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中国人も知らない中国の歴史 (ベスト新書 269)

島崎 晋

ベスト新書 / ベストセラーズ

2010年5月1日発売

楽天ブックスAmazon

新書嫁レビュー

項羽は阿房宮を焼いていなかった——教科書で覚えた中国史が静かに揺らぐ

2026-07-05

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学校で習った中国史は、すべて確かな事実だと思っていた

項羽が秦の壮麗な宮殿を焼き払い、炎は三か月燃え続けた。赤壁では諸葛孔明が東南の風を呼んだ。中国史でそう習い、私はそれを動かしようのない事実として記憶していました。教科書や物語で繰り返し触れた話だからこそ、疑う発想すら持っていなかったのです。けれど、これほど古い時代の出来事をなぜここまで断定できるのだろう、と立ち止まると、自分の知識がどこか足場の怪しいものに思えてくる。その心もとなさをうまく言葉にできずにいました。島崎晋さんの『中国人も知らない中国の歴史』は、その足元を心地よく揺さぶってくれる一冊でした。

島崎晋著『中国人も知らない中国の歴史』はこちらから読めます。

「常識」とされてきた史実が、研究の進展で覆っていく

本書がたどるのは、長く常識とされてきた中国史の通説が、その後の研究によって書き換えられていく過程です。たとえば、項羽が焼いたとされてきた阿房宮について、近年の発掘調査からは、実際に焼かれたのは咸陽宮であり阿房宮ではなかったという見方が示されています。赤壁の戦いで孔明が風を呼ぶ場面も、正史ではなく『三国志演義』という後世の小説の創作であること。本書はそうした例を一つひとつ取り上げ、私たちの「常識」がどこから来たのかを解きほぐしていきます。歴史は固まった石ではなく、新しい発掘や史料の読み直しによって今も書き換わり続けている。その動きの生々しさが伝わってきます。面白いのは、誤った通説の多くが、いいかげんな噂ではなく、名高い史書や読み継がれた物語を土台にしている点です。だからこそ私たちは疑わずに受け入れてきた。事実が物語へと姿を変えていく、その過程そのものが一つの読みどころになっています。夏王朝の実在をめぐる議論など、本書ではさらに多くの通説に踏み込んでいますので、ぜひ手に取って確かめてみてください。

「知っている」と「事実」が別物だと、肌で分かった

この本を読んでから、歴史の知識への向き合い方が変わりました。以前は、習ったことは事実、と二つを同じ箱に入れて疑いませんでした。今は歴史の話題に触れると、これは確かな史料に基づく話なのか、それとも後世に脚色された物語なのか、と一拍おいて考えるようになったのです。知っていることと事実であることは別なのだと腑に落ちると、ニュースや会話で歴史が語られる場面でも、その出どころを確かめたくなる。たとえば歴史ドラマの名場面を観ても、これは史実なのか脚色なのかと一度立ち止まれるようになり、物語をより深く楽しめるようにもなりました。鵜呑みにしないことは、歴史を冷たく突き放すことではなく、むしろ味わいを増やすことなのだと気づかされます。世界の見え方に小さな解像度が一つ加わった感覚があります。

知らないままだと、物語を史実と取り違え続けていた

もしこの本を読まなければ、私は小説の創作を史実と信じたまま、中国史を語り続けていたはずです。著者の島崎晋さんは立教大学文学部史学科で東洋史を学び、歴史を分かりやすく伝える書き手として数多くの著作を手がけてきた人物です。通説と史実のあいだを丁寧に見分けてきた目だからこそ書ける、歴史の意外な裏側がここにあります。よく知っているつもりの分野にこそ、思い込みは静かに根を張っている。それを軽やかに揺さぶってくれるのが、この本の心地よさです。歴史は得意だと思っている方ほど、一度読んでみてほしい一冊です。

島崎晋著『中国人も知らない中国の歴史』はこちらから読めます。

内容紹介

今に伝わる歴史は、捏造されたものだったのか、あるいは伝承者の勘違いだったのか…。虚と実がないまぜになる4000年の歴史。「中国史」にあふれる奇説の真相に、気鋭の歴史作家が挑む。これまで信じられてきた「常識」が覆り、アナタの歴史観が変わる。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
中国人も知らない中国の歴史 (ベスト新書 269)
著者
島崎 晋
レーベル
ベスト新書
出版社
ベストセラーズ
発売日
2010年5月1日
ISBN
4584122695