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法とは何か 新版 (岩波新書)

渡辺 洋三

岩波新書 / 岩波書店

1998年2月20日発売

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新書嫁レビュー

「法律は権力者のルールで市民には縁遠い」という思い込みが、法の精神が正義であることを見えなくしていた

2026-05-12

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「法律とは難しい専門知識であり、権力者が市民を縛るためのルールだ」とずっと思っていた

法律は司法試験を受けるような専門家が扱うものであり、一般市民が深く関わる必要はないという感覚がありました。六法全書の分厚さを見れば、「これは素人が理解できるものではない」という先入観が生まれるのも自然なことです。また、「法律は守るもの」「法律に違反しなければいい」という受け身の意識があり、法律が自分の側に立つ道具になり得るとは思っていませんでした。

でも、「なぜこのルールが正しいのか」「この法律は誰のために存在するのか」という問いが、日常のいたるところで顔を出していました。不当な扱いを受けたとき、社会的な不公正を目にしたとき、「法的にはどうなのか」と問いたくなりながらも、その問いを深める言葉を持っていませんでした。

渡辺洋三著『法とは何か 新版』を読んで、その問いを受け取る準備ができました。

渡辺洋三著『法とは何か 新版』はこちらから読めます。

法の精神は「正義」であり、法は市民が権利を守るための道具だった

著者が本書の冒頭で語る言葉は明快です。「法の精神とは一言で言えば、正義である。法をまなぶ者は、正義を求め、正義を実現する精神をもたねばならない」。これは法律家だけに向けた言葉ではなく、法と向き合う市民すべてへの言葉です。

本書が描くのは、法が歴史的にどのように変動してきたか、そして現代日本の法システムがいかに「国民の権利」を守るための制度として設計されているかという全体像です。憲法が保障する人権の意味、国家と個人の関係、さらに国際法の視野まで——法を「上から押し付けられるルール」ではなく「正義を実現するための言語」として再定義していきます。特に印象的なのは、法の歴史的変動を追う章で、法が常に支配者と市民の力関係の中で作られ、変えられてきたという視点です。法は固定されたものではなく、市民が関わることで変えられるものだという認識が生まれます。本書にはさらに、日本社会の具体的な法的課題と、法を学ぶことの意味が詳しく語られています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「法律は自分の話ではない」という感覚が根底から変わった

読む前と後で、日常の出来事への向き合い方が変わりました。以前は「法律に触れなければいい」という回避の姿勢でいました。でも今は、「この状況で正義はどこにあるのか」「この決まりは誰のために存在するのか」と問うようになりました。

具体的には、職場でのルールや社会制度の話題に接するとき、「それは正当なのか」という問いを持つようになりました。不合理な慣行を「仕方ない」として受け入れていた部分が、「これは問い直せる」という感覚に変わりました。法律を知らなくても、「正義」という軸を持つことで、物事への判断が変わります。

また、ニュースで法律や権利に関わる話題を見るとき、「誰の利益のためにこの法律があるのか」という問いを持つようになりました。以前は法律の話は専門家が語るものとして傍観していましたが、今は自分の問いとして受け取るようになりました。法は専門家だけのものではなく、市民が「正義とは何か」を問い続けることで意味を持つ——その感覚が、日常の見え方を変えました。

東京大学社会科学研究所の名誉教授が、法の本質を市民の言葉で語り直した

渡辺洋三(1921〜2006年)は東京大学社会科学研究所教授・所長を歴任した法社会学・民法学の第一人者です。学徒出陣でビルマ・タイに派遣された戦争体験を持ち、復員後に法学を修め、「法は正義のための道具である」という信念を生涯持ち続けました。その経験が、法を権力者のものではなく市民のものとして描く本書の視点の根底にあります。

この本を読まなければ、法律を「専門家のルール」として傍観したまま、法の精神が正義の実現にあるという本質と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

渡辺洋三著『法とは何か 新版』はこちらから読めます。

内容紹介

序章 国家の法と社会の法

1 法とは何か
 1 法の精神
 2 法と民主主義
 3 法とルール
 4 法と道徳
 5 法と手続

2 法の歴史的変動──欧米型と日本型
 1 欧米型
  (一)市民社会と市民法の原点
  (二)資本主義社会と法
   (a)市民の法と資本の法
   (b)福祉国家と現代法
   (c)ポスト福祉国家
 2 日本型
  (一)戦前の法と社会
   (a)明治法体制
   (b)大正・昭和期
  (二)戦後の法と社会
   (a)戦後改革とその限界
   (b)戦後市民社会と企業社会
   (c)市民の法の復権と擬似福祉国家
   (d)ポスト福祉国家の時代

3 現代日本の法システム
 1 近代法と現代法
 2 家族と法
  (一)「家族制度」の問題
  (二)家族と国家
 3 土地と法
  (一)土地商品化思想からの脱却
  (二)土地法制度の論点
  (三)現行法の矛盾と改革
 4 不法行為と法
  (一)過失責任と無過失責任
  (二)企業責任
  (三)国家責任
 5 消費者の権利と企業
  (一)日本企業と独占禁止法
  (二)消費者被害と消費者基本権

4 国家統治の法と国民の権利
 1 現代国家と行政権
 2 司法国家と行政国家
 3 日本の行政法の特質
 4 地方自治と地方分権

5 国家と人権
 1 労働者の人権
  (一)集団的権利
  (二)個別的労使関係
 2 社会保障・福祉の権利
 3 子どもの人権

6 法の解釈と裁判
 1 法の解釈とは
 2 裁判

7 国際法と国内法のはざまで
 1 国際的軍事秩序
  (一)日本と国連
  (二)地雷と核兵器
 2 国際経済と人権
  (一)国際経済
  (二)国連人権の展開

あとがき

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
法とは何か 新版 (岩波新書)
著者
渡辺 洋三
レーベル
岩波新書
出版社
岩波書店
発売日
1998年2月20日
ISBN
4004305446