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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

政治家はメディアに追い回される側だと思っていたが、立場は逆転していた

メディアは政治を厳しく監視する側だと思っていた

記者が政治家を取り囲み、鋭い質問を浴びせ、ときに失言を引き出して追い詰める。私はずっと、政治とメディアの関係とはそういうものだと思っていました。メディアは権力をチェックする側で、政治家はそれに追い回される側だ、と。だからニュースで政権の情報が次々と流れてくるのを見ても、それは記者たちが取材で勝ち取ったものだと素朴に信じていました。それでいて、どの局も同じような論調に見えることに、言葉にならない居心地の悪さも感じていたのです。その違和感の正体を、ひとつずつ証拠で示してくれたのが、この一冊でした。

圧倒しているのは、メディアではなく自民党だった

本書の序章のタイトルは、ずばり「メディアを圧倒する自民党」です。著者は、政治とメディアの関係が、かつての「慣れ親しみ」から「対立・コントロール型」へと変わったと論じます。象徴的に取り上げられるのが、二〇一五年に「朝まで生テレビ!」へ与党側の若手政治家が全員欠席した一件。著者はこれを、政治の側がメディアを巧みに使いこなす新しい戦略の一環として読み解きます。追い回されているのはメディアの側だったのか、と背筋が伸びる思いがしました。

この変化の起点として描かれるのが二〇〇五年の郵政選挙です。世耕弘成氏が一元的に指揮する党内広報チームが日々の報道を分析し、即座に議員へフィードバックする。著者はこの広報の「内製化」の効果を高く評価します。二〇一三年の参院選ではネット選挙の分析チームも置かれ、候補者向けに日々のネットや報道をまとめた演説のネタ帳まで、iPadで配信されていたといいます。本書にはその画面の一部まで引用されているとのこと。一方で著者は、こうして圧倒する側に回った自民党よりも、むしろ圧倒され、経営も取材も旧態依然としたまま縮んでいく新聞やテレビの行く末にこそ、深い危機感を寄せています。どこまで体系立った戦略だったのか、続きはぜひ本書で確かめてみてください。

ニュースの裏側が、透けて見えるようになった

この本を読む前の私は、政権の情報をテレビで見るとき、それを記者の取材成果として受け取っていました。読んだあとは、「これは誰が、どんな意図で、どう流したい情報なのか」と一歩引いて考えるようになりました。各局の報道が似通って見えたとき、以前はただ漠然とした不快感で済ませていたのが、今はその背後にある一極集中の構造を思い浮かべるようになっています。ニュースを受け取る側から、ニュースが届くまでの仕組みを想像する側へ。その移動は、毎日触れる情報との距離の取り方を確かに変えてくれました。

知らないままだったら、見せられた構図を信じ続けていた

もしこの本に出会わなければ、私は今もメディアが政治を追い詰めているという古い構図を信じたまま、なぜどの報道も似て見えるのかという違和感の正体に気づけなかったはずです。著者の西田亮介さんは社会学者で、専門は公共政策と情報社会論。『ネット選挙』などの著作でも知られ、資料とエビデンスに依拠したアカデミックな手つきで政治とメディアの変容を追ってきた研究者です。だからこそ本書の分析は、印象論ではなく証言と資料の積み重ねとして腑に落ちます。ニュースとの付き合い方に小さな引っかかりを感じている人ほど、この一冊が効くはずです。

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メディアと自民党 (角川新書) 西田 亮介 / 角川新書

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