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いちばんわかりやすい 北欧神話 (じっぴコンパクト新書)

杉原 梨江子

じっぴコンパクト新書 / 実業之日本社

2013年1月19日発売

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新書嫁レビュー

神なのに、滅びる——強さの神話だと思っていた北欧神話の正体

2026-07-17

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神話の神々は、全能で無敵だと思っていた

ギリシャ神話の神々のように、神とは人間を超えた力で世界を思いのままに動かす存在だと、長いあいだ思っていました。ゲームや映画でおなじみのオーディンやトール、ロキの名前を知っていても、彼らがどういう神なのかと聞かれると、案外うまく答えられない。強い、こわい、なんとなく荘厳——その程度のぼんやりした像しか持っていませんでした。そしてその像のままだと、なぜ北欧の物語が指輪物語からゲームまでこれほど人を惹きつけるのか、どこか腑に落ちないままだったのです。杉原梨江子著『いちばんわかりやすい 北欧神話』を読んで、その認識は根底から崩れました。

杉原梨江子著『いちばんわかりやすい 北欧神話』はこちらから読めます。

神々は、自分たちが滅びることを知っていた

北欧神話の神々は、無敵どころか、最後には滅びる運命を背負っています。ラグナロクと呼ばれる最終戦争で、主神オーディンは巨大な狼フェンリルに飲み込まれ、雷神トールも大蛇との相討ちで命を落とす。そして驚くべきは、神々自身がその結末をあらかじめ知っているということです。オーディンは知恵を得るために、世界樹のふもとの泉で自分の片目を差し出しました。その代償として手に入れた知識が、自分たちの破滅という予言だったのです。それでも神々は逃げず、滅びの日に向けて静かに備えていく。善と悪をあわせ持つ神ロキの気まぐれな悪戯、力は強いのにどこか抜けたところのあるトールの振る舞い。本書では、こうした神々一人ひとりのエピソードがやさしくほどかれ、彼らがいかに弱さや愚かさを抱えた存在だったかが描かれます。神でありながら欺かれ、嫉妬し、間違える——その不完全さが、かえって物語に血を通わせています。さらに、すべてが滅びた後にもう一度世界が芽吹くという再生の物語まで、北欧の人々が紡いだ死生観の全体像へと踏み込んでいきます。その先は、ぜひ本書で確かめてみてください。

弱さを知った神は、こんなにも近い存在になる

この一点を知るだけで、神々の見え方がまるで変わりました。これまでは遠い偶像のように感じていた北欧の神々が、滅びを知りながらなお立ち向かう、どこか人間くさい存在として迫ってきたのです。ゲームでオーディンやフェンリルの名前を見かけたとき、以前はただの強そうな固有名詞でした。けれど今は、その背後にある片目の代償や避けられない運命を思い出し、画面の向こうに物語の重みを感じるようになりました。過酷な冬を生き抜いた北欧の人々が、なぜ無敵ではなく滅びる神を信じたのか。長く厳しい冬を越えてようやく春を迎える土地で、終わりと再生を繰り返す物語が生まれた——そう思うと、神話が単なる空想ではなく、その地に生きた人々の心の形そのものに思えてきます。その問いが、自分の日常の景色に小さな奥行きを添えてくれるのです。

知らないままなら、ただの名前で終わっていた

この本を読まなければ、北欧神話はゲームや映画に出てくる格好いい名前の寄せ集めのまま終わっていたはずです。著者の杉原梨江子さんは、世界の樹木信仰や神話を長年研究し、北欧の宇宙樹思想を原典で読むために古代アイスランド語まで学んだ書き手です。だからこそ、入門書でありながら物語の奥にある死生観まで自然に手渡してくれる。あなたが見かけたあの神の名前にも、滅びと再生の物語が眠っているかもしれません。

杉原梨江子著『いちばんわかりやすい 北欧神話』はこちらから読めます。

内容紹介

『エッダ』『サガ』として、今に伝えられる神話への「いちばんわかりやすい」入門書!

今から約2000年前、北欧の国々で信仰されていた多くの神々、主神オーディン、雷神トール、
善悪併せ持つ神ロキ、女性戦士ヴァルキューレなどが巻き起こす出来事や偉大さを、
生き生きと描いた物語群が北欧神話。
聞き覚えのない神様の名前のように思うかもしれないが曜日のいくつか、例えば
火曜日【Tuesday】は戦いの神テュールの日、水曜日【Wednesday】は主神オーディンの日、
木曜日【Thursday】は雷神トールの日、金曜日【Friday】は愛と豊穣の女神フレイヤの日と関連づいている。
じつは私たちの身の回りには北欧神話の神々が生き続けているのだ。

【目次】
■巻頭折り込み
●北欧神話関係図(主な神々や巨人族などのつながりがひと目でわかる)
●北欧神話の世界観(世界樹ユグドラシル詳細図)

■序章:北欧神話とは何か?
●北欧神話とは? 北欧の人々の生活に息づいた神々
●北欧神話を育んだ著作 『詩のエッダ』と『スノリのエッダ』
●北欧神話の特徴 物語を理解するためにおさえておきたいポイント

■第1章:北欧神話の世界観 原初神殺害の歴史から幕を開けるオーディンの世界創造
●北欧神話の宇宙の構成 3つの世界に根を伸ばす世界を構成する大樹、宇宙樹ユグドラシル
●北欧神話の9つの世界 北欧神話の舞台となる国々
●北欧神話物語 創造から最終戦争ラグナロク、そして世界の再生まで10編のエピソードが紡ぐ壮大なる物語!

■第2章 北欧神話の登場人物
神族、巨人族、人間族……さまざまな種族のキャラクターのプロフィールをくわしく紹介。

■第3章 神々の事件簿
神々や英雄たちが引き起こした数々の奇想天外なエピソードはまるで新聞の三面記事のよう。

■第4章 北欧神話の文化 北欧神話に登場する文字(ルーン)や呪術、アイテム、動物たち
■第5章 神々の黄昏ラグナロク いかにして最終戦争が起こり、世界は復活したか?

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
いちばんわかりやすい 北欧神話 (じっぴコンパクト新書)
著者
杉原 梨江子
レーベル
じっぴコンパクト新書
出版社
実業之日本社
発売日
2013年1月19日
ISBN
9784408109732