新書嫁レビュー
「専守防衛」という概念が、幻想として機能してきた理由
2026-06-24
「専守防衛」は日本の安全保障の確固たる基盤だと思っていた
「専守防衛」——日本が攻撃を受けた場合のみ反撃し、先制攻撃はしないという日本の防衛政策の根本原則は、平和憲法と並ぶ日本の安全保障の揺るぎない基盤だと思っていました。「専守防衛だから日本は安全だ」「専守防衛を守ることが平和の維持につながる」という感覚が、政策議論においても日常の認識においても強くありました。
でもこの本を読んで、「専守防衛」という概念が、実は明確に定義されておらず、運用上にも大きな曖昧さを抱えており、それが「幻想」として機能してきたという鋭い指摘と出会いました。
この本が、日本の安全保障の根幹にある重要な概念への見方を根底から変えてくれました。
清谷 信一著『専守防衛——日本を支配する幻想』はこちらから読めます。
「専守防衛」の定義はなぜ曖昧なのか
本書は、日本の防衛政策・安全保障を専門に研究してきた著者が、「専守防衛」という概念の歴史・定義・運用上の問題点を詳しく分析した祥伝社新書の一冊です。「専守防衛」という言葉が持つ意味の曖昧さと、その政治的な機能について鋭く論じています。
著者が指摘するのは、「専守防衛」が公式に定義されたのは戦後長らく経ってからであり、しかもその定義は「専守防衛とは、防衛上の必要から相手国領域に対する反撃は行わない」という概念以上の詳細を持っていないという点です。「どこまでが専守で、どこからが専守を外れるか」について、実は明確な基準が存在しないのです。
「敵基地攻撃能力」の議論が近年高まる中で、それが専守防衛と矛盾するかどうかという問いへの政府の回答は常に曖昧なものです。この曖昧さは政策の失敗ではなく、政治的に機能するために曖昧である必要があったという著者の分析は、安全保障論議の本質を突いています。本書にはさらに、専守防衛概念の歴史的な変容と、それが現代の安全保障環境に適合するかについても詳しく論じられています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「当然の前提」を疑う視点が、議論の質を変えた
この本を読んでから、安全保障に関する政策論議を見るときに「その用語はどう定義されているか」という問いを意識するようになりました。「反撃能力」「敵基地攻撃能力」「防衛力の強化」——これらの言葉が、実際には何を意味しているのかを正確に問うことが、議論の質を上げることにつながります。言葉の曖昧さを受け入れたまま賛否を論じることは、土台のない議論にすぎません。
定義の曖昧な概念が政策の根幹に据えられるとき、議論はそれぞれの人が自分に都合の良い解釈をしながら行われることになります。概念を正確に問い直すことが、安全保障論議を実質的なものにするための第一歩です。
安全保障研究者が問い直す「専守防衛という概念」
日本の防衛政策・安全保障を専門に研究してきた著者が、「専守防衛」という概念の曖昧さと政治的な機能を分析した祥伝社新書の一冊です。安全保障論議の言葉の背後を丁寧に知ることで、議論の質が確かに変わります。
この本を読まなければ、「専守防衛」という言葉を確固たる原則として受け取ったまま、その定義の曖昧さと政治的な機能への問いを持てずにいたと思います。安全保障の用語を正確に使いこなし議論に参加するためには、その言葉が「何を含み、何を含まないか」を明確に知ることが必須です。
清谷 信一著『専守防衛——日本を支配する幻想』はこちらから読めます。
書誌情報
- 書名
- 専守防衛──日本を支配する幻想 (祥伝社新書 195)
- 著者
- 清谷 信一
- レーベル
- 祥伝社新書
- 出版社
- 祥伝社
- 発売日
- 2010年3月1日
- ISBN
- 4396111959