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野暮な人イキな人: 江戸の美意識「イキ」で現代を読み解く (日本文芸社パンドラ新書 59)

越川 禮子

日本文芸社パンドラ新書 / 日本文芸社

2007年3月1日発売

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新書嫁レビュー

得をする人ほど、なぜか好かれない——その違和感の正体

2026-06-13

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「損か得か」で判断するのが、賢い大人だと思っていた

仕事でも人付き合いでも、まず損得を計算するのが大人のふるまいだと、私はずっと信じてきました。約束を一つ反故にしても、相手が弱い立場なら少しくらい強く出ても、トータルで自分が得をするならそれが正解だと。けれど、その理屈で動いているはずなのに、なぜか胸のどこかがずっとざらついていました。得をしているはずなのに、誰からも心底好かれている実感がない。その正体不明の居心地の悪さに、ある一冊が言葉を与えてくれました。

越川禮子著『野暮な人イキな人 江戸の美意識「イキ」で現代を読み解く』はこちらから読めます。

「野暮」と「イキ」という、忘れられたものさし

本書が現代に持ち込むのは、「野暮」と「イキ」という二つのものさしです。著者によれば、弱い立場の相手に威張る人、口約束を軽んじて平気で破る人、勝った者だけを称え敗者を笑う風潮——こうしたふるまいはすべて「野暮」とされます。逆に、損得を超えて筋を通し、相手の面目を立て、敗れた者にも敬意を払える人が「イキ」だと位置づけられる。本書はこの美意識を、江戸の人々の生き方になぞらえて読み解いていきます。ここで一つ正直に添えておきたいのは、本書が拠り所とする「江戸しぐさ」については、江戸時代に実在した作法だとする史料は確認されておらず、後世に提唱されたものだとする指摘があるという点です。ですから本書は歴史の記録としてではなく、「こう生きると人としての品が立つ」という著者の美意識の提案として読むのが誠実だと感じました。金銭の損得だけで人を測る価値観に、別のものさしを差し込んでくる——その視点の置き換えこそが、本書の核心です。さらに本書では、品性を下げる言葉づかいや、他者を尊重する話し方についても章を割いて論じられていて、日々の言葉が自分の「野暮」と「イキ」を静かに分けていることに気づかされます。

「勝ち負け」から降りたら、肩の力が抜けた

この本を読む前の私は、会話のなかで無意識に勝とうとしていました。相手の言い間違いを指摘し、自分の正しさを通そうとし、それで小さく勝った気になっていたのです。読んだあとは、その勝ちが実は「野暮」だったのだと気づきました。たとえば打ち合わせで相手が言いよどんだとき、以前なら間髪入れず正していた場面で、ひと呼吸おいて相手に言い直す余地を残すようになる。たったそれだけで、その場の空気がやわらかくなり、不思議と自分の肩の力も抜けるのです。あるいは飲み会の席で、勝った話を自慢する代わりに、敗れた同僚の健闘をひと言ねぎらってみる。すると場の温度がほんの少し上がる。損得の計算盤からそっと降りてみると、ざらついていた胸の内が静かになり、人と過ごす時間そのものが軽くなっていきました。

知らないままでは、ずっと「賢い野暮」のままだった

この本に出会わなければ、私はこれからも損得だけを頼りに、賢いつもりの野暮を重ねていたはずです。得をしているのに好かれない、という違和感の正体に、一生気づかなかったかもしれません。著者の越川禮子氏は、長年にわたって「江戸しぐさ」を現代に紹介する活動を続け、生き方やふるまいに関する著作を多数手がけてきた書き手です。歴史的事実としての真偽はさておき、人としての品をどう保つかという問いに正面から向き合わせてくれる一冊として、ぜひ手元で確かめてみてください。

越川禮子著『野暮な人イキな人 江戸の美意識「イキ」で現代を読み解く』はこちらから読めます。

内容紹介

「よっ!イキだね!!」と言われる生き方とは。江戸しぐさからみた、男がすたる、女を下げる現代の野暮。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
野暮な人イキな人: 江戸の美意識「イキ」で現代を読み解く (日本文芸社パンドラ新書 59)
著者
越川 禮子
レーベル
日本文芸社パンドラ新書
出版社
日本文芸社
発売日
2007年3月1日
ISBN
4537254815