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新書嫁レビュー ・ 約 4 分

ブログ・副業・社内恋愛——どこまでやったらクビになるか、判例が答えを持っている

「会社の決定に従うのが社員の務めで、解雇や懲戒には逆らう手段はあまりない」とずっと思っていた

会社員として働いていると、人事異動・残業命令・副業禁止・SNS規制——会社からの指示に「不合理かな」と感じても、「会社の決定には従うもの」「逆らえば不利になる」という感覚で受け入れてしまうことが多かったです。労働法という言葉は知っていても、それは「労組や弁護士の世界」であって、自分の日常の判断材料にする発想は持っていませんでした。「クビになるかどうか」も曖昧な脅威として頭にありながら、「どこまでなら大丈夫か」という法的な境界線は分かりませんでした。

でも、SNSに会社の話を書いたら処分された人のニュース、副業禁止違反で懲戒された事例、不当な配置転換の話——こうした報道に触れるたびに、「自分はどこまでなら法的に守られるのか」を体系的に知らないまま働き続けている不安はありました。

大内伸哉著『どこまでやったらクビになるか——サラリーマンのための労働法入門』を読んで、その不安への答えが見えてきました。

ブログ・副業・社内恋愛・経費不正——労働者が直面する場面のルールは、実際の裁判例から読み解ける

著者が本書で示す核心は、サラリーマンが職場で直面する具体的な場面——ブログで会社のことを書く、副業をする、社内恋愛をする、経費を流用する、内部告発をする、転勤命令を断る、残業代を請求する——これらすべてに、実際の裁判例の積み重ねによって形成された法的なルールが存在しており、それを知ることで「不合理を正す方法」と「自分を守る方法」の両方が見えてくるという事実です。著者は神戸大学大学院法学研究科教授・労働法の専門家として、実際の判例を引きながら、抽象的な法律論ではなく具体的な場面別のルールを解説します。

特に印象的なのは、「クビになるかどうか」の境界線が、感覚ではなく裁判例の積み重ねで具体的に決まっているという事実です。たとえば「副業」については、就業時間外であれば原則として労働者の自由ですが、会社の秘密保持義務に違反したり、会社の業務に支障をきたしたりする場合は懲戒の対象になりうる——という、明確な基準があります。「ブログで会社のことを書く」も、社内情報を漏らさず、会社や個人を誹謗中傷しない範囲なら問題ないが、内部告発と見なされる内容や、業務時間中の執筆は別の問題が生じる。具体的なケースで「何が許容され、何がアウトか」を知ることで、漠然とした不安が「対処可能な知識」に変わります。本書にはさらに、内部告発の保護・会社合併時の労働条件・新入社員採用のルールが詳しく描かれています。ぜひ本書でその全貌を確かめてみてください。

「会社の言いなり」と「自分の権利の主張」の間に明確な地図ができた

読む前と後で、職場での判断への向き合い方が変わりました。以前は会社からの指示に対して「従うか辞めるか」の二択で考えていました。でも今は、「この指示は法的にどこまで正当か」「自分の主張は法的にどこまで通るか」を整理してから対応するようになりました。

具体的には、不合理に感じる配置転換命令を受けたとき、「業務上の必要性」「労働者の不利益」「人事権の濫用」という労働法上の判断枠組みを念頭に置いて、まず冷静に状況を整理できるようになりました。SNSに仕事関連の話を書くときも、「秘密保持」「誹謗中傷」「業務時間外」といった軸を意識しながら、リスクを管理できる。労働法を知ることは、会社と対立するための武器ではなく、「自分と会社の双方が守るべきルール」を把握する地図を持つことだと理解できました。

神戸大学大学院法学研究科教授・労働法の第一人者が、判例ベースで職場のルールを解説した

大内伸哉(1963年神戸生まれ)は東京大学法学部卒業・同大学院修了の博士(法学)で、神戸大学大学院法学研究科教授として労働法を専門に研究してきた研究者です。学術的な労働法研究に加え、現場の労働問題への実践的なコメントも続けてきた著者だからこそ、本書では一般読者が直面する具体的場面を、判例の蓄積から実践的に解説する構成が成立しています。

この本を読まなければ、「会社の判断には逆らえない」という思い込みのまま、労働法を知っているだけで職場の不合理から自分を守れる事実と向き合う機会を持てないままでいたでしょう。

この本を手に入れる

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門―(新潮新書) 大内 伸哉 / 新潮新書

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