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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

ユダヤ人を嫌うのは、ユダヤ人に問題があるからだと思っていた

差別には「何らかの理由」があるはずだと思っていた

歴史の中でユダヤ人がこれほど激しく迫害され続けてきたのには、何か理由があるのだろう——長いあいだ、そんな考えが頭の隅にありました。これほど根強い偏見が世界中に存在するなら、その対象となる側に何か特別な要因があるのではないか。差別は間違っているとわかっていながら、「でも理由があるはず」という考えをどこかで手放せなかったのです。その考えを根本から覆したのが、「存在と無」のサルトルがユダヤ人問題について書いた一冊でした。

「反ユダヤ主義者が、ユダヤ人を作るのだ」とサルトルは書いた

サルトルがこの本で示す命題は鮮烈です。「ユダヤ人とは、他の人々がユダヤ人と考えている人間である」——つまり、問題はユダヤ人の側にあるのではなく、反ユダヤ主義者の側にある、というのです。

1947年に書かれた本書でサルトルは、反ユダヤ主義を「思想」や「意見」ではなく「情念」として分析します。反ユダヤ主義者は、ユダヤ人について何かを「知って」嫌いになったのではない。論理より先に嫌悪があり、その後から理由を見つけているのだと。だから「ユダヤ人はこういう特徴がある」という反論をいくらしても意味がない。その特徴がなければ別の特徴を探してくるだけです。偏見の根は「事実」の側にはない——この分析は、あらゆる差別を考えるときの根本的な視座を与えます。本書はさらに、民主主義とユダヤ人の関係、そして「ユダヤ人問題はわれわれ全員の問題だ」という主張へと展開します。ぜひ本書で確かめてみてください。

「差別には理由がある」という考えがどれほど危険かわかった

この本を読んでから、差別についての議論を聞くときの感覚が変わりました。「あの集団が嫌われるのには理由があるのでは」という問いが立てられるとき、それ自体がすでに差別の構造に組み込まれているとわかるようになりました。

差別の「理由」を探すことは、被差別集団に問題の原因を帰属させる行為です。サルトルが暴いたのは、反ユダヤ主義者は自分の世界の不満・不安・敗北感を「ユダヤ人のせい」にすることで、自分の責任から逃げているという構造でした。これはユダヤ人だけの話ではありません。移民、外国人、マイノリティに向けられる敵意は、多くの場合同じ心理的メカニズムから来ています。「なぜ嫌われるのか」ではなく「なぜ嫌うのか」を問うことが、差別を理解する唯一の入口だということを、このフランスの哲学者が1947年に書き切っていたのです。

実存主義の巨人が、ホロコーストの翌年に書いた告発

ジャン・ポール・サルトル(1905〜1980年)はパリ生まれ。エコール・ノルマル・シュペリウール卒業後、哲学者・作家・劇作家として活動し、「実存主義とは何か」(1945年)で20世紀最大の哲学的センセーションを起こしました。ノーベル文学賞を自ら辞退したことでも知られます。本書の原著「ユダヤ人問題についての考察」は1947年、第二次大戦終結の2年後に発表されました。ナチスによるホロコーストが明らかになった直後に、その構造を哲学的に解明しようとした緊迫した仕事です。訳者の安堂信也は日本のサルトル研究の中心人物でした。

この本を読まなければ、「差別には理由があるはず」という考えを手放せないまま、差別の仕組みを誤解し続けていたはずです。問題はユダヤ人の側にあるのではなく、差別する側にある——その逆転は、今日のあらゆる偏見問題を考えるための出発点です。

J-P.サルトル著(安堂信也訳)『ユダヤ人』、購入はこちらから。

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ユダヤ人 (岩波新書) J‐P. サルトル, Jean‐Paul Sartre, / 岩波新書

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