「現代の日本社会で起きている変化は、毎日のニュースで少しずつ進む通常の変化で、特に異常事態ではない」とずっと思っていた
旧統一教会と政治家、芸能事務所スキャンダル、SNS中毒と分断、芸能人の連続的な死——個別のニュースを見ているときは、それぞれ「いつもの事件」「特殊な問題」として消費していました。それぞれの話題を別々の引き出しに入れて、「社会全体としては基本的に安定している」という前提で日常を続けていました。「日本がおかしくなっている」という感覚は時に芽生えても、それを一つの連関として語る言葉を持っていませんでした。
でも、これらの「個別の問題」が同時並行で起きていることに、何か共通の構造があるのではないか——という直感はありました。その直感を言語化する手がかりが見つかりませんでした。
ビートたけし著『ニッポンが壊れる』を読んで、その直感が形をなしてきました。
政治と宗教の癒着、メディアの忖度、ネットへの依存——複数の領域で同時に「壊れている」現象が連動している
著者が本書で示す核心は、現代日本社会で起きている政治・メディア・ネット・人間関係の各領域での問題が、個別の事件ではなく、戦後日本社会を支えてきた構造が同時並行で「壊れていく」という大きな変化の現れだという視点です。コロナ禍が一段落して明らかになった「ヤバさ」——政治家と宗教団体の癒着、メディアの芸能事務所への忖度、ネットへの急激な依存、政治・社会への無関心——これらは別々の問題ではなく、同じ崩壊の異なる側面として読まれます。
特に印象的なのは、ビートたけし自身が芸能界・メディア・政治のいずれにも長く関わってきた当事者として、内側からの観察を語っている点です。「政治・社会に無関心な平和ボケ」「SNS中毒で生まれたヤバい格差社会」「激変するエンタメとメディア」「さらば、愛しき人たちへ」「令和のお騒がせ事件簿」——5つの章は、それぞれの領域で何が起きているかを、当事者しか語れない細部とともに描き出します。学術的な分析ではなく、半世紀以上をエンタメとメディアの最前線で過ごした著者の「肌で感じている崩壊」が、テンポの良い語り口で展開されます。本書にはさらに、76歳の著者ならではの「失われたものへの惜別」と「これからの日本への警鐘」が詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。
「個別ニュース」を「構造の変化」として読む視点が生まれた
読む前と後で、日々のニュースへの向き合い方が変わりました。以前はニュースを「個別の事件」として消費し、すぐに次のニュースに流れていました。でも今は、「これらの事件は何の構造の変化を示しているのか」「どの領域がどう連動しているのか」を考える時間を持つようになりました。
具体的には、政治家のスキャンダル・芸能事務所の問題・SNS上の炎上・若者の社会離れ——これらを別個の話題として扱うのではなく、「戦後日本の何かが同時に壊れている」という大きな問いの中で読むようになりました。著者がエンタメと政治を横断して観察できるのは、両方に長く関わってきたからで、私たち一般読者も「自分の領域だけで考える」習慣を超えて、社会の異なる領域を横断する視点を持つことが、現代の変化を理解するのに不可欠だと感じます。
お笑い・映画・芸能・メディアを半世紀走り続けてきた著者が、76歳で日本社会を斬った
ビートたけし(北野武)は1947年生まれ、漫才ブームでスター芸人となり、映画監督として『HANA-BI』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞し、テレビ司会・著作活動を通じて戦後日本のエンタメと文化を半世紀以上にわたって牽引してきた著者です。芸能界・メディア・政治の現場に深く関わってきた当事者だからこそ、本書では外部評論家には書けない、内側からの観察と切れ味の鋭い指摘が展開されています。
この本を読まなければ、現代日本の問題を個別ニュースとして消費したまま、政治・メディア・ネットの同時崩壊が加速度的に進む現実と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。