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世界史概観(上) (岩波新書)

H.G.ウェルズ長谷部 文雄

岩波新書 / 岩波書店

1966年6月20日発売

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新書嫁レビュー

「世界史」とは国ごとの歴史を並べたものだと思っていた。H.G.ウェルズが違う視点を持っていた

2026-04-24

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世界史とは、各国の歴史を並べたものだと思っていた

学校で「世界史」を学んだとき、それはヨーロッパ史・中国史・中東史を順番に並べた授業でした。それぞれの地域が「どう発展したか」「どんな事件があったか」を別々に覚える。全体がどのようにつながっているか、人類という視点で歴史を見るとどう見えるか、そういう問いを立てたことがなかった。そのしっくりこなさの正体に気づかせてくれたのが、SFの父として知られる作家が1920年に書いた世界史の本でした。

H.G.ウェルズ著(長谷部文雄・阿部知二訳)『世界史概観(上)』はこちらから読めます。

「地球の誕生」から始まる世界史があった

H.G.ウェルズの『世界史概観』は、他の世界史の本とは全く異なる出発点を持っています。地球の誕生、魚類・爬虫類・哺乳類の進化、類人猿から人類への発展——そこから始まります。「歴史は文明から始まる」という常識を覆し、人類の歴史を生命の歴史の一部として位置づける視点は、1920年当時としては革命的でした。

上巻では人類の起源から十字軍まで扱いますが、特徴的なのは「白人文明中心主義を排する」という姿勢です。ナショナリズムが高まる第一次大戦後に、ウェルズは「特定の文明や民族の勝利の記録」としてではなく「人類全体の足どり」として歴史を語ろうとしました。ギリシャ・ローマだけでなく、中国・インド・イスラム文明が対等な主体として描かれます。下巻では近代から現代まで、人類の知性と野蛮が拮抗する歴史が展開されます。ぜひ本書で確かめてみてください。

歴史を「人類の物語」として見ることができるようになった

この本を読んでから、世界史というものへの姿勢が変わりました。「中国は○○王朝の時代、ヨーロッパでは○○が起きていた」という並列の見方から、「人類という一つの種が地球上で何をしてきたか」という統一した問いで歴史を見るようになりました。

地球規模の環境変動が文明の盛衰に影響し、ある地域の発明や思想が別の地域に波及し、やがてすべての人類が相互依存するネットワークの中に置かれる——そういう大きな流れが、ウェルズの視点では見えてきます。今日の気候変動・グローバリゼーション・文明の衝突といった問題が、人類の歴史の文脈でどこに位置するかを問えるようになったのは、この本の影響が大きい。H.G.ウェルズは小説家として知られますが、この歴史書における人類への洞察は、あらゆる歴史書の中でも群を抜いています。

『タイム・マシン』の作者が書いた、人類史の金字塔

H.G.ウェルズ(Herbert George Wells、1866〜1946年)はロンドン生まれ。『タイム・マシン』(1895年)『宇宙戦争』(1898年)などSFの古典で知られる作家ですが、科学を専攻した教師としての素養から歴史・社会・政治への深い関心を持ち続けた知識人でもあります。本書は1920年の刊行で、出版直後から世界的ベストセラーとなり、「一般読者向けに書かれた最良の世界史」として20世紀を通じて読み継がれました。

この本を読まなければ、世界史を「各国・各地域の歴史を並べたもの」として一生見続け、人類全体を俯瞰する視点を得られなかったはずです。地球の誕生から始まるこの壮大な物語が、現代の自分の位置を教えてくれます。

H.G.ウェルズ著(長谷部文雄・阿部知二訳)『世界史概観(上)』、購入はこちらから。

書誌情報

書名
世界史概観(上) (岩波新書)
著者
H.G.ウェルズ / 長谷部 文雄
レーベル
岩波新書
出版社
岩波書店
発売日
1966年6月20日
ISBN
4004130034