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現代史を学ぶ (岩波新書 新赤版 394)

溪内 謙

岩波新書 新赤版 / 岩波書店

1995年6月20日発売

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新書嫁レビュー

「歴史とは過去の事実を記録したものだ」という理解が、現代を読む目を閉じさせていた

2026-05-09

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「歴史とは起きた出来事の記録であり、事実を正確に知れば歴史を理解したことになる」とずっと思っていた

歴史とは年号と出来事の集積であり、それを正確に覚えることが歴史を学ぶことだと思っていました。「何が起きたか」を知ることが歴史理解の目的であり、解釈は後からついてくる付け足しに過ぎない——そんな感覚がありました。だから「歴史を学ぶ」とは、教科書に書かれている内容を習得することと同義でした。

でも、現代史になると途端に「何が事実か」を決めることが難しくなる感覚がありました。生きている間に起きた出来事を歴史として見るとき、解釈が分かれ、資料の信頼性も問われる。「客観的な歴史」というものが、近い過去に関しては急に遠のいていくような感覚でした。その遠のきの意味が、言葉にならないままでいました。

溪内謙著『現代史を学ぶ』を読んで、その感覚が本質的な問いだったとわかりました。

溪内謙著『現代史を学ぶ』はこちらから読めます。

歴史とは「問い」であり、現代の問題意識が過去を照らし出す

本書が一貫して示すのは、歴史とは「過去の事実の集積」ではなく、「現在から過去に向けて問いを立てる営み」だという視点です。著者はE・H・カーの「歴史とは何か」を踏まえながら、テーマの設定・史料との向き合い方・論文の書き方という具体的な手順を通じて、歴史を学ぶことの本質を明かします。

特に印象的なのは、「テーマを決める」という章です。何を歴史として問うかは、その時代を生きる研究者の問題意識によって決まる。社会主義体制への問い、冷戦構造への問い——著者自身が専門とするロシア現代史の経験から、テーマとは「どこから見るか」そのものだという洞察が語られます。本書にはさらに、一次史料の読み方と歴史的推論の特性についての章が続きます。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「現代のニュース」を見る目が変わった

読む前と後で、ニュースや時事問題への向き合い方が変わりました。以前は、報道されていることを「現在進行中の出来事」として切り取って受け取っていました。でも今は、「これはどういう歴史的文脈の中で起きているのか」という問いが自然と浮かぶようになりました。

具体的には、国際情勢のニュースを見るとき、「誰がどんな問いを持って報じているのか」を意識するようになりました。ロシアや東欧の問題、戦争と平和の議論——それらは「現在起きていること」と同時に、歴史的に積み上がった文脈の上にある出来事です。過去の記録を知るだけでは読めない構造が、「問い」を変えることで見えてくる。歴史と現代がつながる感覚は、物事への立体的な理解をもたらしました。

また、「自分はどこから見ているのか」という自己点検の習慣もできました。歴史の解釈は問いを立てる側の立ち位置によって変わる。そのことを知ると、誰かの歴史解釈を聞くたびに「この人はどんな問題意識からこの過去を見ているのか」と問えるようになります。情報を批判的に受け取る力とは、そういう視点の転換から生まれると感じるようになりました。

ロシア現代史の第一人者が、歴史学の本質を平易に届けた

溪内謙(1923-2004)は東京大学法学部卒で、ロシア・ソ連現代史を専門とした歴史学者です。長年の研究実践を踏まえて、歴史を学ぶとはどういうことかを一般読者に向けて書いた本書は、歴史学の方法論入門として今も読まれています。専門的な議論をわかりやすく噛み砕いた語り口は、歴史に入門する人にも、現代史の理解を深めたい人にも届く一冊です。

この本を読まなければ、歴史を「事実の記録」として受け取り続け、「問いが歴史を作る」という本質的な視点を見落としたまま、現代の出来事を読み続けていたでしょう。

溪内謙著『現代史を学ぶ』はこちらから読めます。

内容紹介

既成の価値体系が大きくゆらぎ、未来への不透明感がつのる現代。いまこそ、時論の安易な追随におちいることなく、変動の深層にある歴史的文脈を見すえる知的営みが必要なのではないか。ロシア現代史研究の第一人者が現代史を学ぶことの意義と方法を、長年の経験をふりかえりながら説き明かす。情熱みなぎる歴史学入門。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
現代史を学ぶ (岩波新書 新赤版 394)
著者
溪内 謙
レーベル
岩波新書 新赤版
出版社
岩波書店
発売日
1995年6月20日
ISBN
400430394X