んだ一冊です。

この本を読まなければ、疑似科学を占いや超能力の問題として受け取ったまま、科学が不得手とする問題での疑似科学という最も見分けにくい罠と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

池内了著『疑似科学入門』はこちらから読めます。

内容紹介

はじめに

第1章 科学の時代の非合理主義──第一種疑似科学
 1 占い、超能力・超科学、疑似宗教
 占い系/超科学系/超能力系/疑似宗教系/アメリカの疑似科学
 2 第一種疑似科学の特徴
 疑似科学は反証できない/ 「ウソと言うなら証明せよ」/偶然の過大評価/疑似科学の罪
 3 超常現象の心理学──なぜ信じてしまうのか
 超常現象を信じる心/知覚エラー/記憶エラー/思考バイアス/判断エラー/共通する心理作用

第2章 科学の悪用・乱用──第二種疑似科学
 1 科学を装う手口
  「科学的」に見せる/水ビジネス/社会に認知されている疑似科学/物理用語のイメージ/DNAが決める運命/権威づけを怠りなく/わかりやすい説明/技の複合
 2 第二種疑似科学の内幕
 科学の法則違反/プラシーボ効果/科学的根拠薄弱/統計の悪用/確率による騙し/数字のマジック/相関関係を因果関係とする誤用

第3章 疑似科学はなぜはびこるか
 1 科学へのさまざまな視線
 科学と科学者への失望/すべて「お任せ」の態度/技術による道徳の代行/現代の神話
 2 自己流科学
 科学への偏愛/インターネットの隆盛/健康ブーム/テレビの影響
 3 科学と非合理主義
 ポストモダニズムとニューエイジ・サイエンス

第4章 科学が不得手とする問題──第三種疑似科学
 1 複雑系とは何か
 要素還元主義の限界/複雑系のふるまい/人間の関与
 2 地球環境問題の諸相
 地球という複雑系/異常気象は温暖化のせいか?/二酸化炭素は悪者か
 3 複雑系との付き合い方
  「科学的根拠なし」の言説/未成熟科学の見守り方/予防措置原則
 4 予防措置原則の応用
 地球環境問題の否定派と肯定派/地震は予知できるのか、できないのか/狂牛病の「プリオン説」は正しいのか/電磁波は危険なのか/疫学は信用できるのか/遺伝子組換え作物は危険なのか

終章 疑似科学の処方箋
 1 疑似科学は廃れない
 2 正しく疑う心
 3 疑似科学を教える
 4 予防措置原則の重要さ
 5 科学者の見分け方

参考文献
あとがき

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)
著者
池内 了
レーベル
岩波新書 新赤版
出版社
岩波書店
発売日
2008年4月22日
ISBN
4004311314