ミネラルは「とりあえず足りていればいい脇役」だと思っていた
ビタミンは気にするのに、ミネラルとなると私はずっと無頓着でした。カルシウムは骨に良いらしい、鉄は貧血に効くらしい、という断片的な知識だけで、あとは「サプリでまとめてとっておけば大丈夫だろう」と漠然と構えていたのです。栄養の話題になっても、ミネラルはいつも脇役で、主役のビタミンの後ろに控えている存在くらいに思っていました。けれど、なんとなく体調が整わない日が続くと、その「とりあえず」の知識では足元がぐらつくような心もとなさがありました。野口哲典さんの『身体に必要なミネラルの基礎知識』を読んで、私はミネラルをまるで見くびっていたことに気づかされました。
体は十数種類のミネラルの絶妙なバランスで動いている
本書がまず教えてくれるのは、私たちの体がどれほど多くのミネラルに支えられているかという事実です。カルシウムやナトリウム、カリウム、鉄といった比較的よく知られたものに加えて、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルトといった、名前すら馴染みのない微量ミネラルまでが、それぞれに欠かせない役割を担っています。本書は、体に多く必要な「主要ミネラル」と、ごくわずかでいい「微量ミネラル」を整理して解説し、それぞれが不足したり過剰になったりすると体に何が起こるのかを、基礎からていねいに描いていきます。「とりあえずたくさんとればいい」のではなく、絶妙なバランスの上に健康が成り立っている——その全体像が見えてきます。たとえば、不足しがちなミネラルがある一方で、とりすぎるとかえって害になるものもあり、健康とは足し算だけでなく引き算の問題でもあることに気づかされます。本書では、こうした一つひとつのミネラルの働きを順に整理したうえで、日常生活の中でどうミネラルと付き合っていけばよいかという、より実践的な話にも踏み込まれています。読み進めるほど、自分がいかにこの「縁の下の力持ち」を軽んじてきたかを思い知らされました。
食事の風景が、栄養素の地図に見えてきた
この本を読んでから、食卓の見え方が変わりました。以前は皿の上の料理を「おいしそう」か「ヘルシーそう」かでしか見ていませんでした。今は、海藻を口に運ぶときにヨウ素のことを、貝や肉を食べるときに亜鉛のことを、ふと思い浮かべるようになったのです。スーパーで食材を選ぶときも、「最近この種類のミネラルが偏っているかもしれない」と頭の片隅で考えるようになりました。漠然とサプリに頼っていた頃より、自分の体に何を入れているのかを意識できるようになり、食事の一つひとつが小さな選択として立ち上がってきます。体という仕組みへの解像度が上がると、毎日の食事がただの作業ではなくなっていきました。
知らないままだったら、見当違いの健康法を続けていた
この本を読まなければ、私はミネラルを脇役扱いしたまま、見当違いの健康法を続けていたと思います。著者の野口哲典さんは、科学を一般読者にわかりやすく噛み砕くことに長けたサイエンスライターで、ホルモンや神経伝達物質、確率といった幅広いテーマで多くの入門書を手がけてきた書き手です。だからこそ本書も、専門知識を持たない読者でも体の仕組みがすっと頭に入ってきます。自分の栄養の知識が偏っているかもしれないと感じたら、本書で確かめてみてください。