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恐怖の加工食品: AF2その他の添加物 (三一新書 821)

郡司 篤孝

三一新書 / 三一書房

1983年7月1日発売

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新書嫁レビュー

毎日食べていた豆腐の裏側に、ある一文字の正体が隠れていた

2026-06-08

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「安いものには裏がある」くらいに思っていた

スーパーで豆腐や練り物を選ぶとき、私はせいぜい産地と値段を見比べるくらいでした。保存料という言葉は知っていても、どこか他人事で、「まあ国が許可しているなら大丈夫だろう」と漠然と信じて口に運んでいたのです。けれど、その「許可されているから安全」という前提そのものが、かつて大きく揺らいだ時代があったことを、私はこの本で初めて知りました。読み終えたあと、冷蔵庫を開けるたびに、これまで見ていなかった裏面の小さな文字が急に目に飛び込んでくるようになりました。

郡司篤孝著『恐怖の加工食品 AF2その他の添加物』はこちらから読めます。

「AF2」という三文字が背負っていた歴史

本書の中心に置かれているのは、AF2(フリルフラマイド)という防腐剤です。これは1960年代から豆腐やかまぼこ、魚肉ソーセージの保存料として広く使われていた物質でした。ところが1971年、東京医科歯科大学の研究グループによってヒトの染色体に異常を起こすことが報告され、1973年には国立遺伝学研究所の実験で細菌の遺伝子に突然変異を起こすことが確認されます。動物実験では前胃にがんが発生し、ついに国は1974年、この添加物の使用を禁止しました。本書が世に出たのは、まさにその禁止と同じ年です。さらに、AF2を扱っていた豆腐製造業者の間に皮膚炎や神経障害の症状が出ていたことも報告されており、製造の現場にまで影響が及んでいた様子が伝わってきます。「許可されているから安全」だったはずの物質が、ある日を境に「発がん性のある危険物質」へと評価が反転していく。その過程が、当時の生々しい空気とともに描かれています。本書ではAF2だけでなく、当時の加工食品全般に潜むさまざまな添加物についても章を割いて踏み込んでいて、一つの物質をめぐる騒動が、食卓全体への問い直しへと広がっていきます。読み進めるほど、私たちが「あたりまえの食べ物」と思っているものが、いかに多くの判断の積み重ねの上に成り立っているかが見えてきます。

「裏面を読む」という行為が、習慣になった

この本を読む前の私は、食品を「ブランドと値段」で選んでいました。読んだあとは、まず裏返して原材料表示を眺めるようになりました。何が入っているかを完全に理解できるわけではありません。それでも、「自分が口にするものが何でできているのかを、自分の目で一度確かめる」という小さな動作が加わっただけで、買い物の風景がまるで違って見えるのです。かつて安全とされた物質が後に禁止された事実を知っていると、いま安全とされているものに対しても、頭ごなしに不安がるのでもなく、盲目的に信じるのでもない、ちょうどよい距離感で向き合えるようになりました。たとえば子どもに食べさせるものを選ぶとき、以前なら値段だけで決めていた場面で、ほんの数秒だけ表示に目を落とすようになる。その数秒が、不安からではなく納得から生まれているのが自分でも心地よいのです。霧が晴れるように、食卓と自分の関係が一段はっきりした感覚があります。

知らないままでいることの、静かな危うさ

この本を手に取らなければ、私はAF2という三文字も、それが禁止された年に何が起きていたのかも、知らないまま過ごしていたはずです。食品の安全をめぐる評価は固定されたものではなく、科学の進展とともに書き換えられていく。その当たり前の事実を、具体的な事件として体に刻めたことが、いちばんの収穫でした。著者の郡司篤孝氏は、食品添加物の危険性を一般に向けて問い続けた食品問題の書き手として知られ、後年も加工食品の安全を論じる著作を重ねています。その視点が一冊に凝縮された本書を、ぜひ手元で確かめてみてください。

郡司篤孝著『恐怖の加工食品 AF2その他の添加物』はこちらから読めます。

書誌情報

書名
恐怖の加工食品: AF2その他の添加物 (三一新書 821)
著者
郡司 篤孝
レーベル
三一新書
出版社
三一書房
発売日
1983年7月1日
ISBN
4380740056