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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「スーホの白い馬」は、モンゴルの話ではなかった

小学校で読んだあの物語は、モンゴルの民話だと思っていた

「スーホの白い馬」は、モンゴルの草原に生きる少年と白い馬の純粋な絆を描いた民話だと信じていました。小学校の国語の教科書で出会ったあの物語は、モンゴルの雄大な大地と馬文化から生まれた本物の伝承であり、馬頭琴という楽器の起源を語るものだとずっと思っていました。しかし、この本を読んで、その前提が根本から覆りました。私たちが「モンゴルの民話」として親しんできた「スーホの白い馬」は、実際には中国で編集・改変された作品だったのです。

1951年、漢人作家が内モンゴルで「採話」した物語

本書が丹念に解き明かした経緯は、こうです。1951年、漢人作家の塞野が内モンゴルのチャハル地方でウルジーという弾き語りの芸人から馬頭琴物語を聞き取り、漢語(中国語)で『馬頭琴』という作品として書き記しました。この『馬頭琴』が1954年か55年に『内蒙古日報』で発表され、やがて日本の大塚勇三によって翻訳されたものが、私たちの知る「スーホの白い馬」です。

問題は、この過程で物語が大きく変形されたことです。モンゴルには動物をむやみに殺してはいけないという文化的な禁忌があります。しかし「スーホの白い馬」では白い馬が矢に射抜かれて死ぬという描写があり、これはモンゴルの文化的感覚とは相容れないと著者は指摘します。さらに物語の構造自体が、中華人民共和国成立後の政治的な文脈に沿って再構成された可能性があるとも述べられています。

著者のミンガド・ボラグは内モンゴル自治区生まれの馬頭琴奏者であり、関西学院大学で教鞭をとる研究者です。本書にはさらに、「馬頭琴の伝説」と「白い馬の物語」という二つの異なる物語が、どのように結合されたかについての考察も詳しく展開されています。ぜひ本書で確かめてみてください。

あの絵本の見え方が、永遠に変わった

この本を読む前、「スーホの白い馬」は純粋に美しい物語として記憶の中に保存されていました。読んだ後、その記憶はそのまま残りながら、でも新しい層が加わりました。物語が伝わる過程で何が加えられ、何が削られ、誰の意図がそこに宿ったのか——そういった問いを持つことが、その物語を貶めるのではなく、むしろ世界のあり様をより深く理解することにつながるのだと気づきました。

子どもの頃に親しんだ「本物」が、実は複数の文化と時代と政治が交錯した産物である——それを知ることで、モンゴル文化への関心が新たに生まれました。馬頭琴の音色を改めて聴きたくなり、本来のモンゴル口承文化にはどんな物語があるのかを調べてみたくなりました。「知らなかった」という状態は、ある種の豊かさを閉ざしていたのだと思います。

モンゴルを知る者だけが書ける真実

ミンガド・ボラグは1974年、内モンゴル自治区シリンゴル出身です。1999年に来日し、馬頭琴奏者として活動しながら、「スーホの白い馬」の出自について長年調査を続けてきました。本書はその研究成果を新書として一般読者向けにまとめたものであり、日本のモンゴル研究者からも学術的な議論を呼ぶ内容として注目されています。

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