新書嫁レビュー
語彙を増やすほど英語は上手くなる、という方向性が完全に逆だった
2026-05-07
「難しい単語を覚えるほど英語力が上がる」とずっと信じていた
英語学習とは語彙を増やすことだと思っていました。難しい単語を知っているほど表現が豊かになり、読解力も上がり、ネイティブに近づける——そういう方向性で英語に向き合ってきました。だから単語帳を何冊も買い、難しい語を暗記し、知らない単語が出てくるたびに辞書を引いてきました。
でも、難しい単語を増やしても、なぜかネイティブの話す「気軽な英語」にはついていけませんでした。日常会話では聞き慣れない難単語ではなく、ごく短い単語が次々と出てくる。そのシンプルな言葉の組み合わせが何を意味しているのか、咄嗟につかめないことが続いていました。
マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』を読んで、その謎の正体がわかりました。
マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』はこちらから読めます。
英語の核心は難単語ではなく、シンプルな動詞と前置詞の組み合わせだった
著者が本書で示すのは、英語の表現力の核心がrun・come・walk・talk・sit・be・go・put・see・workというシンプルなアングロサクソン系動詞にあるという視点です。これらの動詞をさまざまな前置詞と組み合わせることで、英語はあらゆるニュアンスを表現できます。go outとgo off、put up withとput down——これらは辞書で一語ずつ調べても意味が湧いてこない。前置詞との結びつきのパターンを体感することではじめて理解できます。
難単語はラテン語系やフランス語系の借用語が多く、フォーマルな場では力を発揮しますが、日常の会話には根っこのアングロサクソン語が流れています。その流れに乗れないと、いくら難単語を知っていても、日常英語の感触がいつまでもつかめない。著者はアメリカ映画の台詞や文学作品を引きながら、この「感触」を丁寧に解説します。本書にはさらに、英語の表現が文化的背景とどう結びついているかを探る章も続きます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。
映画を英語で見るときの「聞こえ方」が変わった
読む前と後で、英語を聞くときの注意の向け方が変わりました。以前は知らない難単語に引っかかっていました。でも今は、短くてシンプルな動詞と前置詞の組み合わせに耳を澄ませるようになりました。
具体的には、映画を英語字幕で見るとき、ネイティブのキャラクターが話す「come on」「go ahead」「pull through」「work out」などの表現が、どんな場面でどんなニュアンスで使われているかを意識するようになりました。辞書の定義ではなく、使われた場面の記憶として積み重ねる——その積み重ねが、日常英語の感触を育てていく。難単語を増やすことよりも、シンプルな言葉の「使われ方」を観察することの方が、英語の土台を作ると実感できるようになりました。
英語と日本語の両方を深く知る著者が、正直に語る
マーク・ピーターセンは明治大学政治経済学部教授として長年教鞭をとったアメリカ出身の英米文学研究者です。日本語にも堪能な著者は、外側から日本人の英語を観察するだけでなく、日本語学習者として自らも苦労した経験を持ちます。本書には著者自身の「日本語って難しい」という自虐も散見され、言語の壁を越える苦労が共感を持って語られます。
この本を読まなければ、難単語を増やし続けながらも日常英語のコアの部分を取りこぼし続けていたでしょう。
マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』はこちらから読めます。
内容紹介
1 小指に結んだ赤い糸
1 スペインの雨──定冠詞the
2 七人の侍──可算名詞と不可算名詞
2 ここはカンザスじゃないみたいよ
1 あの人を忘れたい──単数形と複数形
2 ペンは剣よりも強し──名詞の一般用法
3 花椿と赤いねこ車
1 橋の下よりほととぎす──前置詞
2 大和言葉のやわらかさ──副詞
4 ぼつぼつ寝ませんか
1 金が物を言う──現在形
2 遅れることになったら電話する──未来形
5 心の揺れから生まれる言葉
1 耳を貸そうとしない──知覚動詞
2 窓ぎわのテーブルにしてもらう──使役動詞
6 ことばの情景
1 川端康成『山の音』
2 J. D. サリンジャー:A Perfect Day for Bananafish
3 日本人の英語
あ と が き
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 続 日本人の英語 (岩波新書 新赤版 139)
- 著者
- マーク ピーターセン / Mark Petersen
- レーベル
- 岩波新書 新赤版
- 出版社
- 岩波書店
- 発売日
- 1990年1月1日
- ISBN
- 4004301394