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人生に疲れたらスペイン巡礼~飲み、食べ、歩く800キロの旅~ (光文社新書)

小野 美由紀

光文社新書 / 光文社

2015年7月16日発売

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新書嫁レビュー

800キロ歩いて、捨ててきたものがある——スペイン巡礼という旅の正体

2026-07-18

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「巡礼」は、宗教的な人間がするものだと思っていた

カミーノ・デ・サンティアゴという巡礼路の名前を聞いたとき、それはカトリック信者のための旅だと思っていた。信仰を持たない自分には関係ない話だし、800キロを歩くというのは体力自慢のアスリートか、よほど時間のある人間がすることだ、という先入観があった。旅に出て何かを変えようとする人たちの話を聞くたびに、羨ましいとも思わなかった。自分の停滞感や疲れは、旅で解決できるような単純なものではない——そう思って、無意識のうちに心のドアを閉じていた。日常に倦んでいるのに、その倦み方の原因を直視することが怖かったのかもしれない。

ところが、小野美由紀著『人生に疲れたらスペイン巡礼 飲み、食べ、歩く800キロの旅』を読んで、その認識がひっくり返った。この旅は信仰のためではなく、「余計なものを捨て、本当の自分を発見する」ためのものだったのだ。

小野美由紀著『人生に疲れたらスペイン巡礼』はこちらから読めます。

歩くことで、頭の中が変わっていく

著者の小野美由紀氏は、慶應義塾大学を卒業後に就職活動で挫折し、答えを求めてスペイン巡礼に旅立った。本書は実際の800キロを「肉体の道」「頭の道」「魂の道」という3つの段階で描いている。

旅の序盤、ピレネー山脈を越えるハードな道程では、体力の限界と向き合うことになる。しかし300キロ、500キロと歩き続けるうちに、思考の様子が変わってくる。日本にいたときに頭を占領していた「将来の不安」や「他人の評価」への執着が、少しずつ薄れていく。歩くという単純な反復が、余計な思考を排除していく。

巡礼路では国籍も年齢も職業も関係なく、旅人たちが自然と言葉を交わす。ブラジル人、アメリカ人、韓国人、メキシコ人——様々なバックグラウンドを持つ人々との出会いが、著者に「何度失敗しても、それが人生だ」という感覚を育てていく。本書にはその具体的な対話や出来事が、軽やかな文章でつぶさに描かれている。ぜひ本書で確かめてみてください。

「立ち止まること」が、実は前進だったと気づいた

この本を読む前は、何かに行き詰まったときの選択肢として「立ち止まること」が頭になかった。焦って次の手を探すか、ただ耐えるか。その二択しかないと思っていた。

本書を読んだ後、「立ち止まって歩く」という逆説的な選択が見えてきた。日常から完全に切り離された800キロの道を歩くことは、何も生産していないように見えて、実は頭と心を本質的な問いだけに向き合わせる行為だ。毎日の目標は「今日の宿まで歩く」ただそれだけ。その単純さの中で、著者は就職の挫折という傷を抱えて出発しながら、「失敗したっていい、やり直せる」という確信を持って帰国した。

旅に出なくても、この本を読むことで「立ち止まること」の価値が少しわかった気がした。忙しさの中で見失っていた問い——「自分は本当は何をしたいのか」——が、ぼんやりとした形で浮かび上がってきた。

「逃げ」ではなく「選択」だったと、今なら言える

この本を読まなければ、スペイン巡礼は宗教的な人間か、傷ついた魂の「逃げ場」にすぎないと思い続けていただろう。しかし著者が3度にわたって全800キロを歩いたという事実が示すように、それは逃げではなく、明確な意図を持った選択だった。

著者の小野美由紀氏はその後、作家・エッセイストとして活動を続け、女性の等身大の声を発信するメディアで多くの読者を得ている。本書は「巡礼に行く人のためのガイド」ではなく、疲れた人間が旅の中で何かを発見していく過程の記録だ。佐々木俊尚氏が「これこそがサバイブの時代の旅だ。要らないものを捨て去り、最後に残る自分を発見する旅」と評した意味が、読み終えると腑に落ちる。

小野美由紀著『人生に疲れたらスペイン巡礼』はこちらから読めます。

内容紹介

これこそがサバイブの時代の旅だ。要らないものを捨て去り、最後に残る自分を発見する旅。目的は人それぞれ。いつかは行きたい!スペイン版お遍路。カラー写真多数収録。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
人生に疲れたらスペイン巡礼~飲み、食べ、歩く800キロの旅~ (光文社新書)
著者
小野 美由紀
レーベル
光文社新書
出版社
光文社
発売日
2015年7月16日
ISBN
9784334038670