新書嫁レビュー
教科書の「卑弥呼の墓」は、本当に卑弥呼の墓なのか
2026-07-07
箸墓古墳が卑弥呼の墓だと、ずっと信じていた
奈良県桜井市に「箸墓古墳」という巨大な前方後円墳があります。3世紀の女王・卑弥呼が眠る墓、という話は歴史の授業で耳にした記憶があります。国立の研究機関が科学的な方法で調べて、240〜260年という年代測定結果を出した。だからそれは確定した事実なのだろうと、長年そう思い込んでいました。歴史の謎に「答えが出た」とニュースが報じれば、そのまま受け入れてしまうのが、私の常でした。でもこの本を読んで、その「答え」がいかに危ういものだったかを思い知りました。
安本美典著『「邪馬台国=畿内説」「箸墓=卑弥呼の墓説」の虚妄を衝く!』はこちらから読めます。
「科学的」という言葉が隠しているもの
国立歴史民俗博物館(歴博)が発表した炭素14年代測定の結果は、メディアに大きく取り上げられました。しかし著者・安本美典は、その測定方法そのものに重大な問題があると指摘します。放射性炭素年代測定は使用する試料によって結果に大きなズレが生じる可能性があり、同じ遺跡の資料でも測定対象が異なれば異なる数値が出ます。歴博の発表では土器付着物を試料として使ったものの、他の試料を用いると全く異なる時代を示すことも確認されています。
さらに著者が問い質すのは、学術的な手続きの問題だけではありません。予算獲得と組織の権威を守るために、学説が「政治的パフォーマンス」として利用される構造への批判も、本書の重要なテーマです。かつて旧石器時代の遺跡に関する捏造事件が世間を揺るがしましたが、著者はこれを「第二の旧石器捏造事件になりかねない」と警告しています。
本書には邪馬台国の所在地をめぐる論争全体の構造や、著者自身が長年積み上げてきた北九州説・東遷説の論拠についても詳しく書かれています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「確かめずに信じる」習慣が、どれだけ多くのことを見えなくするか
この本を読む前の自分にとって、「国立機関が科学的な方法で示した結論」は疑う必要のないものでした。しかし読み終えた後、日常のさまざまな場面で立ち止まるようになりました。新聞やニュースで「研究で明らかになった」という表現を見るたびに、「誰が、どんな方法で、どんな前提のもとで調べたのか」を確認したくなる。そういう習慣が自然に身についていきました。
歴史の謎は、答えが出た瞬間に面白さが失われるわけではありません。むしろ「その答えは本当に正しいのか」という問いを持ち続けることで、歴史はずっと生きたものとして目の前にあり続けます。邪馬台国はどこにあったのか——この問いが「まだ決まっていない」という事実を、改めて面白いと思えるようになりました。
学者の肩書きが、すべてを保証するわけではない
安本美典は1934年生まれ。京都大学文学部で心理学を専攻し、大学院修了後は産業能率大学教授を歴任した研究者です。心理学・計量比較言語学・数理歴史学という複数の学問領域を横断しながら、邪馬台国研究に独自の数理的アプローチを持ち込んできました。『季刊邪馬台国』の編集顧問として、数十年にわたりこのテーマを追い続けている第一人者です。
読者レビューにあるように「論理的・客観的な論証で説得力がある」と評価される一方、「歴博側の反論が聞きたい」という声も上がっています。どちらの主張が正しいかは、あなた自身が本書を読んで判断してください。
安本美典著『「邪馬台国=畿内説」「箸墓=卑弥呼の墓説」の虚妄を衝く!』はこちらから読めます。
内容紹介
よそおいは「科学的」、内容は「支離滅裂」!歴博の研究グループの「炭素14年代測定法」による「箸墓古墳は卑弥呼の墓説」は、捏造に等しい。
出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。
書誌情報
- 書名
- 「邪馬台国=畿内説」「箸墓=卑弥呼の墓説」の虚妄を衝く! (宝島社新書 296)
- 著者
- 安本 美典
- レーベル
- 宝島社新書
- 出版社
- 宝島社
- 発売日
- 2009年9月1日
- ISBN
- 4796673482