新書嫁レビュー
「勉強しなさい」と言い続けた——その言葉が、実は逆効果だったとは
2026-07-20
子どもに勉強させるには「やりなさい」しかないと思っていた
子どもが勉強をしないとき、親としてできることは「早くやりなさい」「宿題終わったの?」と声をかけることだと思っていた。やらなければ叱り、少し頑張ったら「もっとできるでしょ」と背中を押す。そういうやり取りを続けながら、どこかで「なぜうちの子は自分から勉強しないのだろう」という疑問を抱えていた。叱る回数が増えるほど子どもが勉強を嫌いになっていくように見えて、どこかで悪循環に入り込んでいる気はしていた。でも他にどうしたらいいのか、言葉として持っていなかった。「勉強は大事」と言い聞かせることと、子どもが勉強を好きになることは、違うことのように感じていたが、その違いに名前をつけられなかった。
ところが、齋藤孝著『この三つの言葉で、勉強好きな子どもが育つ』を読んで、その認識が崩れた。勉強嫌いの子を生むのは子どもの性質ではなく、親の声かけの仕方に根本的な問題があったのだ。
齋藤孝著『この三つの言葉で、勉強好きな子どもが育つ』はこちらから読めます。
「いま言ってみて」の一言が、記憶を定着させる
本書が示す三つの言葉のうち、最初のものが「いま言ってみて」だ。何かを覚えさせた直後に「それをそのまま声に出してみて」と促す言葉である。インプットした内容を口に出すことで記憶への定着率が大幅に上がることは、認知科学の研究で示されている。「声に出して読みたい日本語」で累計シリーズ260万部のベストセラーを生んだ著者が、音読の効果を子育てに応用した形だ。
二つ目は「すごい、努力する才能がある」だ。「頭がいい」と褒めるのではなく、「努力できる」という行動を褒める。スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェックの研究によれば、能力を褒められた子どもは失敗を恐れて挑戦を避けるようになり、努力を褒められた子どもは困難を成長の機会として捉えるようになるという。三つ目の「まず何からやる?」は、勉強の段取り力を育てる一言だ。何から手をつければいいかわからない状態を解消し、自分で優先順位をつける習慣を作る。本書にはさらに三つの言葉の組み合わせ方や、具体的な使い方の例も詳しく解説されている。ぜひ本書で確かめてみてください。
声かけが変わると、子どもの顔が変わった
この本を読む前は、子どもへの声かけが「管理」になっていた。「まだやってないの」「もう時間がない」「なんでできないの」——これらはすべて、子どもを外から動かそうとする言葉だ。その結果、子どもは勉強を「やらされること」として認識し、大人の目が届かない場所では絶対にやらない状態になっていた。
本書を読んで「まず何からやる?」という問いかけを試してみると、子どもの反応が違った。「何から」という問いは子どもに考えさせる。自分で答えを出すから、そこに小さな主体性が生まれる。「いま言ってみて」と促すと、子どもが自分の理解度を確認できる瞬間が生まれ、「あ、ちゃんとわかった」という表情が出てくる。声かけはわずかに変えただけなのに、勉強に向き合う子どもの表情が少し変わった。叱らなくても動く余地が生まれたことが、親としても気持ちを楽にした。
「何を言うか」ではなく「どう言うか」が、すべてを変える
この本を読まなければ、「勉強しなさい」という言葉を一生使い続けていただろう。言葉の力は内容だけでなく、タイミングと方向性で全く変わる。
著者の齋藤孝氏は東京大学大学院で教育学を学び、現在は明治大学文学部教授を務める教育学者だ。「声に出して読みたい日本語」の大ヒットで知られる通り、言葉と学びの関係を深く研究してきた人物で、著書は700冊以上、累計1000万部を超える。本書はその経験と知見が、子育てという日常の場面に凝縮された一冊だ。子どもの勉強について悩んでいる人に、ぜひ手に取ってほしい。
齋藤孝著『この三つの言葉で、勉強好きな子どもが育つ』はこちらから読めます。
内容紹介
記憶の定着を促す言葉、やる気を引き出す言葉、解答に至るプロセスを考える力がつく言葉。教育学者が小学生を変える言葉を伝授。
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- この三つの言葉で、勉強好きな子どもが育つ (PHP新書)
- 著者
- 齋藤 孝
- レーベル
- PHP新書
- 出版社
- PHP研究所
- 発売日
- 2016年10月14日
- ISBN
- 9784569831695