新書嫁レビュー
スマホの中に「魑魅魍魎の世界」が眠っている、という話
2026-06-08
レアメタルなんて、自分には縁のない金属だと思っていた
タンタル、ニオブ、インジウム。こうした金属の名前を聞いても、どこか遠い工業の話だと感じて、自分の生活とは無関係だと思っていました。テレビや携帯電話、カメラの中で何かが働いているのは知っていても、それが地球の裏側の鉱山と、命がけの交渉とつながっているとは想像もしていませんでした。けれど、その認識のまま暮らしていると、ニュースで「資源争奪」という言葉を見るたびに、なぜか心のどこかがざらつく感覚がありました。その正体が分からないまま、私はずっと過ごしていたのです。中村繁夫さんの『レアメタル超入門』を読んで、その霧が一気に晴れました。
中村繁夫著『レアメタル超入門』はこちらから読めます。
二十世紀がガソリンの時代なら、二十一世紀は水とレアメタルの時代
本書が突きつけてくるのは、私たちが当たり前に使っているスマートフォンの一台一台に、世界中から集められた稀少な金属が詰まっているという事実です。埋蔵量が少なく、取り出すこと自体が難しい四十一種類ものレアメタルをめぐって、各国が激しい争奪戦を繰り広げている。著者はそれを「魑魅魍魎の世界」と表現します。そして二十世紀がガソリンを奪い合う時代だったとすれば、二十一世紀は水とレアメタルを奪い合う時代になる、と説きます。日本は世界有数のレアメタル消費大国であり、同時に輸入大国でもある。この危うい立ち位置への緊急提言が、本書の核心です。たとえば一台の携帯電話に使われる金属は、けっして一つや二つではありません。電池に、基板に、画面に、それぞれ別の稀少金属が役割を担っていて、そのどれか一つでも供給が止まれば製品そのものが作れなくなる。私たちが何気なく握っているこの板状の機械は、世界中の鉱脈を束ねた小さな集積物なのだと、本書を読んで初めて腑に落ちました。資源を持たない国が、どうやってこの争奪戦を生き延びるのか。その具体的な戦略や、現場で繰り広げられる駆け引きについては、本書でさらに踏み込んだ話が展開されます。ぜひ本書で確かめてみてください。
「便利さ」の裏側が見えると、世界の解像度が変わる
この本を読んでから、私はスマートフォンを手にするたびに少し違う感覚を抱くようになりました。以前は、画面に映る情報だけを見て、その金属の塊がどこから来たのかなど考えたこともありませんでした。けれど今は、この一台の中に世界中の鉱山と、それを掘る人々と、命がけで交渉する商社の姿が透けて見えます。家電量販店で新製品を眺めるとき、ニュースで貿易摩擦の話題が流れるとき、これまでただ通り過ぎていた光景が、急に立体的に意味を持って迫ってくる。便利さの裏側にある巨大な仕組みを知ると、日常そのものの見え方が変わるのだと実感しました。
知らないままだったら、ずっと地に足がつかなかった
もしこの本に出会わなければ、私は資源というものを、自分とは無関係な遠い話のまま放置していたはずです。著者の中村繁夫さんは、三十か国を放浪した末に商社へ入り、五十代でリストラの危機を迎えながらレアメタル専門商社アドバンスト・マテリアル・ジャパンを立ち上げた、まさに現代の「山師」と呼ばれる人物です。世界中の鉱山を歩き、修羅場をくぐり抜けてきた当事者だからこそ書ける生々しさが、この本には宿っています。自分も同じ誤解を抱えたまま暮らしているかもしれない、と感じた方は、一度この世界をのぞいてみる価値があります。
中村繁夫著『レアメタル超入門』はこちらから読めます。
内容紹介
レアメタル(希少金属)とは、埋蔵量が少ない、もしくは取り出すのが難しい金属の総称だ。タンタルやニオブ、コバルトなど、その数、狭義で四七、広義で五七種類に上る。携帯電話やデジカメの小型化に不可欠で、日本は消費大国にして輸入大国である。アフリカのレアメタルを丸ごと買い押さえる中国など、各国が熾烈な資源争奪を展開するなか、日本は完全に出遅れている。金融暴落の今こそ、日本よ動け。レアメタル第一人者が緊急提言。
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- レアメタル超入門 (幻冬舎新書 な 6-1)
- 著者
- 中村 繁夫
- レーベル
- 幻冬舎新書 な 6-
- 出版社
- 幻冬舎
- 発売日
- 2009年5月1日
- ISBN
- 4344981243