新書嫁レビュー
毎朝のぼる太陽が、文明を一夜で止めるかもしれない
2026-05-30
太陽は、変わらず優しく照らし続けるものだと思っていた
太陽は毎朝同じように昇り、同じように沈む。私にとってそれは、世界でいちばん安定した存在の象徴でした。気候の話で多少気にかけることはあっても、あの輝きそのものが私たちの暮らしを脅かすなどと考えたことはありません。けれど、どこか漠然とした落ち着かなさもありました。あれほど巨大なエネルギーの塊が、本当にいつまでも穏やかでいてくれるのか——その問いから目をそらしたまま過ごしていたのです。柴田一成著『太陽の脅威と人類の未来』を読んで、その安心が思い込みにすぎなかったと知り、空を見上げる目が変わりました。
柴田一成著『太陽の脅威と人類の未来』はこちらから読めます。
「いつも穏やかな太陽」という思い込みの裏側
本書が描き出すのは、私たちが思うよりずっと激しい太陽の素顔です。太陽の表面では「フレア」と呼ばれる爆発がたびたび起こり、噴き出すガスは旅客機をはるかに上回る速度で宇宙へ飛び散ります。そして本書で語られるのが、通常をはるかに超える規模の「スーパーフレア」の脅威です。著者らの研究グループは、太陽によく似た恒星でスーパーフレアが起きていることを観測し、太陽でも数千年に一度の頻度で生じうると報告しました。これまで太陽のような穏やかな星では起きないと考えられていた現象が、実は決して例外ではなかったというのです。もし巨大なフレアが地球を直撃すれば、人工衛星の故障や通信障害、さらには大規模な停電を引き起こす可能性があるとされています。過去には19世紀半ばに大規模な太陽嵐が観測され、当時普及し始めていた電信網が混乱したと伝えられています。電気にここまで依存していなかった時代でさえ影響が出たのですから、あらゆるものが電力でつながった現代に同じ規模の嵐が来たらどうなるのか、想像すると背筋が伸びます。本書ではこのほか、月の不思議や太陽系の惑星たちの個性、さらには地球外生命体をめぐる真面目な議論まで、第一線の天文学者の視点から幅広く展開されます。あの見慣れた光の正体については、ぜひ本書で確かめてみてください。
空を見上げるたびに、文明の薄さを思うようになった
この本を読んでから、晴れた日に空を見上げる感覚が一変しました。以前は太陽を、ただ暖かくありがたいものとしか思っていませんでした。けれど今は、あの光の向こうで休みなく続いている爆発と、それが届くまでのわずかな距離を意識します。スマートフォンの電波も、家の照明も、当たり前に流れる電気も、宇宙の機嫌しだいで揺らぎうる薄い膜の上に成り立っているのだと実感するようになりました。怖いというより、むしろ日々の便利さがどれほど精妙な条件の上に乗っているかがわかり、何気ない一日がいとおしく感じられるようになったのです。
知らないままでいるには、あまりに大きな話だった
この本に出会わなければ、私は太陽を「ただ優しいもの」と信じたまま、その本当の姿を一度も知らずに過ごしていたはずです。著者の柴田一成氏は、京都大学名誉教授で日本天文学会の会長も務めた太陽研究の第一人者であり、太陽によく似た恒星でのスーパーフレア発見を主導した人物です。観測の最前線に立ち続けた科学者だからこそ、脅威をいたずらに煽るのではなく、何がどこまでわかっているのかを誠実に語ることができるのだと思います。毎日見上げる太陽の知らない一面を覗いてみたい方に、おすすめしたい一冊です。
柴田一成著『太陽の脅威と人類の未来』はこちらから読めます。
内容紹介
夜、空を眺めると星のまたたきに心安らぎを覚える。
静けさに満ちた不変の宇宙……というイメージだが、太陽は毎秒21キロの速さで銀河系を動き、
フレア(太陽面爆発)が起きるとジェット旅客機の数千倍もの速度でガスを噴出させている。
遠くの彼方で起きている現象とはいえ、地球への影響は甚大で、ときに大停電を起こす可能性も…。
20世紀になり、宇宙は私たちがイメージしている姿とは異なり、おどろくほど動的なことがわかってきた。
また、絵空事と考えられていたUFOや宇宙人についても、2020年にアメリカ国防総省がUFOの存在を公式に認め動画を公開するなど、新たな展開が起きている。
私たちの想像をはるかに超えたスケールで起こるさまざまな現象、知っているようで知らない宇宙の姿を、太陽研究の第一人者が紹介する。
(章立て)
第一章 とんでもなく激しい太陽の素顔と星のスーパーフレア
第二章 超巨大な衛星、月の不思議
第三章 個性豊かな太陽系の惑星たち
第四章 スーパーフレアの謎を解くリコネクション
第五章 地球外生命体のマジメな議論
第六章 天文学者が目指す地平
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 太陽の脅威と人類の未来 (角川新書)
- 著者
- 柴田 一成
- レーベル
- 角川新書
- 出版社
- KADOKAWA
- 発売日
- 2024年7月10日
- ISBN
- 4040824970