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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

考えれば答えは出る——その前提を、知性そのものが裏切ってくる

突き詰めて考えれば、いつかは答えにたどり着けると思っていた

わからないことがあっても、論理的に突き詰めて考えれば、いつかは正しい答えにたどり着ける。科学が進めば、いずれ世界のほとんどは説明がつくようになる。私はそう信じていました。人間の知性には、原理的な天井などないのだと。けれど、考えれば考えるほど問いが増えていく経験や、専門家でも未来を当てられない現実を前にすると、その信念の足元がときどき揺らぎました。なぜ最善を尽くした予測がはずれるのか。なぜ言葉を尽くしても伝わらないことがあるのか。それを自分の能力不足のせいにしてきたのですが、本書を読んで、それが個人の問題ではなかったのだと知りました。

言語にも、予測にも、思考にも、原理的な限界があった

本書が示すのは、人間の知的営みには「言語」「予測」「思考」という三つの領域それぞれに、努力では越えられない原理的な限界が存在するという事実です。私たちが使う言葉は、本当に同じ意味を共有できているのか。帰納によって積み上げた予測は、なぜ未来を保証できないのか。思考そのものが、どこまで世界を捉えられるのか。本書はこれらを、ウィトゲンシュタインの言語ゲームや、ポパーの開かれた宇宙、カントの不可知論といった哲学・科学の到達点を手がかりに解き明かしていきます。特徴的なのは、その語り口です。読者レビューでも触れられているとおり、本書はハイゼンベルクやゲーデルをはじめ、学生や会社員までもが参加するディベート形式で進みます。立場の異なる登場人物が議論を戦わせるので、難解なはずの論理哲学が物語のように読めるのです。読者レビューでも「ディベート形式なので感情移入がしやすく、とても読みやすい」「特に印象に残ったのは予測の不確実性だった」という声が寄せられていて、専門用語の壁を越えて議論そのものを楽しめる作りになっています。三つの限界は別々の話に見えて、実は人間がこの世界をどこまで捉えられるのかという一本の問いでつながっています。それぞれの限界がどこにあるのか、その核心はぜひ本書で確かめてみてください。

わからないことを、恐れなくなった

この本を読んでから、「わからない」という状態との付き合い方が変わりました。以前は、答えの出ない問題にぶつかると、自分の頭が悪いせいだと焦り、無理にでも結論を出そうとしていました。すっきりしないまま放置することが、どこか敗北のように感じられたのです。けれど、知性には原理的に届かない領域があると知ってから、わからないことの前で立ち止まれるようになりました。会議で結論が出ないときも、「これは今すぐ答えの出る種類の問いではないかもしれない」と一歩引いて考えられる。予測がはずれても、自分を責めるのではなく、不確実性は世界の側にあると受け止められる。限界を知ることは、あきらめではなく、むしろ心を軽くしてくれるのだと実感しています。

知らないままなら、届かない答えを追い続けていた

この本を読まなければ、私はこれからも、原理的に届かない答えを自分の力不足のせいにして追い続けていたはずです。著者の高橋昌一郎さんは、國學院大學文学部教授で、論理学・科学哲学を専門とする哲学者です。ミシガン大学大学院で学び、「限界」をめぐるシリーズで知性のかたちを問い続けてきた書き手だからこそ、難解な議論を読み物として成立させることができるのだと思います。考えることが好きな方ほど、自分の思考の輪郭そのものを見つめ直す一冊になるはずです。

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知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性 限界シリーズ (講談社現代新書) 高橋昌一郎 / 講談社現代新書

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