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ユダヤ人 (岩波新書)

J‐P. サルトルJean‐Paul Sartre

岩波新書 / 岩波書店

1956年1月16日発売

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新書嫁レビュー

ユダヤ人を嫌うのは、ユダヤ人に問題があるからだと思っていた

2026-04-21

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差別には「何らかの理由」があるはずだと思っていた

歴史の中でユダヤ人がこれほど激しく迫害され続けてきたのには、何か理由があるのだろう——長いあいだ、そんな考えが頭の隅にありました。これほど根強い偏見が世界中に存在するなら、その対象となる側に何か特別な要因があるのではないか。差別は間違っているとわかっていながら、「でも理由があるはず」という考えをどこかで手放せなかったのです。その考えを根本から覆したのが、「存在と無」のサルトルがユダヤ人問題について書いた一冊でした。

J-P.サルトル著(安堂信也訳)『ユダヤ人』はこちらから読めます。

「反ユダヤ主義者が、ユダヤ人を作るのだ」とサルトルは書いた

サルトルがこの本で示す命題は鮮烈です。「ユダヤ人とは、他の人々がユダヤ人と考えている人間である」——つまり、問題はユダヤ人の側にあるのではなく、反ユダヤ主義者の側にある、というのです。

1947年に書かれた本書でサルトルは、反ユダヤ主義を「思想」や「意見」ではなく「情念」として分析します。反ユダヤ主義者は、ユダヤ人について何かを「知って」嫌いになったのではない。論理より先に嫌悪があり、その後から理由を見つけているのだと。だから「ユダヤ人はこういう特徴がある」という反論をいくらしても意味がない。その特徴がなければ別の特徴を探してくるだけです。偏見の根は「事実」の側にはない——この分析は、あらゆる差別を考えるときの根本的な視座を与えます。本書はさらに、民主主義とユダヤ人の関係、そして「ユダヤ人問題はわれわれ全員の問題だ」という主張へと展開します。ぜひ本書で確かめてみてください。

「差別には理由がある」という考えがどれほど危険かわかった

この本を読んでから、差別についての議論を聞くときの感覚が変わりました。「あの集団が嫌われるのには理由があるのでは」という問いが立てられるとき、それ自体がすでに差別の構造に組み込まれているとわかるようになりました。

差別の「理由」を探すことは、被差別集団に問題の原因を帰属させる行為です。サルトルが暴いたのは、反ユダヤ主義者は自分の世界の不満・不安・敗北感を「ユダヤ人のせい」にすることで、自分の責任から逃げているという構造でした。これはユダヤ人だけの話ではありません。移民、外国人、マイノリティに向けられる敵意は、多くの場合同じ心理的メカニズムから来ています。「なぜ嫌われるのか」ではなく「なぜ嫌うのか」を問うことが、差別を理解する唯一の入口だということを、このフランスの哲学者が1947年に書き切っていたのです。

実存主義の巨人が、ホロコーストの翌年に書いた告発

ジャン・ポール・サルトル(1905〜1980年)はパリ生まれ。エコール・ノルマル・シュペリウール卒業後、哲学者・作家・劇作家として活動し、「実存主義とは何か」(1945年)で20世紀最大の哲学的センセーションを起こしました。ノーベル文学賞を自ら辞退したことでも知られます。本書の原著「ユダヤ人問題についての考察」は1947年、第二次大戦終結の2年後に発表されました。ナチスによるホロコーストが明らかになった直後に、その構造を哲学的に解明しようとした緊迫した仕事です。訳者の安堂信也は日本のサルトル研究の中心人物でした。

この本を読まなければ、「差別には理由があるはず」という考えを手放せないまま、差別の仕組みを誤解し続けていたはずです。問題はユダヤ人の側にあるのではなく、差別する側にある——その逆転は、今日のあらゆる偏見問題を考えるための出発点です。

J-P.サルトル著(安堂信也訳)『ユダヤ人』、購入はこちらから。

内容紹介

1 なぜユダヤ人を嫌うのか
 ユダヤ人を嫌うのは自由だろうか──嫌う理由があるのだろうか──ユダヤ人を嫌うのはどういう人々か──凡庸、因習、事大主義──原始的暴力団──責任の無視──悪魔にされるユダヤ人──善玉、悪玉、聖戦──サディズム──殺人犯──人間の条件への恐怖

2 ユダヤ人と「民主主義」
 抽象的民主主義の弱味──抽象的人間と具体的ユダヤ人──ユダヤ人の自覚を恐れる「民主主義者」

3 ユダヤ人とはなにか
 人間の違いは、その状況と選択による──ユダヤ人の状況、人種、宗教、国家、歴史──状況の一致による共同体──同化を拒絶されたユダヤ人──常に脅かされているユダヤ人──ユダヤ人というレッテル──めくらにされたユダヤ人──歴史を取り上げられたユダヤ人──国賊でない証拠を求められて──不安な生活──正統でないユダヤ人の逃げ道──ユダヤ人の反ユダヤ主義──マゾヒズム、理性主義、批判精神──肉体観──「要領の悪さ」──金欲と功利主義──ユダヤ人の感受性と不安観──正統なユダヤ人──正統になっても問題は残る

4 ユダヤ人問題はわれわれの問題だ
 真の敵は反ユダヤ主義者──われわれの目標は具体的な自由主義──反ユダヤ主義の絶滅──反ユダヤ主義は階級闘争の神秘的・ブルジョワ的あらわれ──社会主義革命こそ必要──それまではどうすべきか──反ユダヤ主義に反抗する連盟を──反ユダヤ主義と国家社会主義──ユダヤ人の自由とわれわれの自由

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
ユダヤ人 (岩波新書)
著者
J‐P. サルトル / Jean‐Paul Sartre
レーベル
岩波新書
出版社
岩波書店
発売日
1956年1月16日
ISBN
4004110793