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焼酎の科学 発酵、蒸留に秘められた日本人の知恵と技 (ブルーバックス)

鮫島吉廣髙峯和則

講談社

2022年1月20日発売

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新書嫁レビュー

なぜ焼酎だけ、できたてでうまいのか——一杯の裏の科学

2026-08-14

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焼酎は、ただ安くて強いだけのお酒だと思っていた

焼酎について、私はほとんど何も知らずに飲んでいました。蒸留酒で度数が高く、安くて気取らない——その程度の理解で、グラスを傾けていたのです。ワインやウイスキーには語るべき物語があるけれど、焼酎はせいぜい産地が違うくらいだろう、と。けれど、いざ友人にうんちくを聞かれると一言も返せず、自分が日常的に飲んでいるものをまるで知らないという、妙な居心地の悪さがありました。鮫島吉廣・髙峯和則著『焼酎の科学』を読んで、その一杯の奥に広がる世界に、すっかり引き込まれてしまいました。

鮫島吉廣・髙峯和則著『焼酎の科学』はこちらから読めます。

「ただの安酒」の裏に隠れていた、七つの謎

本書が手がかりにするのは、焼酎をめぐる素朴な「謎」です。たとえば、なぜ焼酎はほとんどどんな原料からでも造れるのか。芋、麦、米、そば、黒糖——同じ蒸留酒でも、これほど原料の幅が広い酒は珍しいといいます。そしてもう一つ、蒸留酒でありながら、なぜ焼酎は熟成させなくてもできたてからおいしいのか。本書はこうした問いを、発酵と蒸留の科学からていねいに解き明かしていきます。背景にあるのは、清酒づくりに向かない温暖な九州の風土の中で、人々が積み重ねてきた知恵と技でした。気温が高いと腐敗しやすく、酒造りには不利とされた土地で、どうやって安定しておいしい酒を生み出すか。その問いへの答えが、麹の選び方や仕込みの工夫として、長い時間をかけて磨き上げられてきたのです。本書ではさらに、麹のはたらきや、焼酎に秘められた成分の話まで、踏み込んだ解説が続きます。とりわけ印象的なのは、米が手に入りにくい風土が、かえって多様な原料を使う工夫を生んだという逆説です。恵まれなかった環境が制約ではなく、独自の酒文化を育てる土壌になっていたのです。同じ蒸留酒であるウイスキーとの違いを通して、焼酎ならではの個性がどこから来るのかも語られ、読みながら何度も「そういうことだったのか」と膝を打たされます。何気なく飲んでいた一杯がどう生まれているのか、その全体像はぜひ本書で確かめてみてください。

いつもの一杯が、味わい深くなった

この本を読んでから、晩酌の時間がすっかり豊かになりました。以前はただ「効くなあ」と流し込んでいた焼酎を、今はラベルの原料表記を眺め、これはどんな麹で、どう蒸留されたのだろうと想像しながら口に運んでいます。同じ一杯でも、その背後に九州の蒸し暑い風土と、何世代もの試行錯誤が積み重なっていると知ると、味わいの解像度がまるで違います。鹿児島出身のある読者が「飲むだけで知らないことが多すぎた」と書いていましたが、まさにその通りでした。居酒屋で焼酎を選ぶときも、銘柄の名前だけでなく、原料や造りを思い浮かべて選ぶようになりました。知識が一つ増えるごとに、いつもの晩酌がささやかな探究の時間に変わっていったのです。

知らずに飲み続けるには、もったいなさすぎた

この本に出会わなければ、私は焼酎を「安くて強い酒」と決めつけたまま、その奥行きに一生気づかずに飲み続けていたはずです。著者の鮫島吉廣氏は鹿児島大学の名誉教授、髙峯和則氏は同大学の焼酎・発酵学教育研究センターの教授で、ともに焼酎研究の専門家です。研究の最前線に立つ二人だからこそ、ただの蘊蓄ではなく、確かな科学に裏打ちされた話を、飲み手の好奇心に寄り添う形で語ることができるのだと思います。いつもの一杯をもっと味わいたい方に、おすすめしたい一冊です。

鮫島吉廣・髙峯和則著『焼酎の科学』はこちらから読めます。

※本記事にはアフィリエイトリンク(PR)が含まれます。

内容紹介

魅惑の酒、焼酎の七不思議に迫る。

身近な存在ながら、じつは非常に特殊な蒸留酒、焼酎。
どんな原料でも焼酎にできて、蒸留酒なのに新酒でも旨く、健康にも良い。
蒸留すればただの「湯気の集まり」のはずなのに、さまざまな個性的な風味も持っている。

歴史的・文化的背景、酒造りの技、酵母・麹の働き、「風味」の決め手、健康への寄与、飲みかたで変わるおいしさーー
今や世界から注目を集め、国酒にも認定された焼酎には、
清酒を造れなかった九州地方の人々が生み出した知恵と技が詰まっている。
知るほどに驚く、焼酎の世界へご招待します。

・前割りするとまろやかな味になるのはどうして?
・なぜ、どんな原料でも焼酎にできるのか?
・香りを嗅ぐだけでも良い? 蒸留酒なのに身体によい理由とは?
・血栓を溶かす? 血糖値が上がりにくいって本当?
・どうして最近の芋焼酎は臭くなくなった?
・たった0.2%の成分が、焼酎の風味を決めている?
・蒸留酒なのに新酒でもおいしく飲めるのはなぜ?
・おいしいお湯割りはどうやって作ればいい?
・高い温度で発酵させるのに腐らないのはなぜ?
 --本書を読めば、その答えが分かります!

〔主な内容〕
プロローグ 焼酎に秘められた「七不思議」 --神秘的な酒、本格焼酎の魅力
第1章 焼酎500年の旅 --その歴史から見えてくる日本独特の酒文化
第2章 本格焼酎を知るための基礎知識  --発酵、麹、酵母とはなにか
第3章 焼酎ができるまで --麹の力、杜氏の技、蒸留と熟成の科学
第4章 最大の謎「風味」の科学 --何が焼酎の味を左右するのか?
第5章 健康を考えるなら焼酎 --のんべえに優しい魅惑の酒
第6章 読むほどに旨くなる飲み手の流儀 --おいしさを科学する

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
焼酎の科学 発酵、蒸留に秘められた日本人の知恵と技 (ブルーバックス)
著者
鮫島吉廣 / 髙峯和則
出版社
講談社
発売日
2022年1月20日
ISBN
9784065268070