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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

39歳でホームラン王になった男が、やっていたのは「力を抜く」ことだった

「年齢とともに衰えるのは当然」だと思っていた

スポーツ選手は20代が全盛期で、30代後半になれば引退を考えるのが普通だと思っていました。人間の身体能力は加齢とともに低下し、若い頃に記録したピークを超えることはできない——そういう「常識」を、疑う理由さえありませんでした。でもこの本を読んで、その前提そのものを問い直すことになりました。

「アラフォー」でホームラン王になった唯一の男

山崎武司は2007年、39歳のときに43本塁打・打点王を達成し、セ・パ両リーグでのホームラン王という史上3人目の偉業を成し遂げました。通算403本塁打のうち、楽天に入団した36歳以降で積み上げたホームランが全体の約半数を占めています。これはメジャーリーグの歴史を見ても類例のない記録です。

本書が明かすのは、その「後半生の爆発」の背景にある考え方です。山崎が楽天での単身赴任生活の中で実践したのは、オフの時間を徹底的に自分の趣味と好奇心のために使うことでした。野球だけに縛られず、自分の好きなことに本気で向き合う時間を持つことで、グラウンドでの集中力が逆に高まったというのです。「頑張れば頑張るほどいい」という発想を手放したとき、体が本来の力を取り戻したと本書では語られています。本書にはさらに、打撃フォームの変革と体の使い方についての技術論も詳しく語られた章があります。ぜひ本書で確かめてみてください。

「ピークは若いうち」という思い込みが外れた

この本を読む前は、自分の仕事や趣味においても「若い頃の方が集中できた」「年をとると限界が出てくる」と感じていました。読んだ後は、「積み上げてきた経験と、力を抜く智慧が合わさったとき、人は本当のピークに達するのかもしれない」という視点が生まれました。山崎の39歳での爆発は、プロ野球の話に留まりません。自分の仕事や人生においても、「今が全盛期ではない」という前提で動いていたことに気づかされました。年齢を理由に可能性の天井を設けていた自分が、少し変わりました。

山崎は楽天移籍後、野嶋仁コーチとの出会いによって打撃フォームの根本的な見直しを行ったことも本書では語られています。長年染みついた「力で振る」という発想を捨て、体の軸を安定させながら最小限の力で最大限のヘッドスピードを生む打法へと転換したことが、後半生の爆発の技術的な背景にあります。また、単身赴任という環境が「野球だけを考える」煩わしさから解放してくれたという逆説的な証言も興味深い点です。年齢や環境という「制約」が、むしろ本質に集中させる条件になることがあるという示唆は、スポーツを超えた人生の教訓として読むことができます。

知らないままでいると、潜在力に蓋をしてしまう

「体力のピークは若い頃」という常識は、特定の条件のもとでしか成立しないのかもしれません。山崎武司の39歳・43本塁打という記録は、それを数字で証明しています。ドラフト1位で中日入りし、紆余曲折を経て楽天で花開いた彼の歩みは、経験と自己認識の積み重ねがどれほど可能性を広げるかを示しています。知らないままでいると、自分に対して早すぎる「老いの宣告」をしてしまうかもしれません。

本書を読んで特に心に残ったのは、山崎が阪神タイガースへの移籍と楽天イーグルスへの再挑戦という「回り道」を経て初めて、本当の自分の野球にたどり着いたという点です。中日の二軍落ちや戦力外通告という屈辱を経ながらも諦めなかった姿勢の背景には、「まだやれる」という根拠のない自信ではなく、「自分が何をすれば変われるか」という問いへの真摯な向き合いがあったと本書は伝えています。野球という世界に限らず、「どこかで変わることができる」という可能性を信じられるかどうかは、人生の選択肢の数に直結します。山崎の物語は、その可能性を数字で示した稀有な記録です。

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