新書嫁レビュー
頭の中まで論理的にしようとするから、うまく説明できない
2026-07-07
論理的になれない自分は、頭の出来が悪いのだと思っていた
会議で意見を求められて、言いたいことはあるのにうまく言葉にできない。そんなとき私は、自分の頭が論理的にできていないせいだと長らく落ち込んでいました。考える段階からきちんと筋道を立てられる人がうらやましく、自分はその才能を持って生まれなかったのだと諦めかけていたのです。けれど、その「考えること」と「説明すること」を一緒くたにしていた前提こそが、つまずきの正体だったと、この本が教えてくれました。
福澤一吉著『論理的に説明する技術 説得力をアップする効果的なトレーニング法とは』はこちらから読めます。
「考えるときはおおらかに、伝えるときは慎重に」
本書が掲げる大原則は、「考えるときはおおらかに、第三者に伝えるときは慎重に」というものです。著者によれば、そもそも思考は論理から自由なものであり、頭の中まで論理で縛ろうとしても、あまりいいことはないといいます。論理が本当に必要になるのは、自分の考えを他人に伝える場面、つまり「説明」と「論証」の段階なのです。本書は、主張・理由・根拠・論拠といった言葉の違いや、帰納と演繹の区別、トゥールミンの議論モデルといった論理の骨組みを、身近な例とイラストでほどいていきます。たとえば「Aの指紋のついた凶器が見つかった、だからAが犯人だ。なぜなら、Aにはアリバイがないから」というように、根拠・主張・論拠を接続詞でつなぐだけで説明が論理的に立ち上がる、という具合です。読者からも「論証や演繹がイラストとともに分かりやすく解説され、断然頭に入りやすい」「会話に出てくる『やっぱり』への考察に目が覚めた」という声が寄せられていました。なかには「『っていうか』『じゃないですか』『みたいな』といった口ぐせが、心理的な緊張を避けたり論拠を伏せたりする表現として注意を促されていて、なるほどと唸った」という感想もあり、ふだん何気なく使っている言葉の裏側まで見えてくるのが本書の面白さです。本書には、うまくいかない対話への対処や、問いを細かく分けていく方法など、説明をめぐるさらに踏み込んだ章も用意されています。
黙り込むことが減り、まず一言が出るようになった
この本を読む前の私は、完璧に筋道を立ててからでないと口を開けず、会議でしばしば黙り込んでいました。読んだあとは、まず思いついたことをおおらかに頭の中に並べ、それを他人に渡すときだけ「主張はこれ、理由はこれ」と接続詞でつなぎ直すようになりました。たとえば上司に意見を求められたとき、以前なら言葉に詰まっていた場面で、「結論はこうです。なぜなら」と、ひとまず一言目が出てくる。あるいはメールで何かを依頼するとき、主張と理由を接続詞で結ぶだけで、相手から返ってくる反応が以前よりずっとスムーズになる。考える自分と説明する自分を切り分けただけで、沈黙が減り、伝わったという手応えが増えていきました。
知らないままでは、才能のせいにし続けていた
この本に出会わなければ、私は説明下手を「頭の出来」のせいにして、訓練でどうにかなるとは思わないまま過ごしていたはずです。論理は生まれつきの才能ではなく、伝える場面で使う技術だと知れたことで、肩の荷がふっと軽くなりました。著者の福澤一吉氏は早稲田大学文学学術院の教授で、言語病理学や認知神経心理学を専門とし、論理や論証をめぐる平易な解説書を数多く手がけてきた書き手です。説明に苦手意識のある人ほど報われる一冊として、ぜひ本書で確かめてみてください。
福澤一吉著『論理的に説明する技術 説得力をアップする効果的なトレーニング法とは』はこちらから読めます。
内容紹介
論理的に説明したいと思っても、なにをどうすれば論理的になるのか、わかっている人は少ないものです。本書は、現代にあふれる説明困難症候群の人たちに、具体的にわかりやすく改善のポイントと、強化のためのトレーニング法を解説します。その大原則は、考えるときはおおらかに、第三者に伝えるときは慎重に、です。本書で説得力の秘訣を身につけましょう。
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 論理的に説明する技術 説得力をアップする効果的なトレーニング法とは (サイエンス・アイ新書)
- 著者
- 福澤 一吉 / にしかわ たく
- レーベル
- サイエンス・アイ新書
- 出版社
- ソフトバンククリエイティブ
- 発売日
- 2010年7月1日
- ISBN
- 4797356545