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新書嫁レビュー ・ 約 3 分

「よく教えた親」の子どもほど、自分で考えられなかった

子どもには「正しい答え」を教えることが大切だと思っていた

子育てにおいて、親の役割は「正しいことを教えること」だと思っていました。勉強の仕方、友達との付き合い方、将来に向けた準備——丁寧に導いてあげるほど、子どもは賢く育つと信じていました。宿題を手伝い、テストに向けて一緒に勉強し、トラブルがあれば解決策を示す。それが愛情ある子育てだという確信がありました。でも、この本を読んで、その確信が揺らぎました。丁寧すぎる関与が、子どもから「考える機会」を奪っていたのかもしれないのです。

脳は「失敗から学ぶ」ようにできている

本書は、麹町中学校の元校長・工藤勇一と、UCLAの脳神経学部を飛び級で卒業した脳神経科学者・青砥瑞人の共著です。工藤は在任中に「宿題・定期テスト・固定担任」を廃止するという異例の教育改革を断行し、教育界に大きな波紋を呼びました。青砥はその教育実践が脳科学的に正しいかどうかを検証する「麹町研究」に参加し、3年間の活動の成果がこの本に集約されています。

脳の研究が示すのは、「心理的安全性」と「メタ認知能力」という2つのキーワードです。心理的安全性が低い環境——つまり失敗を叱られたり他者と比較される場——では、脳の扁桃体が過剰反応し、前頭前野の判断機能が著しく低下します。それは単なる感情の問題ではなく、神経科学的に証明された脳の反応です。

一方、メタ認知——自分が今何を考えているかを客観的に把握する能力——を育てることで、子どもは自分で問いを立て、自分で解決策を探せるようになります。本書にはさらに、家庭でできる具体的な声かけの方法や、「当事者意識のある子」を育てるための実践例についても詳しく解説されています。ぜひ本書で確かめてみてください。

「どうしたらいいと思う?」に変えた夜

この本を読む前、子どもが困っているときの私の反応はほぼ決まっていました。「こうすればいい」と答えを示すことでした。手が届くなら助ければいい、という感覚で、自分が答えを持っているなら教えないのは不親切だとさえ思っていました。

読んだ後は変わりました。「どうしたらいいと思う?」という問いを、最初に返すようになりました。最初は戸惑いがありましたが、子どもが自分で考えて答えを出したとき、その表情が以前と違うことに気づきました。「自分で決めた」という満足感が顔に出るのです。その変化を目の当たりにしたとき、これまで親切心で奪っていたものの大きさを実感しました。

工藤校長が麹町中学で廃止した「固定担任制」の話も、この文脈で深く刺さりました。一人の担任が全責任を負う従来の仕組みは、子どもが複数の大人との関係の中で育つ機会を奪っていたのかもしれない、という問いを本書は投げかけます。宿題の廃止も、定期テストの廃止も、子どもに「自分で考えて動く機会」を取り戻すための構造的な変革だったのだと理解できると、一見奇抜に見えた改革の論理が、脳科学的に整合していることがわかります。実践と科学が同じ結論を指している事実は、読み終えた後も長く頭に残ります。

「教えすぎること」と「育てること」は、時として真逆の方向を向いているのかもしれません。

現場と科学が重なる場所で生まれた一冊

工藤勇一は教育改革の実践者として、青砥瑞人は脳神経科学者として、それぞれが異なる角度から「子どもの自律」という問いに向き合ってきました。その二人の知が交わったこの本は、「育て方の正解」を押しつける本ではなく、「なぜそうすると脳がそう動くのか」を理解させてくれる本です。

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最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方 (SB新書) 工藤 勇一, 青砥 瑞人 / SB新書

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