← ブックフィード 新書嫁 PR

新書嫁レビュー ・ 約 3 分

周期表が「暗記する表」から「118人の物語」に変わった一冊

元素なんて、ただ覚えるだけのものだと思っていた

水素、ヘリウム、リチウム。学生時代、周期表は語呂合わせで丸暗記する記号の羅列でしかありませんでした。テストが終われば頭から抜け落ち、元素という言葉を聞いても、何の手触りもない。化学が得意な人とそうでない自分のあいだには、生まれつきの壁があるのだと思い込んでいました。ところがこの本を開いて、その壁が「面白さを知らなかっただけ」だったと気づかされたのです。

元素の一つひとつに、発見者の人生と物語がある

本書は周期表の118の元素を、見開き2ページずつで紹介していきます。左ページには元素の性質の解説、右ページにはその元素を発見した人物や歴史的なエピソードがマンガで描かれます。記号と数字でしかなかった元素が、誰かが命がけで見つけ出した発見の物語として立ち上がってくるのです。化学の研究者が実験でやけどを負った話や、検出されにくい毒の話まで飛び出して、解説はときに教科書の枠を軽々と越えていきます。読者のレビューでも、小学生の子どもが夢中で読み、誰がどの元素を発見したかまで覚えてしまったという声がありました。無機質な暗記では一行も入らなかった知識が、物語に乗ると驚くほど頭に残る。マンガには発見者たちの顔が、それぞれの特徴をとらえて描かれていて、名前と人物がひとつながりになって記憶に残るのも巧みなところです。化学を意識していない子どものほうが、かえって面白がって読み、自然と覚えてしまうという読者の声もありました。本書ではさらに、ランタノイドやアクチノイドといった放射性元素の説明や、最先端の応用テクノロジーにまで話が広がっていきます。

身のまわりの物が「元素でできている」と見えてきた

この本を読む前、私にとって元素は教科書のなかだけの存在でした。けれど読んだあとは、日常の風景が少し変わりました。スマートフォンの中に、聞いたこともなかったレアな元素が働いていると知る。電池や蛍光灯の光の裏に、特定の元素の性質があると気づく。これまで「ただの物」として通り過ぎていたものが、118種類の組み合わせでできていると思うと、世界が急に細かい解像度で見えてきます。子どもに「これ何でできてるの」と聞かれて、以前なら口ごもっていたところを、少しだけ語れるようになったのも嬉しい変化でした。スーパーで「無添加」の表示を見たとき、ニュースで「レアアース」という言葉を聞いたとき、頭の片隅にあの周期表の物語がよぎる。知識が点ではなく、ゆるくつながった網になって、日常のあちこちに引っかかってくる感覚が生まれたのです。

知らないままなら、面白さに一生気づかなかった

この本に出会わなければ、私は元素を「自分には縁のない暗記科目」と決めつけたまま生きていたはずです。著者の斎藤勝裕さんは、名古屋工業大学名誉教授で、有機化学や物理化学を専門とする研究者です。専門家でありながら、子どもも大人も笑って読める語り口で書けるところに、本物の理解の深さを感じます。難しいことを難しいまま語るのではなく、面白いところまで噛み砕いて手渡してくれる。そんな書き手だからこそ、初めて元素が身近なものに思えました。化学に苦手意識を抱えたままの方こそ、本書でその面白さを確かめてみてください。

この本を手に入れる

マンガでわかる元素118 元素の発見者から意外な歴史、最先端の応用テクノロジーまで (サイエンス・アイ新書) 斎藤 勝裕 / サイエンス・アイ新書

次の一冊 ── 同じ主題「科学」

見るだけでわかる微分・積分 (PHP新書) 冨島 佑允 / PHP新書 書評を読む →

← ブックフィードに戻る

マンガでわかる元素118 元素の発見者から意外な歴史、最先端の応用テクノロジーまで (サイエンス・アイ新書) Amazon 楽天