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日本人の縁起かつぎと厄払い (青春新書インテリジェンスシリーズ) (青春新書INTELLIGENCE 175)

新谷 尚紀

青春新書インテリジェンスシリーズ / 青春出版社

2007年6月1日発売

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新書嫁レビュー

「験担ぎ」は迷信ではなく、日本人の論理だった

2026-05-23

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縁起かつぎは「気休め」だと、ずっと軽く見ていた

受験の前日にカツ丼を食べ、引っ越しの日は大安を選び、夜に爪を切ることをどこか避けてしまう。自分でやっておきながら、その理由を問われると「まあ、なんとなく」とごまかしていました。縁起をかつぐのは非合理な習慣であり、科学的根拠はないと頭でわかっていながら、体が勝手に動く。そのちぐはぐさが、ずっとどこかに引っかかっていました。

新谷尚紀著『日本人の縁起かつぎと厄払い』はこちらから読めます。

縁起物の裏には、日本人の思考の「構造」があった

著者の新谷尚紀は早稲田大学大学院博士課程修了の社会学博士で、国立歴史民俗博物館教授・総合研究大学院大学教授を務める日本民俗学の権威です。本書は膨大なフィールドワークと文献研究をもとに、縁起かつぎや厄払いを単なる迷信ではなく、日本人の世界認識の論理として読み解きます。

たとえば「朝の蜘蛛は縁起がいいが、夜の蜘蛛は縁起が悪い」という言い伝え。これは単なる気まぐれではなく、「ケガレ」と「清め」をめぐる日本人独自の境界意識に根ざしていると本書は述べます。夜という境界の時間に訪れるものへの警戒心が、この習慣を生み出したというのです。「蛇の抜け殻を財布に入れるとお金持ちになる」という言い伝えもそうで、脱皮という「変容」が再生や豊穣の象徴として読み替えられた歴史が背景にあります。

本書では、厄年という概念についても詳しく論じられています。男性42歳・女性33歳という数字が「大厄」とされる理由は、単なる語呂合わせにとどまらず、人生の中で心身に変化が起きやすい時期を先人たちが経験的に察知し、「社会的な儀礼として通過させる仕組み」を作り上げたことだと著者は言います。節分の豆まきも、正月のしめ縄も、七五三も——それぞれの行事に込められた「境界を越える」という意識の形を、著者は淡々と、しかし深く掘り下げていきます。長年のフィールドワークで集めた全国各地の事例が、この本に説得力を与えています。ぜひ本書で確かめてみてください。

何気なくやっていた習慣が、急に「言葉」を持った

この本を読む前は、縁起かつぎをするたびに「自分は非合理な人間だな」と思っていました。読んだ後は、お正月に初詣に出かけるとき、玄関の大掃除をするとき、そこに込められた「なぜ」が少し見えるようになりました。単に伝統に従っているのではなく、長い時間をかけて日本人が築いてきた「世界の整え方」に参加しているという感覚です。意味がわかると、同じ行動でも体の中の手触りが変わります。ぼんやりとした習慣が、意識的な行為に変わる瞬間がありました。

本書はまた、「縁起かつぎ」と「迷信」の違いについても整理を与えてくれます。迷信とは根拠のない恐れや誤った因果関係の信念ですが、縁起かつぎは日本人が長年かけて培った「吉凶の境界意識」を行動に落とし込んだものであり、そこには合理性とは別種の論理が働いています。その論理を知ることは、日本文化への理解を深めるだけでなく、自分の無意識の行動に対する理解を深めることにもなります。知らないまま続ける習慣と、意味を知った上で続ける習慣とでは、積み重なった先に生まれるものが違ってきます。

「意味もわからずやっている」は、もったいない

本書を読まなければ、自分が毎年繰り返してきた習慣の底にある論理に、一生気づかなかったと思います。日本人として生きていると、縁起かつぎや厄払いは空気のように当然のものとして存在しています。しかしその「当然」の中に、日本人の精神構造が凝縮されているのです。国立歴史民俗博物館で長年研究を続けてきた著者だからこそ描ける、日本文化の深層への旅がここにあります。

新谷尚紀著『日本人の縁起かつぎと厄払い』はこちらから読めます。

内容紹介

「妊婦はトイレを掃除すると、綺麗な女の子が生まれる」「厄年の男女は、その年齢の数だけお金を撤く」-民俗信仰のしくみを読み解く。

出版社による紹介文です(楽天ブックスの書誌情報より)。

書誌情報

書名
日本人の縁起かつぎと厄払い (青春新書インテリジェンスシリーズ) (青春新書INTELLIGENCE 175)
著者
新谷 尚紀
レーベル
青春新書インテリジェンスシリーズ
出版社
青春出版社
発売日
2007年6月1日
ISBN
4413041755