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新書嫁レビュー ・ 約 4 分

プロの作家は接続詞から書く——文章を支配しているのは『そして』『しかし』だった

「文章を上達させるには、語彙を増やし、表現を磨き、リズムよく書く技術を身につけるのが王道だ」とずっと思っていた

文章術の本を読むと、ほとんどが「いい言葉を選ぶ」「比喩を使う」「短い文で書く」「リズムを整える」——そういう、本文の言葉そのものをどう磨くかという話に集中していました。「接続詞」については「使いすぎないように」「『そして』『しかし』を多用しない」という消極的なアドバイスを聞く程度で、文章を支える主役とは考えていませんでした。「文章の核心は内容と表現にあり、接続詞は脇役」という前提が頭にありました。

でも、なぜ同じ内容を書いても「読みやすい文章」と「読みにくい文章」の差が生まれるのか、なぜプロの文章には独特の流れがあるのか——表現や語彙だけでは説明しきれない何かが、そこに働いている感覚がありました。

石黒圭著『文章は接続詞で決まる』を読んで、その「何か」の正体が見えてきました。

プロの作家は接続詞から考える——接続詞は文と文の論理関係を設計する、文章構築の中枢だった

著者が本書で示す核心は、プロの作家が文章を組み立てるとき、まず内容を書いてから繋ぐのではなく、「どんな論理関係で文と文を繋ぐか」を接続詞のレベルで先に設計しているという事実です。接続詞は脇役の品詞ではなく、文章の骨格そのものを決める中枢であり、読者の理解と印象を強く左右する。著者は文章論の研究者として、接続詞を「論理の接続詞」「整理の接続詞」「理解の接続詞」「展開の接続詞」「文末の接続詞」「話し言葉の接続詞」と分類し、それぞれの役割と効果を体系化します。

特に印象的なのは、「文末の接続詞」という概念です。「〜とはいえ」「〜にしても」「〜ともあれ」——文頭ではなく文末に置かれる接続的な表現が、日本語の文章の流れに特別な働きをすることが解明されます。SNS上でも「文末の接続詞があるという記述に衝撃を受けた」というコメントが寄せられているように、これまで意識せずに使っていた表現を品詞分類の中で位置づけ直すと、新しい技術として身につけられます。さらに「接続詞のさじ加減」「接続詞の戦略的使用」では、どの接続詞をどの場面で選ぶかによって、文章全体の論理性・親しみやすさ・説得力がどう変わるかが具体的に示されます。本書にはさらに、接続詞の使い分けによる表現効果と、プロの文章を分析する具体例が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

自分の文章を「論理関係の網」として見直せるようになった

読む前と後で、文章を書くときの向き合い方が変わりました。以前は「言いたい内容」を書き連ねてから、後で読みやすさを整える順序でした。でも今は、書く前に「どんな論理関係で展開するか」「どこで対比し、どこで例示し、どこで結論を出すか」を、接続詞のレベルで設計してから書くようになりました。

具体的には、文章の見直しの時に「『そして』『しかし』『また』」の使い方が偏っていないかをチェックするようになりました。同じ「逆接」でも「しかし」「だが」「ところが」「とはいえ」では微妙にニュアンスが違い、文脈に合わせて選び分ける技術が、文章の精度を一段上げます。また、人の文章を読むときも「この接続詞はなぜここに置かれているか」「もし別の接続詞だったらどう変わるか」を考えると、書き手の意図が透けて見えるようになります。書く・読むの両方で、文章を「論理関係の網」として把握する眼が、本書を通じて獲得できました。

一橋大学准教授・文章論研究者が、接続詞を文章設計の中枢として体系化した

石黒圭(1969年大阪生まれ)は一橋大学留学生センター・言語社会研究科准教授として文章論を専門に研究してきた研究者です。日本語の文章表現を体系的に分析し、教育現場で実践的に応用してきた著者だからこそ、本書では接続詞という個別の品詞を切り口に、文章全体の構築原理にまで踏み込む射程が成立しています。

この本を読まなければ、文章術を「語彙と表現の磨き上げ」として理解したまま、プロが接続詞から書き始めるという文章設計の核心と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

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文章は接続詞で決まる (光文社新書 370) 石黒圭 / 光文社新書

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