新書嫁レビュー
「男らしさ・女らしさ」は生まれつきではなく、学校で教えられていた
2026-08-16
ジェンダーの違いは生物学的なものだと思っていた
「男の子はこういうもの」「女の子はああいうもの」という認識は、生物学的な差異に基づく自然なものだという感覚がありました。社会や学校が「らしさ」を押しつけているとしても、それは元々の生物学的な傾向を強化しているだけであって、根本的に作られているわけではないという思い込みがあったのです。
でもこの本を読んで、学校・家庭・メディアという日常の場が、子どもに「らしさ」を刷り込む具体的な仕組みを持っていることがわかりました。生物学的な差異以上に、社会的な圧力が「らしさ」の大部分を形成しているという事実が、データと事例から浮かび上がってきます。
この本が、ジェンダーと教育の関係への見方を根本から大きく変えてくれました。
中野円佳著『教育にひそむジェンダー——学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる』はこちらから読めます。
「らしさ」は授業の内容だけでなく、空気の中で教えられる
本書は、教育社会学・ジェンダー研究を専門とする著者が、学校・家庭・メディアが子どもにジェンダー規範を内面化させる仕組みを分析したちくま新書の一冊です。意識的な教育だけでなく、無意識の環境が「らしさ」を形成する過程を詳しく解説しています。
著者が示すのは、「隠れたカリキュラム」という概念です。学校教育において、正式な教科書の内容だけでなく、教師の語りかけ方・席の並べ方・役割の割り当て方・部活動の扱われ方などが、子どもに「男子はこう」「女子はこう」という暗黙の規範を伝えているということです。
例えば、授業中に「男の子だから頑張れ」という励まし方をする教師は、その瞬間に「男らしさ」の規範を伝えています。「女の子なんだから丁寧に」という言葉も同様です。こういった言葉が繰り返されることで、子どもは「自分はそういう存在だ」という自己認識を内面化していきます。大人が意識していない一言が、子どもの自己概念に長期的な影響を与えているという事実は、教育に関わるすべての大人が知っておくべき内容です。教室での一瞬の言葉が、その子どもの人生を通じて影響し続けるということです。本書にはさらに、家庭・メディアでの「らしさ」の強化メカニズムについても詳しく論じられています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「自然にそうなった」ではなく「そうなるよう環境が作られていた」に気づいた
この本を読んでから、日常生活の中での「らしさ」に関わるやり取りを注意深く観察するようになりました。
「自分がそう感じるのは生まれつきだ」と思っていたことの多くが、環境から学んだものである可能性を意識することで、「このプレッシャーは必要なのか」という問いを立てられるようになります。自分を縛っているものの正体を知ることが、より自由な選択への第一歩になります。
教育社会学者が明かす「らしさの製造工場」
教育社会学・ジェンダー研究を専門とする著者が、学校・家庭・メディアが子どもにジェンダー規範を内面化させる仕組みを分析したちくま新書の一冊です。「自然にそうなった」という感覚の背後にある社会的な構造が見えてきます。
この本を読まなければ、「らしさ」を生物学的な必然として受け取ったまま、それが社会的に巧みに作られ維持されているという現実を知らずにいたと思います。
中野円佳著『教育にひそむジェンダー——学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる』はこちらから読めます。
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内容紹介
大人は何ができるのか?
「与えられる性差」の悪影響と、起きている前向きな変化。
理想(多様性奨励)と現実(根強いバイアス)のギャップが大きすぎる!
学校・家庭・メディアで与えられる「らしさ」の何が問題か。
赤ちゃんから幼児、小学生、中高生、大学生まで、育児や教育を通して子どもたちに与えられるジェンダーイメージについて、教育社会学の知見や著者自身の子育て経験を踏まえて検証・考察する。
母性愛神話、マイクロアグレッション、性教育、別学か共学か、性的同意、女性の透明化・商品化……語りにくいが大事な問いに正面から挑む。
はじめに
第1章 赤ちゃんから刷り込まれるジェンダー -- おもちゃの好みは遺伝か環境か?
赤ちゃんのときから刷り込まれるバイアス/3歳ごろからの性自認と幼稚園の役割/性自認と遊びの中の役割/ジェンダー規範の「内面化」/なぜバイアスを持つのか/バイアスを持つことは悪いことか?/根拠がなくても実現してしまう/変わるバービー人形/変えていくための動き/幼少期に覚える家庭での役割/つくられた「母性愛」/家庭での役割/高度な家事をやめるのも手
第2章 小学生が闘うジェンダー -- 理想と現実のギャップ
シンデレラ願望/変わるプリンセス像/かわいくて、強くてもいい/マイクロアグレッションと『リトル・マーメイド』の実写版/娘に読ませたいプリンセスもの/子ども向け番組の偏り/性的な描かれ方/公的な場で見えてしまうことが問題/ゾーニングという解決策/大人の「期待」を読み取る子どもたち/ピンクのランドセルを選ぶ男の子/青い目、茶色い目/性犯罪防止に何ができるか/日本版DBS導入へ/性教育
第3章 中高生の直面するジェンダー -- 思春期特有のジレンマ
「サッカー部」にいる女の子はマネージャー?/男女の体格差/ジェンダー・フリー/「隠れたカリキュラム」の是正/なお残る「役割」のジェンダー/「校長」は男性?/ディスカレッジされる女の子/女子の理系選択/女子校・男子校の意義はあるか/別学のメリット/多様性は居心地が良くない/共学の定員は1対1である必要があるか/性教育は共学でも不十分/性的同意/「教えてほしかった」
第4章 大学のゆがんだジェンダー -- 差別とセクハラの温床なのか?
医学部女性減点問題の衝撃/女子枠は逆差別か/女子枠はスティグマになる?/他のマイノリティ性への配慮/東大女性2割の原因/女性への“言葉の逆風?/親の教育期待差/娘に投資しない/実家から離れない/浪人を避ける/女性はリスクを回避する?/成功不安?/差異か平等か/なぜ大学や企業に多様性が必要なのか/社会の設計を誰がするのか/女性の透明化・商品化がはびこるキャンパス/偏差値の高さと女性への目線/DEIについての教養/声をあげる大学生たち
おわりに
参照文献
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 教育にひそむジェンダー ――学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる (ちくま新書)
- 著者
- 中野円佳
- レーベル
- ちくま新書
- 出版社
- 筑摩書房
- 発売日
- 2024年12月9日
- ISBN
- 9784480076632