← ブックフィード 新書嫁 PR

新書嫁レビュー ・ 約 3 分

海の覇権は、大砲ではなく「ルール」が決めてきた

海の覇権は「強い海軍を持った国が握る」と思っていた

海洋覇権の歴史というと、艦隊同士の海戦や大砲の轟音で決まってきたイメージを持っていました。スペインの無敵艦隊、イギリスの海軍力、そして現代のアメリカ空母——強い軍事力を持った国が海を支配してきたのだ、という印象です。

そのせいで、現代の海洋問題——中国の南シナ海への進出、島の領有権争い——も「軍事力の問題」として眺めていました。でもなぜ、軍事的に圧倒的な力を持つアメリカが、中国の海洋進出を簡単に止められないのか。そこに、「軍事力だけではない何か」があるはずだという感覚が引っかかっていました。

この本が、その「何か」を明快に示してくれました。

大航海時代から400年、覇権は「ルールの設計者」が握ってきた

本書が明かすのは、海洋覇権の鍵が軍事力だけでなく「海のルールを誰が設計するか」にあったという視点です。17世紀のグロティウスによる「海洋自由論」は、それまでスペインとポルトガルが独占していた海洋利権に対して「海は万民のもの」という原則を打ち立て、その後のイギリスの覇権を理論的に支えました。

19世紀のイギリスは航海法などで海運の制度を設計し、20世紀のアメリカはトルーマン宣言や国際海洋条約の起草に関与することで「アメリカが有利な海のルール」を世界標準にしてきました。現在の中国は、この既存のルールに挑戦することで勢力拡大を図っています。本書にはさらに、スエズ運河の開削とイギリス・フランスの覇権争い、ワシントン軍縮会議など、海洋史の転換点となった具体的な場面が詳しく書かれています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「ニュースの文脈」が見えるようになった

この本を読んでから、海洋に関するニュースを見るたびに「これはどのルールをめぐる争いか」という問いを立てられるようになりました。南シナ海や東シナ海の問題が、単なる領土争いではなく、400年続く「誰がルールを設計するか」という戦いの最新局面だと理解できるようになったのです。

海を見る目が変わると、世界情勢の見え方も変わります。軍事力の背後にある「制度的な影響力」に目を向けることで、ニュースがより立体的に見えてくる——それがこの本を読んだ後の変化です。

「海」という視点で世界史を読み直す

本書を読んでから、世界史の教科書で学んだ出来事が「海」という軸で再整理されていく感覚を覚えました。スペインの衰退、オランダの台頭、イギリスの覇権、アメリカの時代——これらはすべて海洋支配の交代史でもありました。この視点を持つと、現代中国の行動も「新たな大国が海洋秩序を書き換えようとしている歴史的文脈」として読めます。海を通じて、世界史が一本の線でつながる感覚は、本書なしには得られなかったものです。地図を眺めながら「この海峡をめぐって、どんな国がいつ争ったか」と思いを馳せられるようになったのは、この本を読んでからの変化です。

日本の国際関係研究者が描く「400年の海洋史」

独協大学教授として国際関係論と海洋政策を専門とする竹田いさみが、大航海時代から現代の中国の海洋進出まで400年を見渡す一冊です。豊富な事例と分かりやすい解説で、海洋史の全体像が把握できます。

この本を読まなければ、海の覇権を「軍事力の問題」としてしか見られなかったと思います。

この本を手に入れる

海の地政学 覇権をめぐる400年史 (中公新書) 竹田いさみ / 中公新書

次の一冊 ── 同じ主題「世界史」

イギリス帝国盛衰史 グローバルヒストリーから読み解く (幻冬舎新書 708) 秋田 茂 / 幻冬舎新書 書評を読む →

← ブックフィードに戻る

海の地政学 覇権をめぐる400年史 (中公新書) Amazon 楽天