新書嫁レビュー
「円は安全」——その確信が、資産を静かに溶かしていた
2026-08-04
日本円は世界で最も安全な通貨だと思っていた
預金通帳の残高を見るたびに「これで安心だ」と思っていました。円は安定していて、日本の銀行は安全で、コツコツ貯めることが最善の資産管理だという感覚は、長年の生活習慣の中に深く染みついていました。外貨や株式投資は「リスクを取る行為」であり、堅実に生きるなら触れないほうがいいという意識もありました。でも実は、その「安全だ」という感覚こそが、長期的には最大のリスクだったのです。
円を持ち続けることが「安全」だという前提を持ったまま、この先も生き続けることはできます。でも、その前提が揺らいだ時、備えのない人には選択肢がありません。藤巻健史著『藤巻健史の資産運用大全』はこちらから読めます。
国債を「爆買い」する日銀が意味すること
日本銀行は長年にわたり、国債を大量に購入する金融政策を続けてきました。本書の著者・藤巻健史は、この状況を「財政悪化のごまかし」と断言します。世界最悪水準の財政赤字を抱えながら日銀がその国債を引き受け続けることは、いつ「日本売り」——株・債券・円の同時暴落——が起きてもおかしくない状態を維持しているに等しいというのです。
藤巻は1985年にモルガン銀行(現JPモルガン)に転職し、東京支店長にまで上り詰めた人物です。JPモルガン会長から「伝説のディーラー」と称され、東京市場屈指の為替・債券ディーラーとして実績を積んだ彼の言葉には、机上の理論ではなく市場の最前線で培われた肌感覚が宿っています。
本書の第1部では円と国債のリスクが丁寧に解説され、第2部ではドル資産、先物取引、オプションなど具体的な運用手段が一から説明されています。本書にはさらに、個人が実践できる具体的なヘッジ手段についても詳しい解説があります。ぜひ本書で確かめてみてください。
「もっと早く知っていれば」という悔しさ
この本を読む前の私は、資産運用という言葉を「お金持ちがすること」と思っていました。自分の給与をそのまま円建て預金に入れておくことが「普通の選択」であり、それ以上のことを考えることは生活者として必要ないという思い込みがありました。
読んだ後、その認識は完全に変わりました。円安が進むということは、円で持っている資産の実質的な価値が世界水準で見ると下がっていくことを意味します。実際に2022年以降の急激な円安局面で、ドル建て資産を持っていた人と持っていなかった人の間には、何百万円もの差が生まれました。知識を持っていなかったことで被った機会損失を、この本は具体的な数字と構造で理解させてくれます。
本書の第2部では、ドル預金・外国株式・先物・オプションといった具体的な運用手段が一つひとつ丁寧に解説されています。難解な金融商品の仕組みを、専門用語に頼らずに説明する著者の力量は、30年以上の市場経験から来ているものです。「円以外の資産を持つ」という行為が投機ではなく、むしろ円一辺倒こそがリスクだという認識の転換を、具体的な手段と一緒に示してくれる点が、この本の価値です。知識がなければ何も始められないし、知識があれば選択肢が生まれます。
「貯金が減っているわけではない」という感覚のまま生きていることの危うさを、初めて本当の意味で理解しました。
市場の最前線を知る者の言葉
一橋大学商学部を卒業後、モルガン銀行で為替・債券ディーラーとして頂点を極め、後にジョージ・ソロスのアドバイザーを務め、一橋大学経済学部でデリバティブを13年間教えてきた藤巻健史の視点は、学者とも評論家とも異なります。リアルな市場の中で実際に何兆円もの取引に関わってきた人間だけが語れる内容がこの本には詰まっています。
円を持ち続けることが「安全」だという前提を持ったまま、この先も生き続けることはできます。でも、その前提が揺らいだ時、備えのない人には選択肢がありません。藤巻健史著『藤巻健史の資産運用大全』はこちらから読めます。
内容紹介
日本の財政赤字は巨額に膨らみ、世界でも最悪の状態にある。日銀が国債や株式を爆買いすることでごまかしているが、いつ「日本売り(株・債券・円の暴落)」が起きてもおかしくない。こんなときは一般的な投資法は通用せず、「日本売り」に備えた資産運用法こそが有効である。そこで本書では基本的な金融マーケットの知識と仕組みを解説し、個人が簡単に活用できる利益のあげ方を指南。景気に関係なく、稼げる方法が身につく!
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 藤巻健史の資産運用大全 (幻冬舎新書)
- 著者
- 藤巻健史
- レーベル
- 幻冬舎新書
- 出版社
- 幻冬舎
- 発売日
- 2021年1月27日
- ISBN
- 9784344986121