← ブックフィード 新書嫁 新書を、1冊ずつ読み解く PR

搾取される研究者たち 産学共同研究の失敗学 (光文社新書)

山田剛志

光文社新書 / 光文社

2020年3月18日発売

楽天ブックスAmazon

新書嫁レビュー

産学共同研究の「失敗」は、研究者個人の問題ではなく構造の問題だった

2026-06-24

書評を読む画面で開く →

産学共同研究は大学と企業の「Win-Win」の関係だと思っていた

大学の研究者と企業が共同研究を行う産学連携は、大学側は資金と実用化の機会を得、企業側は最先端の知見と人材を活用できる——双方にとってメリットがある理想的な仕組みだと思っていました。ニュースで「産学連携で革新的な技術が生まれた」という話を聞くことも多く、制度として機能しているというイメージがありました。

でもこの本を読んで、産学共同研究の現場では研究者が搾取される状況が構造的に生まれており、その失敗の多くは研究者個人の問題ではなく、制度設計の問題であるという現実が見えてきました。

この本が、産学共同研究と研究者の働き方への見方を変えてくれました。

山田剛志著『搾取される研究者たち 産学共同研究の失敗学』はこちらから読めます。

「産学連携」の美名の下で起きていたこと

本書は、産学共同研究の実態を研究者の立場から調査・分析した光文社新書の一冊です。産学連携が推進される中で、大学研究者がどのような困難に直面しているかをデータと事例をもとに解説しています。

著者が指摘する問題の核心は、産学共同研究において研究者が「知的労働力の安価な提供者」として機能させられる構造にあります。企業は産学共同研究を「外部の研究機関への委託」として活用することで、コストを抑えながら研究成果を得ようとします。しかし大学側の研究者には、外部の研究機関のような明確な報酬構造がなく、研究成果の権利関係も曖昧なまま研究を進めることが多いのです。

また、産学連携の「実績」を作ることへのプレッシャーが大学側に生まれることで、研究者が「産業に役立てる」という短期的な目標に引きずられ、基礎研究や長期的な知の探求が後退するというリスクも指摘されます。画期的なイノベーションの多くは、すぐに役立つことを目的としない基礎研究から生まれてきました。インターネットの基礎となった通信技術、医学の画期的な発見——これらは短期的な「役立ち」の文脈とは切り離された基礎研究が起点になっています。産学連携の推進が、その基礎研究の土台を侵食するとすれば、長期的には社会全体の損失につながるという著者の懸念は重要です。本書にはさらに、研究者が自分の権利と研究の独立性を守るための具体的な方法についても詳しく語られています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「構造の問題」を見る目が、議論の見え方を変えた

この本を読んでから、「個人の問題」として語られる話の背後に「構造の問題」がないかという視点を持つようになりました。

研究者が搾取される状況は、各研究者が意思が弱いからではなく、そのような状況が生まれやすい制度的な仕組みがあるからです。問題の所在を正確に見ることが、適切な解決策を考える出発点になります。個人を責める前に構造を疑うというこの姿勢は、研究者問題だけでなく、あらゆる社会問題への向き合い方に応用できる視点です。

研究者の立場から見た「産学連携の失敗構造」

産学共同研究の実態を研究者の視点から分析した光文社新書の一冊です。制度として語られる産学連携の現実の課題を、データと事例をもとに明快に解説しています。

この本を読まなければ、産学連携を「双方にメリットがある理想的な仕組み」として見たまま、研究者が構造的に搾取されやすい現実を知らずにいたと思います。

山田剛志著『搾取される研究者たち 産学共同研究の失敗学』はこちらから読めます。

内容紹介

企業からの無理難題、研究者を守らない大学、心を病む助教、院生、学生…著者が解決に奔走した事件をベースに、搾取の実態を白日の下に!

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
搾取される研究者たち 産学共同研究の失敗学 (光文社新書)
著者
山田剛志
レーベル
光文社新書
出版社
光文社
発売日
2020年3月18日
ISBN
4334044654