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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「稼ぐ自治体」の合言葉が、まちから奪っていたもの

自治体は「稼ぐ」べきだと、素直に信じていました

地方の元気がない、だから自治体ももっと稼いで自立すべきだ——テレビやニュースで繰り返されるその主張を、私はほとんど疑わずに受け入れていました。地域活性化、地方創生という言葉が並ぶと、なんとなく良いことのように聞こえます。けれど、各地で似たようなイベントや施設が生まれては消えていくのを見るたびに、「本当にこれで地域は豊かになっているのだろうか」という、うまく言葉にできない引っかかりがありました。今井照さんの『自治体は何のためにあるのか 〈地域活性化〉を問い直す』は、その引っかかりの正体を照らしてくれました。

「活性化」の掛け声の裏で、起きていたこと

本書が問い直すのは、「稼ぐための地域活性化」を煽る流れそのものです。著者は、地方創生の名のもとで自治体が外部のコンサルティング事業者に行政の中身を委ねていく構図や、国からの新たな統制が広がっていく様子を具体的に描き出します。

とくに印象に残ったのは、国が「お願い」というやわらかい形で自治体を動かしている、という指摘です。補助金や交付金を受け取るには計画の策定が条件として組み込まれ、本来は任意のはずの努力義務が、いつのまにか実質的な必須条件へと変わっていく。直接の命令ではないのに、結果として自治体の選択肢が狭められていく——そのメカニズムを、本書は丁寧にほどいていきます。本書はまた、国から派遣された「専門家」が事業の受託側に回っていく構図や、こうした流れのなかで現場の職員が置き去りにされていく様子にも触れます。「稼ぐ」という物差しが前面に出ることで、住民の暮らしを支えるという、自治体本来の役割がどう揺らいでいくのか。著者は一九九〇年代の分権改革から、コロナ禍での国と地方のやり取りまでを視野に入れて論じます。では、自治体は本来「何のため」に存在するのか。その問いへの答えは、ぜひ本書で確かめてみてください。

ニュースの見え方が、変わりました

この本を読んでから、地域のニュースの聞こえ方が変わりました。以前は「○○市が活性化事業を開始」と聞けば、素直に良い知らせとして受け取っていました。今は「その計画は誰のために、どんな条件のもとで作られたのか」と一歩引いて考えるようになりました。

自分の住むまちの広報誌に並ぶ事業名を見ても、以前は読み飛ばしていたのが、「これは住民の暮らしのためなのか、それとも何かの条件を満たすためなのか」と立ち止まるようになりました。活性化という言葉のまぶしさに目を奪われず、その奥にある仕組みを見ようとする——そんな視点を持てたことが、私にとって大きな変化でした。

言葉のまぶしさに流されたままでは、損だった

もし本書を読まなければ、私はこの先も「稼ぐ自治体は良いことだ」という思い込みのまま、まちの変化を表面だけで眺めていたはずです。著者の今井照さんは、自治体の現場や大学での研究を長く歩み、現在は地方自治総合研究所の特任研究員を務める、地方自治の専門家です。役所の内側と研究の両方を知るからこそ、聞こえのよい合言葉の裏側まで見通せるのだと思います。地域活性化という言葉をなんとなく信じてきた方にこそ、その思い込みが解けていく一冊です。

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自治体は何のためにあるのか: 〈地域活性化〉を問い直す (岩波新書) 今井 照 / 岩波新書

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