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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

億り人は、普通のマンションに住んでいた——資産1億円の正体

「お金持ちは特別な才能がある人間だ」と信じていた

資産1億円というのは、起業家か、投資の天才か、あるいは遺産を受け継いだ人間だけが到達できる数字だと思っていた。普通のサラリーマンとして会社に勤め、毎月の給料で生活している自分には縁のない話だ、と。そう決めつけていたせいで、資産形成についての情報に触れるたびに「自分には関係ない」と思考を閉じていた。あるいは、日々の生活費で消えていく給料を眺めながら、「どうせ積み立てたところで大したことはない」という諦めが先に来ていた。老後の不安は感じているのに、その不安に正面から向き合う言葉を持てないまま、何年も過ごしていた。

ところが、大江英樹著『となりの億り人 サラリーマンでも「資産1億円」』を読んで、その認識が根底から崩れた。純金融資産1億円以上を保有する富裕層の大半は、相続でも投資の大当たりでもなく、普通のサラリーマンとして地道に積み上げてきた人々だったのだ。

ヴィッツに乗り、普通のマンションに住んでいる

本書で最も印象的だったのは、実際の億り人たちの生活の描写だ。高級車に乗り、タワーマンションに住んでいる——そういうイメージを持っていた。しかし著者が長年の証券マンとして観察してきた富裕層は、コンパクトカーに乗り、都心から離れた普通のマンションに住んでいる人が多いという。外見ではまったくわからない。

彼らの共通点として本書が挙げるのは、給与天引きで先にお金を積み立て、残りの額で生活すること。保険にはほとんど入らないこと。投資は長期・ゆっくりを基本とし、市場が暴落したときこそ買い増す判断をしていること。そして何より、約束を守り、人との信頼を大切にする姿勢。著者の大江英樹氏は野村証券で25年間、個人の資産運用業務に携わった後、経済コラムニストとして独立し、数多くの富裕層の資産形成を間近で見てきた。本書にはさらに、4人の億り人へのインタビューが収録されており、具体的な資産形成の過程を詳しく知ることができる。ぜひ本書で確かめてみてください。

「投資は怖いもの」という先入観が、一番の損失だった

この本を読む前の自分は、投資といえば「元本割れのリスク」ばかりが頭にあった。株式や投資信託の話が出ると、「難しい」「怖い」という感情が先に来て、詳しく調べようとすらしなかった。

本書を読んだ後、その怖さの正体が「正しく知らないこと」から来ていたとわかった。長期で積み立て続ける投資は、短期で売買を繰り返す投機とは本質的に違う。億り人たちは相場の上下に一喜一憂せず、暴落をむしろチャンスと捉えて淡々と続けていた。月3万円の積み立てを30年続けると、運用率によっては数千万円になる可能性がある。この事実を頭でわかっているつもりで、実際には「どうせ無理」という諦めが行動を止めていた。知識だけでなく、億り人たちの思考習慣を読んで初めて、「自分にも関係ある話だ」という感覚に変わった。

特別な才能も遺産も、必要なかった

この本を読まなければ、老後の不安を漠然と抱えながらも何も変えない年月が続いていただろう。資産1億円の大半が「特別でない人たち」によって作られているという事実は、見方によっては励ましでもあり、戒めでもある。

著者の大江英樹氏は甲南大学経済学部卒業後、野村證券に入社し25年間にわたって個人資産運用のプロフェッショナルとして働いた。退職後は「オフィス・リベルタス」を設立し、行動経済学の知見も交えながら個人の資産形成教育に取り組んできた。そのキャリアに裏打ちされた観察だからこそ、本書の内容には現実の重みがある。

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