← ブックフィード 新書嫁 新書を、1冊ずつ読み解く PR

新潟「地理・地名・地図」の謎 (じっぴコンパクト新書)

新潟郷土史研究会

じっぴコンパクト新書 / 実業之日本社

2015年1月1日発売

楽天ブックスAmazon

新書嫁レビュー

新潟の川は、昔まったく別の場所を流れていた

2026-06-10

書評を読む画面で開く →

川はずっと同じ場所を流れていると思っていた

地図に描かれた川を見るとき、私はそれが何百年も同じ場所を流れてきたものだと思い込んでいました。川は地形そのもので、人の都合で動くようなものではない、と。でも、その感覚のまま新潟という土地を眺めていると、どこか腑に落ちないことがありました。なぜ越後平野はこれほど広く平らなのか。なぜ似たような地名がそこかしこに散らばっているのか。理由を考えたこともないのに、漠然とした違和感だけが残っていたのです。その認識を根底から崩してくれたのが、新潟郷土史研究会による『新潟「地理・地名・地図」の謎』でした。

新潟郷土史研究会著『新潟「地理・地名・地図」の謎』はこちらから読めます。

信濃川と阿賀野川は、もともと一つの河口に注いでいた

驚いたのは、信濃川と阿賀野川という新潟を代表する二つの大河が、江戸時代の半ばまで河口付近で隣り合い、ほぼ一体となって日本海に注いでいたという事実です。本書によれば、阿賀野川は砂丘にさえぎられてS字状に大きく曲がり、現在とはまるで違う流れ方をしていたとされています。それが寛永十年(一六三三年)の洪水をきっかけに両川を結ぶ細い水路が決壊し、さらに後年、雪解け水が堰を壊して、阿賀野川は日本海へ最短距離でまっすぐ抜ける今の流れへと姿を変えていきました。地図の上では悠然と決まりきって見える太い川筋も、実際には洪水と治水のせめぎ合いの末にようやく落ち着いた、比較的新しい姿だったのです。広大な越後平野そのものが、二つの川が運んだ土砂で長い時間をかけて作られた沖積平野だと知ると、米どころ・酒どころとしての新潟の豊かさが、この水と土の歴史と地続きであることがじわりと見えてきます。本書には、こうした川の付け替えが土地や暮らしをどう作り変えていったのか、十日町や六日町といった「市の日」に由来する地名に刻まれた人々の営みについても、より踏み込んだ話が展開されます。ぜひ本書でその続きを確かめてみてください。

地図が、過去の物語を読む道具に変わった

この本を読んでから、地図の見え方が変わりました。以前は目的地までの道のりを確認するだけの実用的な紙でしたが、今は等高線や川の曲がり方を見るたびに、その裏にどんな水との格闘があったのかを想像するようになりました。地名についても同じで、ただの記号として読み飛ばしていた駅名や町名が、なぜそう名づけられたのかを考える対象に変わったのです。新潟の米菓が全国的に有名なのも、酒どころとして名を馳せたのも、この水の豊かさと無縁ではないと知ると、スーパーで手に取るおせんべいの袋に印刷された「製造元・新潟」の文字さえ、急に物語を帯びて見えてきます。買い物のついでに袋の裏を確かめてしまうようになったのは、この本を読んだあとの小さな変化です。ただ通り過ぎていた土地の名前が、過去から続く一続きの時間として立ち上がってくる感覚は、思いがけず日常を豊かにしてくれました。

知らないままだと、足元の物語に気づけない

この本に出会わなければ、私は川も地名もずっと「最初からそこにあったもの」として通り過ぎていたはずです。郷土史を地道に掘り起こしてきた研究会だからこそ集められた、地元の人さえ二度見するような土地の記憶が、ここには丁寧に編まれています。自分の暮らす土地にも、まだ気づいていない地形の物語が眠っているかもしれない。そう感じた方にこそ届いてほしい一冊です。

新潟郷土史研究会著『新潟「地理・地名・地図」の謎』はこちらから読めます。

内容紹介

宗派を超えてお寺がズラリと並ぶ新潟・寺町ができた理由とは?越後山脈が雪を降らせ、雪は大河となり、大地を潤す。湿地を肥沃な大地に変えた新潟の先人たちの努力とは?新潟をもっともっと知りたくなる好奇心の本!

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
新潟「地理・地名・地図」の謎 (じっぴコンパクト新書)
著者
新潟郷土史研究会
レーベル
じっぴコンパクト新書
出版社
実業之日本社
発売日
2015年1月1日
ISBN
4408111155