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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「ありがとう」と声をかけた水は本当に美しく凍るのか——道徳の授業で教えられていたこと

学校は科学を教える場所だから、おかしな話は持ち込まれない——そう信じていました

学校という場所は、確かな知識を子どもに手渡すところ。先生が教えることには根拠があり、少なくとも荒唐無稽な話が教室に持ち込まれることはない——私はそう素朴に信じていました。けれどその安心のままでいると、子どもが学校で何を吸収しているのかを大人が点検しなくなり、いつのまにか「いい話」の顔をした怪しいものが居座っていても気づけない。その盲点を突きつけてきたのが、左巻健男氏の『学校に入り込むニセ科学』でした。

道徳の授業で語られた「水からの伝言」

本書が具体例として取り上げるものの一つが、「水からの伝言」です。「ありがとう」などの優しい言葉を見せた水は美しい結晶を作り、「ばかやろう」といった言葉を見せた水はいびつな結晶になる——そんな話が、実際に小学校の道徳の授業で「思いやりの心の大切さ」を伝える教材として使われていたといいます。本書では、ある授業で疑問を口にした男子児童に対し、教師が「頭が固い」と取り合わなかったという、報告されている事例まで紹介されています。言葉を大切にしようという狙いは尊くても、その根拠として科学的に成り立たない話を持ち出してしまえば、子どもは「美しい嘘」を事実として受け取ってしまう。水の性質が言葉や人の心の影響を受けることはない、というのが科学の側からの一貫した指摘です。本書はこのほか、環境活動などに入り込むEM、ゲーム脳、白砂糖有害論、右脳型・左脳型といった話題まで取り上げ、なぜこうしたものが教員や生徒の善意を入り口に学校へ広がっていくのか、その構造にまで踏み込んでいきます。一見すると科学的な装いをまといながら、実は根拠を欠いたまま勢力を広げていく——そのからくりを、章を追うごとに解きほぐしていく一冊です。

「いい話」かどうかと「本当か」どうかは別だと気づいた

この本を読む前、私は心温まる話には無防備でした。優しい教訓が込められていれば、細かい真偽は気にせず受け入れていた。けれど読み終えてから、わが子が学校でもらってきたプリントや、SNSで流れてくる「感動する話」に触れたとき、ふと立ち止まるようになりました。この話の前提は本当に正しいのか、と。たとえば「植物に優しい言葉をかけると元気に育つ」といった話題に出くわしても、以前なら微笑ましく受け流していたのが、いまは「狙いは良くても根拠は別の問題だ」と切り分けて考えられる。良い意図と正しい事実は別物で、両方そろってはじめて人に手渡せるのだと、日常のあちこちで意識するようになったのです。健康法や食べ物にまつわる「これは体にいい」という話題に触れたときも、その根拠を一度確かめてから受け止める習慣がつきました。情報を受け取る姿勢そのものが変わったのだと思います。

善意こそ点検が必要だと、この一冊が教えてくれた

この本に出会わなければ、私は「学校で教わることは大丈夫」という思い込みのまま、善意の顔をした不確かな話を素通りさせていたと思います。著者の左巻健男氏は理科教育を専門とし、東京大学教育学部附属中学・高校の教諭を経て、京都工芸繊維大学や法政大学の教授などを歴任した人物です。科学を教える現場をよく知る著者だからこそ書ける具体性があります。何が教室に入り込んでいるのか、ぜひ本書で確かめてみてください。

この本を手に入れる

学校に入り込むニセ科学 (平凡社新書) 左巻 健男 / 平凡社新書

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