統合失調症は「理解不能な病気」だと思っていた
統合失調症と聞いて、「幻覚が見える」「おかしなことを信じる」——そういったイメージはあっても、それが具体的にどういう状態なのかを実感として理解したことがありませんでした。「本人もおかしいとわかっているだろう」「現実と区別できるはずだ」という思い込みがあり、その病の内側に入ることができていなかったのです。
でもこの本を読んで、統合失調症の症状が「本人の視点からは完全にリアルな体験」であることを初めて理解できました。幻覚は「見えているように感じる」のではなく、本人には現実の知覚と全く区別がつかない形で「見えている」のです。
この本が、精神疾患と人間の心の複雑さへの見方を根本から変えてくれました。
「病気の外から見た状態」と「病気の内側の体験」は全く別物だった
本書は、精神医学を専門とする研究者・臨床医が、統合失調症の症状・原因・治療・当事者の体験を詳しく解説した岩波新書の一冊です。医学的な解説と、当事者の言葉の両方から病の全体像を捉えています。
著者が丁寧に描くのは、統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想・まとまりのない思考)が、当事者にとってどのような体験として現れるかです。「誰かが自分を監視している」という妄想は、本人にとっては証拠が積み重なった現実認識であり、「おかしい」とは感じていません。「声が聞こえる」という幻聴は、耳元ではっきり言葉として聞こえるものです。
この病を外から見ると「理解できない行動」に見えるものが、当事者の内側では一貫した論理と体験に基づいていることを知ることが、病と人への理解の出発点です。また、適切な薬物療法と支援によって症状が改善し、社会生活を送れるようになっているケースが多いという事実も、この本では丁寧に示されています。統合失調症は100人に1人がかかるとされる決して珍しくない病気であり、しかし多くの人がその実態を正確に知らないまま偏見を持っています。知識を持つことが、当事者と支援者の双方にとって必要です。本書にはさらに、統合失調症の原因・遺伝的要因・回復の過程についても詳しく解説されています。ぜひ本書で確かめてみてください。
「理解不能」を「理解しようとする姿勢」に変えた
この本を読んでから、精神疾患に関するニュースを見るときに、「その人の内側ではどう体験されているのか」という問いを持つようになりました。「理解不能」と感じる行動への反応が、「怖い」から「その人にはどう見えているのだろう」という方向に変わりました。統合失調症についての正確な知識を持つことで、当事者の行動の一つひとつが別の意味を持って見えてきます。
外から見て「おかしい」と見える行動も、その人の内側では必然性を持っています。その内側への想像力を持つことが、精神疾患への偏見を減らし、支援の質を高める第一歩になります。
精神医学の専門家が描く「統合失調症の内側と外側」
精神医学を専門とする研究者・臨床医が、統合失調症の症状・原因・治療・当事者体験を詳しく解説した岩波新書の一冊です。外から見た症状と内側の体験の両方を理解することで、この病への見方が変わります。
この本を読まなければ、統合失調症を「理解不能な病気」として距離を置いたまま、当事者がどのような体験の中にいるかを知らずにいたと思います。