← ブックフィード 新書嫁 新書を、1冊ずつ読み解く PR

核兵器について、本音で話そう(新潮新書)

太田昌克兼原信克高見澤將林

新潮新書 / 新潮社

2022年3月17日発売

楽天ブックスAmazon

新書嫁レビュー

核を「なくす」と「持たない」は、同じ話ではなかった

2026-08-07

書評を読む画面で開く →

核の議論は、賛成か反対かだと思っていた

核兵器の話題が出ると、頭のなかには「廃絶を願う側」と「保有を肯定する側」という二つの陣営しか浮かびませんでした。唯一の被爆国に生まれた者として、廃絶を願う気持ちは当然のものだと思い、それ以上は考えないようにしていたのです。けれどニュースで周辺国の核開発が報じられるたびに、願いと現実のあいだに横たわる溝のようなものを感じて、どこか落ち着かない気分が残っていました。賛成か反対かという枠組みでは、その溝を説明できなかったのです。被爆国の願いを大切にしたい気持ちと、刻々と変わる東アジアの情勢への不安が、自分のなかでうまく折り合わず、考えるほどに宙ぶらりんな心地になっていました。この本を読んで、その二択そのものが現実を捉えきれていなかったと気づかされました。

太田昌克・兼原信克・高見澤將林・番匠幸一郎著『核兵器について、本音で話そう』はこちらから読めます。

「傘」の下にいる、という現実

本書が突きつけるのは、日本がすでに数千発もの核兵器の射程内にあり、中国・北朝鮮・ロシアという核能力を高める国々に囲まれているという地理的な事実です。そのうえで、日本はアメリカの核の「傘」、すなわち拡大抑止のもとに置かれているという構図が、対談形式で具体的に語られます。傘の下にいるからこそ、ただ「持たない」と宣言するだけでは現実は動かない。廃絶を願うことと、いま現実に存在する核の脅威にどう向き合うかは、別々に考えなければならない問いだったのです。本書は日米同盟の歩みや核関連条約の変遷をたどり、朝鮮半島や台湾、さらにはサイバー・宇宙といった新しい領域にまで議論を広げていきます。著者たちが交わす「本音」には、報道のヘッドラインだけでは見えてこない安全保障の内側の論理が詰まっています。願いだけでも、現実主義だけでも語りきれない問いの全体像は、本書で順を追って確かめてみてください。

ニュースの聞こえ方が変わった

この本を読む前の私は、核に関する報道を「怖い話」としてひとくくりに受け取り、聞き終えるとすぐに忘れていました。廃絶という言葉が出てくれば安心し、開発という言葉が出てくれば漠然と不安になる、その繰り返しだったのです。選挙のときに候補者が安全保障を語っても、判断する物差しを持たないまま、なんとなくの印象で受け止めていました。けれど読み終えたいま、同じニュースを聞いても「これは抑止の話なのか、軍縮の話なのか」と自分のなかで仕分けができるようになりました。条約の名前が出てくれば、それがどの議論につながるのかも見当がつくようになったのです。願いと戦略は両立しうるものであって、片方だけを語っていては現実に届かない。そう整理できただけで、これまで漠然と抱えていた落ち着かなさが、ずいぶんと和らいだのです。

知らないままなら、ずっと二択で止まっていた

この本に出会わなければ、私はいつまでも賛成か反対かの二択で思考を止めていたはずです。本書の著者は、核問題を長く取材してきた共同通信の編集委員、元国家安全保障局次長、元軍縮会議日本政府代表部大使、元陸上自衛隊西部方面総監という、それぞれ現場を知る四人です。立場の異なる実務家たちが本音で語り合うからこそ、教科書には載らない議論の手触りが伝わってきます。自分も核の話を二択で済ませてきたかもしれない。そう感じた方は、ぜひ本書でその対話に耳を傾けてみてください。

太田昌克・兼原信克・高見澤將林・番匠幸一郎著『核兵器について、本音で話そう』はこちらから読めます。

内容紹介

日本を射程に収める核ミサイルは中朝露計数千発! 核に覆われた東アジアの現実に即した国家戦略を構想せよ! 内閣、自衛隊、メディアなどで核政策に深くコミットしてきた4人の専門家による「タブーなき論議」。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
核兵器について、本音で話そう(新潮新書)
著者
太田昌克 / 兼原信克 / 高見澤將林
レーベル
新潮新書
出版社
新潮社
発売日
2022年3月17日
ISBN
9784106109454