「いい言葉を書ける人」は生まれつき違うと思っていた
人の心に残るコピー、読んでいて思わず引き込まれる文章、一文で状況を鮮やかに描く表現——そういう言葉は、特別な才能を持った人間が感覚的に生み出すものだ、と思っていました。「センス」が問われる領域であり、磨けるものではない、という諦めが心のどこかにありました。
そのせいで、文章を書くたびに「どうせ自分には才能がない」という感覚がついて回りました。「もっとうまく書きたい」という欲求はあるのに、それを技術として学ぶ方法があるとは思えなかったのです。
この本が、その思い込みを崩してくれました。
「ハッとさせる言葉」には31の理論がある
本書は、数々の広告賞を受賞し、現在はオランダを拠点にクリエイティブ活動を行うコピーライター堤藤成が、言葉を生み出すための31の理論を解説した一冊です。著者は「言葉を紡ぐことは思考を紡ぎ、行動を紡ぎ、習慣を紡ぎ、人格を紡ぎ、運命を紡ぐ」と語ります。
印象的なのは、「センス」を前提にしないという姿勢です。本書は物語・志・実験・学び・企画という5つのテーマに沿って、言葉を生み出すときの思考の構造を解き明かしています。感覚ではなく「どのように思考を動かすか」という理論として提示されているため、「自分にはセンスがない」と思っている人ほど、発見が多い内容です。本書にはさらに、著者自身の経験や古今東西の名コピーとともに、言葉の力を実感できる場面が数多く登場します。ぜひ本書で確かめてみてください。
「文章を書くことへの怖さ」が減った
この本を読んでから、文章を書くことへの向き合い方が変わりました。以前は「これは才能の問題だから、いくら考えてもうまくならない」という諦めが先にありました。ところが本書を読んでからは、「どんな視点から入るか」「どんな構造で思考を動かすか」という問いを立てることで、以前より手が動くようになりました。
言葉を磨くことは、思考を磨くことでもある——その実感が生まれたとき、書くことへの怖さが少し軽くなった気がします。言葉を選ぶ場面——メールの一文、プレゼンのタイトル、SNSの投稿——どんな場面でも「どんな視点で言葉を選んでいるか」を意識するようになりました。それだけで、少しずつ言葉が変わってくる感覚があります。言葉は「センスのある人のもの」ではなく「考え続けてきた人のもの」だと感じられるようになったのは、この本を読んでからです。一つの言葉を選ぶときに「なぜこの言葉なのか」と問うだけで、それまでより丁寧に思考が動く体験は、この本なしには生まれませんでした。言葉を選ぶことが、思考の鍛錬になるということ——それがこの本の最も大きな贈り物でした。
賞を受賞してきたコピーライターが「理論として」語る
数々の広告賞を受賞し、国内外でクリエイティブディレクターとして活動してきた堤藤成が、言葉の本質を31の理論として体系化した一冊です。エッセイとしても読めるため、「理論書っぽくて重い」という感覚なく読み進められます。
言葉や数学への向き合い方が変わることは、思考の幅が広がることでもあります。この本を読まなければ、「いい言葉は才能のある人だけが書ける」という思い込みを持ったまま、言葉の可能性を自分で閉じ続けていたと思います。
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