新書嫁レビュー
「缶入り煎茶」が売れなかった理由は、味ではなく名前だった
2026-07-17
商品が売れるかどうかは、中身の良さで決まると思っていた
いい商品を作れば、いつかちゃんと評価される。名前なんておまけで、本質はあくまで品質や性能だ——。私はずっと、そう信じていました。けれど振り返ってみると、すぐ思い出せる商品もあれば、良かったはずなのに名前すら浮かばないものもある。その差はいったい何なのか。中身で決まるはずだと言い切りながら、どこか説明のつかない引っかかりが残っていました。良いものなのに埋もれてしまう商品を見るたびに、もったいないと感じつつ、その原因を言葉にできずにいたのです。その違和感に正面から答えてくれたのが、高橋誠著『最新のネーミング強化書』です。
高橋誠著『最新のネーミング強化書』はこちらから読めます。
同じ中身でも、名前を変えただけで運命が変わる
本書が見せてくれるのは、名前が持つ静かで決定的な力です。象徴的に紹介されるのが、「缶入り煎茶」という商品名のまま売れ悩んでいた緑茶飲料が、名前を変えたことで広く受け入れられていったという事例です。中身の緑茶はほとんど同じ。それでも、人を遠ざける名前と、思わず手が伸びる名前とでは、たどる道が大きく変わってしまう。ほかにも、堅い印象だった商品名が、親しみやすい呼び名に生まれ変わって支持を広げた例が並びます。読んでいて引き込まれるのは、それが感覚論ではなく、発想の手順として体系化されている点です。良い名前は天才のひらめきから降ってくるもの、という思い込みが、ここで静かに覆されます。誰でもたどれる道筋として、名前づくりが分解されているのです。読者からも、ネーミングひとつで売り上げが大きく変わるという実感が語られています。本書では名前を生み出すアイデア発想法から、商標登録という実務、さらにブランドへ育てていく流れまでが、具体例とともに踏み込んで解説されます。その手順の全体像は、ぜひ本書で確かめてみてください。
街の看板や商品棚が、急に面白い教材に見えてきた
この視点を得てから、日常の景色が変わりました。以前はコンビニの棚やお店の看板を、ただ眺めて通り過ぎていました。けれど今は、この名前はなぜ覚えやすいのか、なぜ手に取りたくなるのかと、つい考えてしまう。たとえば新商品のネーミングを見たとき、単なる思いつきではなく、誰かが意図して設計した結果なのだと読み解けるようになった。買い物という何気ない時間が、言葉の工夫を観察する楽しい時間に変わりました。ヒットしている商品の名前には、たいてい人を引き寄せる理由が隠れている。それを当てっこするように眺めるだけで、見慣れた売り場が発見に満ちた場所に変わります。仕事で名前を考える場面でも、行き当たりばったりではなく、よりどころを持って向き合えるようになっています。
知らないままでは、名前の力を見くびり続けていた
この本を読まなければ、私は名前を中身のおまけと軽く見たまま、その奥にある技術に気づかずにいたはずです。著者の高橋誠氏は、創造性開発を専門とする研究者で、株式会社創造開発研究所の代表を務めてきた人物です。「ビッグエッグ」「かもめ~る」「ゆうパック」といった、誰もが耳にしたことのある名前を世に送り出してきた、この分野の第一人者です。数多くの命名を手がけてきた著者だからこそ語れる、言葉の設計図がここにあります。自分も名前の力を見過ごしていたかもしれないと感じた方に、開いてほしい一冊です。
高橋誠著『最新のネーミング強化書』はこちらから読めます。
内容紹介
いま、ネーミングの重要性が飛躍的に高まっている。商品名のみならず、社名、サービス名、タレント名に至るまで、ネーミングの巧拙が成否を分けるといっても過言ではない。また昨今のデジタル技術の発展で商標法も改正され、動き、色彩のみ、音なども登録可能になった。本書は、これまで300以上のヒットネーミングを手がけてきた著者が、その発想法から商標登録の実務、ブランド化の極意まで、豊富な事例をもとにわかりやすく解説。
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 最新のネーミング強化書 (PHPビジネス新書)
- 著者
- 高橋 誠
- レーベル
- PHPビジネス新書
- 出版社
- PHP研究所
- 発売日
- 2015年4月17日
- ISBN
- 9784569824345