一流の人は、失敗とは無縁だと思っていた
世界の一線で活躍するエリートたちは、はじめから失敗とは無縁の人なのだと、私はぼんやり信じていました。だから自分の小さなつまずきがことさら大きく感じられ、失敗するたびに「自分には向いていないのかもしれない」と縮こまっていたのです。挑戦する前から、しくじったときの恥ずかしさばかりが頭をよぎる。その怖さが、いつも一歩目をためらわせていました。ところがこの本を読んで、その思い込みは音を立てて崩れました。ハーバードやスタンフォードがわざわざ教えているのは、成功術ではなく「失敗との向き合い方」だったのです。
一流校が授業で行う「失敗の予行演習」
本書が描くのは、世界トップクラスの経営大学院が授業の中で「失敗の予行演習」を行い、いかに失敗から学び、立ち直るかを徹底して教えているという光景です。求められるのは、居心地のよい場所に留まらず、失敗を恐れずに飛び出し、転んでもまた立ち上がって再挑戦できる人だといいます。本書ではさらに、失敗したときには安易に謝罪して非を認めるのではなく、「誠実な説明」と「信用の回復」が鍵になる、という具体的な立ち回りまで語られます。早めに上司や関係者へ自分の状況を伝え、できるだけ情報を共有して味方を増やす——そんな実践的な作法が、実話を交えて紹介されているのです。著者自身がNHK時代の苦い失敗を経てコロンビア大学経営大学院に進んだ体験や、世界で活躍する日本人エリートたちが最悪の経験から何を得たのかという証言も収められています。続きはぜひ本書で確かめてみてください。
「失敗=終わり」が、「失敗=途中経過」に変わった
この本に触れる前の私は、仕事で一つミスをするだけで頭が真っ白になり、メールの送信ボタンを押す前に何度も読み返しては動けなくなり、その日一日を引きずっていました。失敗は取り返しのつかない汚点だと感じていたからです。けれど「失敗は学びの予行演習だ」という見方を知ってからは、同じ場面でのふるまいが変わりました。ミスをしたとき、隠そうとするのではなく、早めに上司へ事実を伝え、いま自分がどう立て直そうとしているかを説明できるようになったのです。すると不思議と、責められるどころか、まわりが力を貸してくれるようになりました。新しい仕事を前にして尻込みしていた私が、転ぶことを前提に「とりあえずやってみます」と一歩踏み出せるようになった——その違いは、想像していた以上に大きなものでした。
知らなければ、私は失敗を恐れて動けないままだった
もしこの本に出会わなければ、私は「一流の人は失敗しない」という誤解を抱えたまま、挑戦の手前で縮こまり続け、やりたいことに手を伸ばせないままだったはずです。失敗を避けようとするほど、結局は何も挑めず、何も得られない——その悪循環に気づかせてくれたのが本書でした。著者の佐藤智恵さんは東京大学教養学部を卒業後にNHKに入局し、報道番組や音楽番組のディレクターを経て、コロンビア大学経営大学院でMBAを取得した経歴の持ち主です。自ら大きな失敗と再起を経験し、ハーバードやスタンフォードといった世界の知のありようを内側から取材してきた人だからこそ書ける一冊だと思います。同じように失敗を恐れて一歩目を踏み出せずにいる方にこそ、この本が静かに背中を押してくれるはずです。