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新書763バレンタインデーの秘密 (平凡社新書 763)

浜本隆志

平凡社新書 / 平凡社

2015年1月17日発売

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新書嫁レビュー

チョコレートを贈る日——その習慣の裏に、千年の愛と欲望の歴史があった

2026-07-03

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バレンタインは、お菓子メーカーが作った商売の日だと思っていた

二月十四日にチョコレートを贈る。あの習慣は、お菓子メーカーが売り上げのために仕掛けた、いわば商業的なイベントだと思っていました。海外から来たロマンチックな風習に、日本のお菓子業界が乗っかったもの。だいたいそんな理解で、深く考えたことはありませんでした。けれど毎年この時期になると、なぜ「愛を伝える日」が二月の半ばなのか、なぜよりによってチョコレートなのか、という素朴な疑問がちらりと頭をよぎっては、答えを探さないまま消えていきました。あたりまえのように繰り返している習慣ほど、その由来を知らないままでいる。本書は、その足元の空白を埋めてくれました。

浜本隆志著『新書763バレンタインデーの秘密』はこちらから読めます。

ひとつの宗教的な儀礼が、世界を旅して今の形になった

本書が明かすのは、バレンタインデーが単なる商業イベントではなく、ヨーロッパの宗教的な儀礼にまでさかのぼる、長い文化史を背負った習慣だという事実です。聖バレンタインの殉教の伝説に始まり、イスラム文化の影響を受け、ヨーロッパ各地へ広がる過程で形を変え、世俗化していく。愛を伝える媒介がバレンタインカードからチョコレートへと移り変わり、やがてアメリカを経て日本へとたどり着く。本書の副題は「愛の宗教文化史」で、世界史の裏に隠れた愛と欲望の系譜が一本の線として描かれています。興味深いのは、もともと愛を伝える媒介が手紙やカードだった時代があり、それがやがてチョコレートへと置き換わっていったという点です。さらに本書は、日本で「女性が男性に贈る」という独特の形が定着していった経緯にも目を向け、世界共通だと思っていた習慣が、実は土地ごとにまったく違う顔を持っていることを明かしていきます。私たちが何気なく続けている習慣の背後に、これほど壮大な物語が流れていたとは思いもしませんでした。チョコレートという媒介がなぜ選ばれたのか、その章ではより踏み込んだ経緯が語られていて、続きはぜひ本書で確かめてみてください。

見慣れた行事が、急に奥行きを持って見えてきた

この本を読んでから、街の景色の見え方が変わりました。以前は、二月になって店先にチョコレートが並んでも、ただの季節の風物詩として通り過ぎていました。けれど今は、その色とりどりの箱の向こうに、海を越え時代を越えて変容してきた千年の文化の流れが透けて見えるのです。クリスマスやハロウィンといった他の行事を見るときも、「これも元をたどればどんな儀礼だったのだろう」と自然に考えるようになりました。スーパーの売り場に並ぶ季節の商品を眺めるだけでも、その向こうに長い時間の流れを想像してしまう。先日も友人とチョコレートを選びながら、「この習慣ってもともと宗教行事だったらしいよ」と話したら、会話がいつもより少しだけ豊かになりました。何気ない年中行事のひとつひとつが、人類の歩んできた歴史の堆積物に見えてくる。あたりまえだと思っていた日常が、実は深い物語を抱えていると気付いたとき、世界が一段と豊かに感じられるようになりました。

知らないままなら、毎年表面だけをなぞっていた

この本を読まなければ、私はこれからも毎年バレンタインを表面だけなぞり、その背後にある豊かな歴史にまったく気付かないままだったはずです。著者の浜本隆志さんは、関西大学名誉教授で、ドイツ・ヨーロッパの文化研究を専門とする文学博士です。ヨーロッパ文化の細部から大きな歴史の流れを読み解いてきた研究者だからこそ、ひとつの習慣をこれほど立体的に語ることができるのだと思います。見慣れた行事の奥にある物語を知りたい方には、世界の見え方を変えてくれる一冊です。

浜本隆志著『新書763バレンタインデーの秘密』はこちらから読めます。

内容紹介

いまや「チョコレート業界の陰謀」とも称されるバレンタインデーだが、日本ではなぜ女性が男性にチョコレートを贈る日となったのか。古代、性の放蕩を目的としたヨーロッパ土着の宗教儀礼が世界習俗と化すに至ったルートをたどり、その系譜から浮かび上がる愛の宗教文化史に迫る。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
新書763バレンタインデーの秘密 (平凡社新書 763)
著者
浜本隆志
レーベル
平凡社新書
出版社
平凡社
発売日
2015年1月17日
ISBN
4582857639