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日本人が知らない「スーホの白い馬」の真実 (扶桑社新書)

ミンガド・ボラグ

扶桑社新書 / 扶桑社

2021年5月1日発売

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新書嫁レビュー

「スーホの白い馬」は、モンゴルの話ではなかった

2026-05-26

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小学校で読んだあの物語は、モンゴルの民話だと思っていた

「スーホの白い馬」は、モンゴルの草原に生きる少年と白い馬の純粋な絆を描いた民話だと信じていました。小学校の国語の教科書で出会ったあの物語は、モンゴルの雄大な大地と馬文化から生まれた本物の伝承であり、馬頭琴という楽器の起源を語るものだとずっと思っていました。しかし、この本を読んで、その前提が根本から覆りました。私たちが「モンゴルの民話」として親しんできた「スーホの白い馬」は、実際には中国で編集・改変された作品だったのです。

ミンガド・ボラグ著『日本人が知らない「スーホの白い馬」の真実』はこちらから読めます。

1951年、漢人作家が内モンゴルで「採話」した物語

本書が丹念に解き明かした経緯は、こうです。1951年、漢人作家の塞野が内モンゴルのチャハル地方でウルジーという弾き語りの芸人から馬頭琴物語を聞き取り、漢語(中国語)で『馬頭琴』という作品として書き記しました。この『馬頭琴』が1954年か55年に『内蒙古日報』で発表され、やがて日本の大塚勇三によって翻訳されたものが、私たちの知る「スーホの白い馬」です。

問題は、この過程で物語が大きく変形されたことです。モンゴルには動物をむやみに殺してはいけないという文化的な禁忌があります。しかし「スーホの白い馬」では白い馬が矢に射抜かれて死ぬという描写があり、これはモンゴルの文化的感覚とは相容れないと著者は指摘します。さらに物語の構造自体が、中華人民共和国成立後の政治的な文脈に沿って再構成された可能性があるとも述べられています。

著者のミンガド・ボラグは内モンゴル自治区生まれの馬頭琴奏者であり、関西学院大学で教鞭をとる研究者です。本書にはさらに、「馬頭琴の伝説」と「白い馬の物語」という二つの異なる物語が、どのように結合されたかについての考察も詳しく展開されています。ぜひ本書で確かめてみてください。

あの絵本の見え方が、永遠に変わった

この本を読む前、「スーホの白い馬」は純粋に美しい物語として記憶の中に保存されていました。読んだ後、その記憶はそのまま残りながら、でも新しい層が加わりました。物語が伝わる過程で何が加えられ、何が削られ、誰の意図がそこに宿ったのか——そういった問いを持つことが、その物語を貶めるのではなく、むしろ世界のあり様をより深く理解することにつながるのだと気づきました。

子どもの頃に親しんだ「本物」が、実は複数の文化と時代と政治が交錯した産物である——それを知ることで、モンゴル文化への関心が新たに生まれました。馬頭琴の音色を改めて聴きたくなり、本来のモンゴル口承文化にはどんな物語があるのかを調べてみたくなりました。「知らなかった」という状態は、ある種の豊かさを閉ざしていたのだと思います。

モンゴルを知る者だけが書ける真実

ミンガド・ボラグは1974年、内モンゴル自治区シリンゴル出身です。1999年に来日し、馬頭琴奏者として活動しながら、「スーホの白い馬」の出自について長年調査を続けてきました。本書はその研究成果を新書として一般読者向けにまとめたものであり、日本のモンゴル研究者からも学術的な議論を呼ぶ内容として注目されています。

「スーホの白い馬はモンゴルの民話だ」——その前提のまま生きていては、決してたどり着けなかった場所へ、この本は連れて行ってくれます。ミンガド・ボラグ著『日本人が知らない「スーホの白い馬」の真実』はこちらから読めます。

内容紹介

モンゴル人が知らない“モンゴルの民話”が
長年、日本人に親しまれてきたことは
モンゴル人の私にとって驚きである。 楊海英(静岡大学教授)

◎スマホで再生できるモンゴルの伝統楽器“馬頭琴”の演奏データ付き!

社会主義イデオロギーのもとで量産された
階級闘争的な「革命物語」はいかにして日本に浸透したのか?

2016年刊『スーホの白い馬の真実 ─モンゴル・中国・日本それぞれの姿』(風響社/第41回日本児童文学学会奨励賞を受賞)の加筆・新書化企画。
民話「スーホの白い馬」は、小学生の国語の時間(光村図書出版・小学校国語教科書「こくご」二・下1965年度版 初掲載)、あるいは、絵本『スーホの白い馬』(福音館書店1967年初版2016年10月発行)により、日本では子どもから大人まで広く知られている、モンゴルの少年と白い馬の伝説である。
少年が可愛がっていた馬が王様に殺され、その馬の骨で作ったという馬頭琴という楽器の物語を読み、遠い国に思いを馳せる子供たちはいまも多い。
ところが昨今、日本と関わる機会が増えたモンゴル人たちが気づいたところによると、「これはモンゴルの民話ではない」という。
内モンゴル出身の著者は、丹念にこの日本語訳者や出版社に取材し、物語が出来上がった経緯とともに中国のつくり話であったことを解明していく。

折しも2020年6月、中国政府が突然、秋の新学期から学校におけるモンゴル語教育を停止するという文書を自治区に届けたことで、モンゴル人による抗議活動が全世界に拡散している。民族固有の言語や文化を封じる同化政策はこれまでチベット、ウイグルなどに対し行ってきたことと同様である。
昨今、日本にまで影響を及ぼす黄砂も、遊牧による内蒙古の著しい砂漠化が理由とされるが、実際にはすでに遊牧は禁止され、国家規模の「西部開発」による自然破壊のせいであると著者は指摘する。
「スーホの白い馬」は国際理解の題材としてもよく使われるので、「背後にある状況を正しく理解し、発信されることがモンゴル人の願いである」と著者はいう。

日本で長く親しまれてきた民話を通して、馬を愛するモンゴル人の文化、ひいては中国の民族弾圧政策、プロパガンダ工作の歴史を解説する。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
日本人が知らない「スーホの白い馬」の真実 (扶桑社新書)
著者
ミンガド・ボラグ
レーベル
扶桑社新書
出版社
扶桑社
発売日
2021年5月1日
ISBN
4594087957