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東西味くらべ (ランティエ叢書 19)

谷崎 潤一郎

ランティエ叢書 / 角川春樹事務所

1998年7月1日発売

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新書嫁レビュー

谷崎潤一郎が「味」を語るとき、そこには日本人の感性がある

2026-07-12

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食の好みは個人差であって、「感性」とは別の問題だと思っていた

食べ物の好みは人それぞれで、東西の文化の差や育ちの違いはあるにしても、「文化的な感性の問題」として深く考える必要はない——そう思っていました。関東は醤油文化、関西は昆布だし文化という知識は持っていましたが、その差が人の美意識や価値観と深くつながっているとは考えたことがなかったのです。

食の好みを「単なる舌の個性」として片づけることで、そこに埋め込まれた文化的な意味を長い間見逃していました。「美味しい」という感覚が、その人がどんな美しさを好み、何に雅を感じるかという感性の深い層とつながっているのかもしれない——そんな問いが、この本を読んで初めて立ち上がってきました。

この本が、食への見方を根本から変えてくれました。

谷崎潤一郎著『東西味くらべ』はこちらから読めます。

文豪が食を語るとき、その視線は文化の深みへ届く

本書は、『細雪』『痴人の愛』などで知られる大文豪・谷崎潤一郎が、東京と大阪の食文化の違いを縦横に語ったエッセイ集です。ランティエ叢書の一冊として収録されたこの作品は、単なる食べ物の比較にとどまらず、東西の美意識の差を鋭く照らし出します。

谷崎は長く東京で生活した後に関西に移り住み、その経験から東西の味覚の差を身体で知っています。彼が語るのは、濃い醤油文化の東京と薄口昆布だし文化の大阪の差だけではありません。「何を美味しいと感じるか」という感覚の違いが、人の育ちや美意識の形成とどう結びついているかを、文学者ならではの繊細な観察眼で描き出します。

大阪の食文化をこよなく愛した谷崎が、東京の食に対してどのような眼を向けていたのか。その率直で鮮烈な記述は、現代の私たちが「味の好み」を通じて自分の感性を振り返るきっかけを与えてくれます。本書にはさらに、谷崎が愛した具体的な料理や店の記憶、そして食を通じて浮かび上がる日本人の美意識についても豊かに語られています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「美味しい」と感じる瞬間に、自分の感性の地図が見える

この本を読んでから、自分が「美味しい」と感じるものの背後に何があるのかを意識するようになりました。甘口か辛口か、あっさりか濃厚か——その好みは単なる舌の個性ではなく、自分がどんな美しさを好み、何に落ち着きを感じるかという、もっと深い感覚の層とつながっているのだという気がしてきたのです。

食についての語りが、日本の美意識の語りへとつながっていく谷崎の文章を読むと、「食べる」という日常的な行為がいかに豊かな意味を宿しているかが見えてきます。料理を前にするたびに、そこに積み重なった人々の知恵と感性の歴史を思う機会が増えました。食卓が、少し違って見えるようになったのです。それだけで、日々の食事が豊かになる気がします。

食を通じて日本の感性を読み解く文豪のエッセイ

日本文学を代表する作家・谷崎潤一郎が食を通じて東西の感性の差を語った贅沢なエッセイ集です。食への愛情と文学的観察眼が融け合った文章は、読むだけで五感が豊かになるような感覚を与えてくれます。谷崎の鋭い観察は食べることの喜びを日常の哲学へと高め、日本人として生まれた豊かさをあらためて実感させてくれます。

この本を読まなければ、食の好みを「個人差」として片づけたまま、そこに埋め込まれた文化や感性の深みを見逃し続けていたと思います。

谷崎潤一郎著『東西味くらべ』はこちらから読めます。

書誌情報

書名
東西味くらべ (ランティエ叢書 19)
著者
谷崎 潤一郎
レーベル
ランティエ叢書
出版社
角川春樹事務所
発売日
1998年7月1日
ISBN
4894560984